モテに背いた「装い」で、戸田真琴は自分らしさを取り戻した

モテに背いた「装い」で、戸田真琴は自分らしさを取り戻した

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戸田真琴
撮影・編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

東京の街で学んだのは、快適な暮らしのための「装い」があるということ

私は一般的に「モテ服」には分類されにくい、どちらかというと個性的な色や柄の服が好きなのですが、それにはもともと持っている好みのほかに、実は後天的な理由があります。

それは、端的に言うと「ナンパ対策」のようなものでした。

ある程度の年齢になって一人で街を歩くようになると、男性に突然声をかけられることが多々ありました。ただのナンパもあれば、夜のお店のスカウトの人や、何人かでからかい気味に声をかけてくる人たちもいて、それだけでも都会にも男性にも慣れていなかった私にとっては怖いと感じるものだったのですが、中には返事をしないと暴言を吐いたり、腕を掴んでくるような人もいました。

また、電車では極端に近くに来て携帯電話を覗かれたりと、大きな被害には遭わずに済んだものの、女の子が一人で出歩くのが危ない、という噂は本当だったんだな……と辟易したものです。

戸田真琴

気付いたのは、それは決まって地味な服装をしているときに多く起こる現象だと言うことでした。試しにひとつ、ヘンテコで派手な動物柄のカバンを買って持ち歩くと、街中で声をかけられることはめっきり減りました。気付かず声をかけてくる人にも、変なカバンをよく見えるように持ち直し、少し変わった人のようなふりをして曖昧に返事をすると、そそくさと居なくなるのでした。

なるほど、男の人がやましい目的を持って声をかけようとするとき、ターゲットの女の子に個性や分かりにくさは要らないんだな。そう解るととても楽になりました。私はある程度、個性的に見える服装を好むようになり、それによって快適な暮らしを取り戻したのでした。

私が「いいな」と思う私の姿でいることを好ましく思う人となら、きっと、より仲よくなれるような気がする

椎名林檎さんが「CDTV」の番組内インタビューで語っていたことも印象的でした。デビュー当初「水着を着て出演してよ」などと言われていたこと。音楽を蔑ろにされ「女性」として値踏みされることに抵抗するように、アーティスト写真のビジュアルがどんどん過激に武装されていった、という話は、ショックだったのと同時にとても安堵してしまいました。

癖のある服装をすることは、ある意味では自分から関わり合う人間を選ぶという行為でもあります。それに対してどこか、わがままを押し通しているような、罪悪感があったのです。

戸田真琴

仕事柄「どうして皆に好まれるような女性らしい服装や髪型をしないの?」「強い色柄を着ると人に悪い印象を持たれるよ」……さらには「地味な顔立ちなのだから地味な服装をすればいいのに!」「背が低いのだから前髪を短く切って幼く見せて欲しい」などと強く言われてしまうこともありました。でも、それを実行して見た目を好印象にすることによって近付いてくる人が増えたとしても、私にとって本当に仲よくなれる人との出会いなのかどうかは分からないな。と思ってしまっていました。

人気商売としてはあまりベストとは言えない選択なのかもしれませんが、私は私のことを気に入る人のことを、「装い」によって、ある程度選んでしまっているのです。私が「いいな」と思う私の姿でいることを好ましく思う人となら、きっと、より仲よくなれるような気がするからです。

戸田真琴

装いは、その人の世界との関わり方を、私たちが思っているよりも深く、決定してしまうのかもしれません。「他人からどう思われるか」が考え方のベースにある人と、「自分自身がどうありたいか」をベースに考える人とでは装うために使う神経が異なるのだと思いますし、環境や仕事による縛りはあれど、ある程度は誰もが自分自身で装いを選ぶことを許されている、という事実は純粋に希望なのだな、と感じています。

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プロフィール

戸田真琴(とだ まこと)

2016年にSODクリエイトからデビュー。その後、趣味の映画鑑賞をベースにコラム等を執筆、現在はTV Bros.で『肯定のフィロソフィー』を連載中。ミスiD2018、スカパーアダルト放送大賞2019女優賞を受賞。愛称はまこりん。

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