AAAMYYYがNetflix作品を愛でる 連載初回は『ザ・レイン』を紹介

Netflixを愛するAAAMYYYによる連載がスタート

Netflixがやってきてからというもの、その素晴らしいオリジナルコンテンツを貪るように観ていた。何しろSFやサスペンスを好む私の心に、ズバズバと刺さる作品ばかりなのである。それは自らの音楽にも昇華され、インタビューなどでNetflix愛を散々語るものだから、どうやらその噂がCINRAの担当者の方の耳にも入っていたらしい。

そういうご縁で、今回『Fika』という北欧に特化したメディアにて、Netflixのコラムを連載させていただくことになった。ありがたいお話である。せっかくなので、評論ではなく私なりの観点で、作品から感じ取ったテーマについて語りたいと思う。若干のネタバレを含むので悪しからず、注意して読んでいただけたら幸いだ。

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舞台は、殺人ウイルスの雨で壊滅したデンマーク。その世界で、たまたま生き残った姉弟を巡る『ザ・レイン』を紹介

もし世界が終焉を迎えたとして、なぜか自分が生き残っていたとしたら、あなたはどうするだろうか。

今回、私が選んだのはデンマークが舞台のNetflixオリジナルシリーズ『ザ・レイン』。殺人ウイルスの雨により、スカンジナビアの人類がほぼ死滅して6年。地下シェルターで生き延びた姉弟が安住の地を求め闘争する、ポストアポカリプス的サイエンス / ヒューマン / サスペンスドラマである。

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「ポストアポカリプス」とは、人類文明が壊滅した後の世界のことを指すらしい。宇宙モノや、ゾンビモノ、感染系スリラーなどは大抵この終末後の世界が描かれており、このジャンルに値する。例に挙げるとすれば、『ウォーキング・デッド』や『The 100/ハンドレッド』『アイ・アム・マザー』『バード・ボックス』『カーゴ』『アイ・アム・レジェンド』などがある。

ポストアポカリプスに描かれる人々はざっくり2種類で、①「たまたま生き残った人間」と、②「終末の鍵を握る権力者」である。ちょっと詳しくそのあたりを考察していこう。

様々な作品で描かれるその退廃的な世界は、①生き残った人間たちのその後の物語の場合が多い。『ウォーキング・デッド』をシーズン5までしか見ることができなかったのは、極限状態を超えた人間のむごさや愚かさに耐えきれなくなってしまったからだ。ゾンビだけ倒していけばいいと思ったら、大好きなキャラクターが急に人間に鉄バッドでズタズタに殺されてしまうんだから、嫌になってしまった。

『ザ・レイン』でもやはり、本当に恐ろしいのは人間自身であるということを思い知らされるのだが、よく考えてみれば人間がこれまで辿ってきた歴史の繰り返しがポストアポカリプスの世界で行われているのではないだろうか。

撮影:AAAMYYY

ポストアポカリプス的世界で巻き起こりがちな人間模様。そこに垣間見る、人間の愚かさ

人間が元来持つ「生きたい」という生存意識から始まり、生存するために狩る、食べる、眠る、そのために家やシェルター、畑をつくり、それを守るために敵がいれば戦う。武器が生まれる。仲間や家族が増え、コミュニティができ、それを統治するリーダーや役割が生まれる。統治するためにルールや秩序がつくられる……。というように、無数の国のようなものが再び出来上がっていく。

その中で、神様だとか暴力だとか人間の観念的な部分で各々の国の個性が形づくられ、その違いで摩擦が起こって戦争になったりしていく(『ウォーキング・デッド』の場合は、恐らくここで暴力によるヒエラルキーが台頭したのだろう)。人間というものは平穏に生きてゆきたいがために、秩序と暴力をどうやら必要とするらしいので、非常に興味深い。どこかしらに属するという集団意識が、心に安心感をもたらすのかもしれない。

そしてその安心を利用して悪巧みをする切れ者がでてくる。大体それが政治家だったり権力者だったりするのは、現在の政治情勢をみても明らかだ。世界が崩壊した後に、同じことの繰り返しが行われると思うと、人間は図太くて愚かな生き物だなあと思うし、そういう人間が終焉後も大概生き残るものだから真面目に優しく生きている人は救われないし、報われない。まったく理不尽な世界である。

撮影:AAAMYYY

本作のテーマは、いきすぎたテクノロジーの発展が呼び起こした「人間の浄化」?

『ザ・レイン』では、②終末の鍵を握る権力者も描かれている。主人公たちは、どうやら彼らの住む世界を崩壊させた雨には、彼らの父親が研究員をしていたアポロン社が関係しているということを突き止める。ウイルスへの抗体は未だ見つかっておらず、アポロン社の施設では人体実験が繰り返し行われていた。抗体を見つけるためには手段を問わず、上層の役員の指示で社員を巧妙に操り、残虐に人々を陥れてゆく。

先に、人間は平穏に生きるために秩序と暴力を必要とするらしいと書いたが、どの場合でも必ずリーダーという存在が浮かび上がる。過去の歴史から挙げるとすれば、恐怖政治で有名なヒトラーだとかスターリンなどだ。終末の鍵を握る権力者、とはそういった人間である。民族浄化は戦争における戦術であったが、『ザ・レイン』で行われたのはずばりこれで、度を越したテクノロジーを手にする者による「人間の浄化」がテーマなのではなかろうか。

テクノロジーというものはそもそも、起源を辿ればエジソンが発明した電気だとか、車や飛行機などの機械、水道や排水設備、医療など、全て人間の生活をよりよくするために発明されてきた技術である。そしてテクノロジーは戦争に応用され、無線や精密な武器、原子爆弾が生まれた。テクノロジーは強大な武力になり、それを有する者は②と同じ権力者である。『ザ・レイン』においてはアポロン社がそうである。政治家や富豪もこの立場になり得る。

2100年までに110億人になると言われている世界人口。環境保護のためには、人間の浄化が必要なのか?

さらにテクノロジーが発展するのに比例して、環境破壊が進んだ。石炭や森林を燃やして機械産業のエネルギー源としてきた副作用は、特に産業革命以降の酸性雨による森林破壊や健康被害として北欧で顕著になった。『ザ・レイン』で描かれた殺人ウイルスの雨という設定はそこから来ているのかもしれない。

撮影:AAAMYYY

デンマークはドイツやスイスのような環境先進国である(Netflixオリジナルシリーズの『ザ・クラウン』でも、産業革命の副作用が描かれている。皇室の話であるが、当時の様々な事実隠蔽や情報操作についても触れられているので観て欲しい)。

環境破壊が人間の所為なのは紛れもなく事実で、環境破壊による世界の終焉も数多くの映画のテーマとなっている。食糧難や温暖化による自然災害の増加、挙げればきりがないほど環境問題は深刻だ。世界人口は2100年までに110億人になるとまで言われているが、明確な環境保護の方法は未だほとんどない状態である。

②の終末の鍵を握る権力者は、そんな地球のピンチのときに一体どうするのか。様々な映画では、地球脱出計画が水面下で行われていたり、ノアの箱船計画なんかもあったが、『ザ・レイン』ではずばり人口的殺人ウイルスの雨を降らせることによって、環境破壊を食い止める目的があったと私は考察する。

「The Greater Good」という言葉があるが、大義のために犠牲は厭わないという意味だ。言い換えると我々のような市民は必要な犠牲であり、①「たまたま生き残った人間」は、②「終末の鍵を握る権力者」の大いなる計画のための駒に過ぎないのである。それが私が『ザ・レイン』から感じ取った「人間浄化」というテーマである。そして、想像がつくだろうが、その先に美しい未来は恐らくないのである。なぜなら本当に恐ろしいのは人間自身だからだ。

もし世界が終焉を迎えたとして、あなたがなぜか生き残っていたとしたら、「人間」には気を付けたほうがよさそうだ。

作品情報
Netflixオリジナルシリーズ『ザ・レイン』シーズン1~2

Netflixにて全世界独占配信中

原作・制作:
ヤニック・タイ・モショルト
エスベン・トフト・ヤコブセン
クリスティアン・ポタリヴォ

リリース情報
AAAMYYY
『BODY』

2019年2月6日(水)発売
価格:2,547円(税込)
PECF-3222

1. β2615
2. GAIA
3. 被験者J
4. Z(Feat.Computer Magic)
5. ポリシー
6. ISLAND(Feat.MATTON)
7. 愛のため
8. All By Myself(Feat.JIL)
9. 屍を越えてゆけ
10. EYES(Feat.CONY PLANKTON)

プロフィール
AAAMYYY (えいみー)

長野出身のシンガーソングライター / トラックメイカー。キャビンアテンダントをめざしてカナダへ留学、帰国後の22歳より音楽を制作しはじめ、2017年よりAAAMYYYとして活動を開始。2017年の『WEEKEND EP』を皮切りに、『MABOROSI EP』『ETCETRA EP』と3作品をカセットテープと配信でリリースしている。さらに、RyohuのゲストボーカルやTENDREのサポートシンセ、DAOKOへの楽曲提供やCMソングの歌唱、モデル、ラジオMCなど多方面に携わるなか、2018年6月からはTempalayに正式加入。2019年2月、ソロとしての1stアルバム『BODY』をリリースした。



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「幸福度が高い」と言われる北欧の国々。その文化の土台にあるのが「クラフトマンシップ」と「最先端」です。

湖や森に囲まれた、豊かな自然と共生する考え方。長い冬を楽しく過ごすための、手仕事の工夫。

かと思えば、ITをはじめとした最先端の技術開発や福祉の充実をめざした、先進的な発想。

カルチャーマガジン「Fika(フィーカ)」は、北欧からこれからの幸せな社会のヒントを見つけていきます。

スウェーデンの人々が大切にしてい「Fika」というコーヒーブレイクの時間のようにリラックスしながら、さまざまなアイデアが生まれる場所をめざします。

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