M-1王者・霜降り明星がアップデートする、「第七世代」の定義

M-1王者・霜降り明星がアップデートする、「第七世代」の定義

インタビュー
矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
中田光貴(CINRA.NET編集部)
撮影:鈴木渉 テキスト・編集:中田光貴(CINRA.NET編集部)
2019/12/18
  • 726
  • 14

優勝してからは伸び伸びと漫才ができるようになりました。(粗品)

―2015年に復活してからの『M-1』って、出場資格がコンビ結成10年目から15年目までに広がったこともあって、より完成度の高いベテランの漫才師とも戦わなきゃいけなくなったと思うんです。その中で、若いお2人が優勝をかっさらっていったのが個人的に本当に痺れたんですけど、今振り返って優勝したときの気持ちはいかがでしたか。

粗品:「ほら見ろ!」って、思わず雄叫びを上げてしまいました。今まで辛く当たってきた先輩の顔とかが思い浮かんで、「ざまぁ見ろ!」と。「信じてきたことは間違ってなかったぞ、ボケェ!」みたいな感じでしたね。

粗品(そしな)

―せいやさんは?

せいや:思い出したいんですけど、記憶に霧がかっているというか。映像もたまに見るんですけど、「これほんまに俺らか……?」って思いますね。記憶と一致しないんですよ。どんな気持ちだったのかも、正直鮮明に覚えてないんですよね。人って本気で幸せを感じるとそうなるんかな、って。よく覚えてないって、初めての体験でした。

―霜降り明星って、一際『M-1』にこだわりとプライドを持ってるコンビだと思っていて。『M-1』優勝後、ネタの内容に変化はあったのでしょうか。

粗品:僕たちは本当に『M-1』のことしか考えてないネタ作りをしていたんで。固有名詞は出さないとか、芸能人の名前をいじらないとか、審査の減点になることは避けてきてやってたんです。『M-1』の予選でやっても評価されないから、普段のライブでもアドリブを絶対やらんかったり、どっちかが噛んだときも、それをいじって笑いに変えたりするのは一切しなかった。

でも、最近はそういうのも楽しんだり、ネタの幅は広がりましたね。優勝してからは伸び伸びと漫才ができるようになりました。

せいや:これまでは過去問ばっかり解いてたというか、『M-1』に受かるためだけの勉強ばっかりしてたんです。だけどここからは勉強というより、研究。2人で好きな分野について楽しく伸び伸び、本当の意味で漫才を楽しんだり、好きになれるんかなって。

それまでは漫才してたというより、『M-1』のために生きてた2人だったんで。それがやっと漫才になったって感じです。『M-1』の4分のためだけに、10分ネタの中でも4分ネタをどう試すかとかばっかりやってましたけど、今は楽しく10分ネタの漫才をできるようになりましたね。

ルミネtheよしもとでの漫才の様子。
ルミネtheよしもとでの漫才の様子。
ルミネtheよしもとでの漫才の様子。この日も10分のネタを披露していた。
ルミネtheよしもとでの漫才の様子。この日も10分のネタを披露していた。

僕が「第七世代」を生んだってよく言われるんですけど、こんなことになるとは僕も思ってなかった。(せいや)

―もしかしたら興奮で覚えていらっしゃらないかもしれないですが、『M-1』優勝後の記者会見でせいやさんが霜降り明星のことを「新世代という感じで取り扱ってほしい」と仰っていたんですね。

粗品:言うてた!

せいや:それ僕じゃないですね。

―いや、確かにせいやさんが仰っていました(笑)。

粗品:言うてた、言うてた。

―このときから世代を意識していたんだと思いました。ラジオのフリートークを聞いていても、スマブラ(大乱闘スマッシュブラザーズ)とかポケモンが出てきたり、企画ライブのタイトルも『通信ケーブル』だったり、同世代の心をくすぐるワードをよく使われていますよね。お2人は「世代感」をすごく大事にしているコンビだという印象があるんですが、そう言われてどう思われますか?

粗品:(せいやを見て)どう思われますか?

せいや:まぁ、やっぱ、僕らが新世代の筆頭なんかな。

粗品:やかましいわ! やめとけ!

せいや:お笑い新時代を切り開く……。

粗品:なにを言うとんねん!

―(笑)。実際のところは、いかがでしょう?

せいや:正直そのときも興奮してたので、世代でやっていこうとか、そんな熱い気持ちじゃなくて、単純に言ったんだと思います。そろそろ「ポケモン」とか「デジモン」みたいなテーマや言葉で笑いが取れたら楽やなぁ、みたいな気持ちですね。

プロレスとかキン肉マンとか、テレビでやっていて正直わからんこともある。だからそことは別に見てほしいなって。やっぱり全然歳も違うんでね。20個上の人とかと常に仕事してるので。

―そう考えると、すごい状況ですよね。

せいや:そんな職場もあるだろうけど、上司とは戦わないじゃないですか。僕らは戦わされるんで。ニュアンスとしては、さすがに20年離れたら別のジャンルとして扱ってほしいな、みたいな感じですかね。

せいや

―ただちょっと気になったのが、会見のときに「新しい風と言いますか、新世代という感じで取り扱ってほしい」って言い直してるんですよ。

粗品:あ、そうや。なるほど。言ってた言ってた。

―「風」だと霜降り明星単体、「世代」だとみんなで、ってニュアンスに聞こえて。

せいや:世代というか、時代ですね。新しい時代。

粗品:もっとエグい。時代て。

―(笑)。そんな中、『霜降り明星のだましうち!』(ABCラジオ)で、せいやさんが「第七世代」という言葉を発言されました。

粗品:はい、来た!

―ラジオで発した言葉が、今非常に強い力を持って広がりを見せているわけですが、率直に今どんな心境ですか?

せいや:いや、僕関係ないですよね。

粗品:関係はあるんじゃないですか?

せいや:うーん……そうですね。僕が「第七世代」を生んだってよく言われるんですけど、こんなことになるとは僕も思ってなかったんで。(明石家)さんまさんとかが「第七世代」って言い始めてますからね。パッてテレビ点けたら、「第七世代がどう」とか言ってるんですよ、関係ないところで。

粗品:おらんところで。

せいや:言葉として定着したなって。だから僕の思いは別に入ってないですね。「第七世代」というワードだけ出したと言うか。

せいや
Page 3
前へ 次へ

プロフィール

霜降り明星(しもふりみょうじょう)

粗品とせいやによって2013年1月に結成。2017年『第38回ABCお笑いグランプリ』優勝、2018年『第7回ytv漫才新人賞』優勝。同年、『M-1グランプリ』にて史上最年少、史上初の平成生まれで王者に輝く。粗品は2019年に『R-1ぐらんぷり』で優勝、せいやは2018年に『人志松本のすべらない話』でMVSを獲得するなど、それぞれピンでも活躍している。

Category カテゴリー

Latest Articles 最新の記事

What's "Fika" ? フィーカとは

「Fika」はCINRA.NETとVOLVOが送る、北欧カルチャーマガジンです。北欧デザインの思想の基盤を「クラフトマンシップ×最先端技術」と捉え、そこに学びながら、これからのカルチャーやライフスタイルにまつわるコンテンツをお届けします。