AAAMYYYが『ぼくのエリ』を考察。社会的価値観に踊らされるな

AAAMYYYが『ぼくのエリ』を考察。社会的価値観に踊らされるな

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AAAMYYY
編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

学校で孤立し、ストレスから書道教室をずる休み。AAAMYYYの孤独な記憶

Netflixオリジナルドラマ『マインドハンター』は、FBI捜査官が凶悪犯罪者の心理を分析し、シリアルキラーを未然に逮捕するために奔走するという、実話を基にした話だ。その中で、捜査官の幼い息子が近所の新生児を殺してしまうシーンがある。普段から言葉を発しようとしない息子は、父親の書斎から殺人現場の写真を見つけ、幼心にも人間を殺める行為に好奇心を抱いていたことがひとつの要因との描写があった。

だがそれだけではなく、私が思うに、忙しい父親とうまく交流が持てない息子が、愛情に飢えていたのがもうひとつ大きな要因であると考える。

『ぼくのエリ』のオスカーは居場所がなくてひとりぼっちだ。母親は優しいがいつも仕事でオスカーを相手にしていられない。オスカーの妄想の中での復讐は、気持ちをうまく表現できないオスカーの葛藤が顕著に表れていると言えるのではなかろうか。劇中に出てくるいじめっ子たちも、よくいるリーダー格とその取り巻きの3人組で、特にリーダーの男の子は日常や家庭に何らかのストレスを抱えており、それをオスカーにぶつけているように見える。

©EFTI_Hoyte van Hoytema
©EFTI_Hoyte van Hoytema

自分が子どもの頃、どんなことにストレスを感じていただろう? 私自身は家族に愛されながら、割と自由奔放に育てられたと思うが、学校でいじめのターゲットにされたり、思春期の同級生からかわれたりしたこともある。かつて活発だった私も一気に孤立し、ストレスで書道教室を何度もズル休みしたり、家に引きこもるようになった。

姉の高校のバレー部の標語「苦しきときこそ笑顔」という言葉に感化され、何となく親に迷惑をかけないように勉強と部活だけ頑張った。その後は進学高に入学し、一目散に下宿に入った。高校では奨学金を使って海外留学を繰り返し、CA(キャビンアテンダント)を目指すことになるのだが、私の今述べた学生時代の行動の中にいくつもの「刷り込まれた価値観」があるのにお気づきだろうか。

撮影:AAAMYYY
撮影:AAAMYYY

「刷り込まれた価値観」に踊らされる私たち。それは本当に「悪」なのか?

「刷り込まれた価値観」とは、生まれながらにして抱く先天的価値観(好き、おいしいなど)ではなく、周りや社会からの影響でそれが「良い」「悪い」に当てはめられた後天的価値観のことである。(岡本茂樹著「いい子に育てると犯罪者になります」より一部抜粋)

よく考えてみれば、いじめのターゲットになったのには私自身や同級生の何らかの悪しき理由があったであろうし、そもそも、孤立したり引きこもることが「悪」なのも変だ(そのおかげで今音楽家として生きているのも事実だ)。

苦しきときこそ笑顔で本当の気持ちを表に出せず、親に迷惑をかけないという考えで、よりひとりで抱え込むようになった。勉強と部活だけ頑張ったのは推薦入学のためだし、海外留学をすれば周りから評価されると思っていた節もある。CA(キャビンアテンダント)という仕事も華やかそうで、憧れがあった。どれにおいても良し悪しは一概には言えないが、私にとっては、それらが自らをより良い人間に導くと信じていた「刷り込まれた価値観」であった。

撮影:AAAMYYY
撮影:AAAMYYY

つまり何が言いたいのかというと、たとえば「有名進学校に入って医者になり、お金持ちになって一等地に高級車とともに住む」というような誰かの幸せの価値観は、その人が幼少期から成長する過程において後天的に周りから請け負った価値観であり、それが社会的価値観となっているということだ。親が幼少期に経験してきた苦労を子どもにかけないように、親の価値観で愛を持って子育てしている人が大半だと思うが、しかし果たして親の価値観は、その親の親からの受け売りではなかろうか。

そして社会的価値観は、必ずしもすべての人に当てはまる価値観ではない。恐らく激しい描写やショッキングなシーンのある映画や音楽で表現されているものが、それを風刺し訴えているのではないかと思う。それが社会の倫理観という「ふるい」にかけられ、各家庭や個人で良し悪しの価値観の天秤にかけられる。そのときにあなたの価値観が刷り込まれたものなのかを理解し、受け入れ、より考えを深く巡らせることが非常に大切だと思うのである。

撮影:AAAMYYY
撮影:AAAMYYY

関連するオススメのNetflix作品:
『マインドハンター』『はじまりへの旅』

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リリース情報

Tempalay
『21世紀より愛をこめて』(CD)

2019年6月5日(水)発売
︎価格:2,860円(税込)
PECF-3234

1. 21世紀より愛をこめて
2. のめりこめ、震えろ。
3. そなちね
4. 人造インゲン
5. どうしよう
6. 脱衣麻雀
7. Queen
8. THE END(Full ver.)
9. SONIC WAVE
10. 未知との遭遇
11. 美しい
12. おつかれ、平成

AAAMYYY
『BODY』

2019年2月6日(水)発売
価格:2,547円(税込)
PECF-3222

1. β2615
2. GAIA
3. 被験者J
4. Z(Feat.Computer Magic)
5. ポリシー
6. ISLAND(Feat.MATTON)
7. 愛のため
8. All By Myself(Feat.JIL)
9. 屍を越えてゆけ
10. EYES(Feat.CONY PLANKTON)

プロフィール

AAAMYYY
AAAMYYY(えいみー)

長野出身のシンガーソングライター / トラックメイカー。キャビンアテンダントをめざしてカナダへ留学、帰国後の22歳より音楽を制作しはじめ、2017年よりAAAMYYYとして活動を開始。2017年の『WEEKEND EP』を皮切りに、『MABOROSI EP』『ETCETRA EP』と3作品をカセットテープと配信でリリースしている。さらに、RyohuのゲストボーカルやTENDREのサポートシンセ、DAOKOへの楽曲提供やCMソングの歌唱、モデル、ラジオMCなど多方面に携わるなか、2018年6月からはTempalayに正式加入。2019年2月、ソロとしての1stアルバム『BODY』をリリースした。

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