戸田真琴が試みる、男女共存の世界 私たちは傷だらけの隣人同士

戸田真琴が試みる、男女共存の世界 私たちは傷だらけの隣人同士

テキスト
戸田真琴
撮影・編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

「対等」であることが許されなかった、父との思い出

あくまで私が戦って苦しみを抱いた人々の話であって、もちろん男性全体に主語を置き換えられる話ではないので、「男性である」というだけで同一視されているとは思わないでほしいのだということを先に伝えておきます。

ある一定の世代の、権力や財力や体力、あるいはそれらが強大であるように魅せる能力を持った男性、という人たちと分かり合えないままぶつかりあうことが、女性や、彼らの部下に位置する男性にとって避けられない災害のようなものとなっています。

もっとも身近なところで例を挙げると私の父親になってしまうのですが、父はがたいが大きく、声も大きいため少しでも意見がぶつかると声を荒げて私をねじ伏せようとしました。相手の話を冷静に聞こうという姿勢に乏しく、少しでも私の話す言葉が父の理解の範疇を越えようものなら「おまえ、ガキのくせに小難しい屁理屈ばっかり言って俺を馬鹿にしているんだろ」と怒鳴られ、話を聞いてもらえませんでした。

馬鹿にするつもりは毛頭なく、対話することも理解しあうことも諦めていない、可能性があると思っているから真剣に話そうと試みているのに、そもそも父にとっては、女・年下・娘……である私は、自分よりも格下でなければならない存在に見えているようでした。私は対等を目指しましたが、「対等」は父にとってプライドの傷付けられる結果として処理される。そうなると、私は父と話をする術を持つことができません。女で、年下で、娘……父よりもばかで弱々しくいなければいけない存在、としてしか家族の中にいることができないのでした。

「男は男らしく」の影に隠れた負の感情

これはうちの父だけの特別わがままで非生産的な性格だと思っていたのですが、社会に出てみると似たような思考回路を持って、女性や部下に怒鳴り散らす男性が山ほどいるのだということに気づかされました。男尊女卑が顕著だった時代に生まれ育った男性たちは、「男は男らしく」と教えられる過程で、「男らしくない」とされる弱音、不安、悲しみ、羞恥……本来複雑に絡み合っているはずのネガティブな感情のすべてを、誰かに怒りを放つことでしか表せなくなってしまったのかもしれません。

怒り方にも種類があって、父のように怒鳴り散らす人もいれば、「負け」を喫さないために議論の途中で黙りこくってしまう人、不機嫌になって無視をする人、さまざまなやり口の男性を見てきました。その誰しもに共通するのが、傷つけられた自分のプライドの慰めを、あらゆる手段で他人に求めてくるというところです。

女性、あるいは部下の男性など自分よりも弱い立場にいるであろう人間に対して、ただ素直に怒鳴られることや、負けを認めること、煽てたり謝ったりして機嫌をとってもらうことなどを無言のうちにねだります。社会的立場上逆らえないことが多いまわりの人たちは、大の大人の傷ついた尊大なプライドの慰めを半ば強要されることになります。それを「パワハラ」と呼び、その被害に遭うたびに絶望を感じますが、「パワハラ加害者」は、本当に理解不能な恐るべきモンスターなのでしょうか。

戸田真琴
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書籍情報

『あなたの孤独は美しい』
『あなたの孤独は美しい』

2019年12月12日(木)発売
著者:戸田真琴
価格:1,650円(税込)
発行:竹書房

プロフィール

戸田真琴(とだ まこと)

2016年にSODクリエイトからデビュー。その後、趣味の映画鑑賞をベースにコラム等を執筆、現在はTV Bros.で『肯定のフィロソフィー』を連載中。ミスiD2018、スカパーアダルト放送大賞2019女優賞を受賞。愛称はまこりん。初のエッセイ『あなたの孤独は美しい』を2019年12月に発売。

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