松浦弥太郎が語る。一過性のブームではない定着した北欧の魅力

松浦弥太郎が語る。一過性のブームではない定着した北欧の魅力

インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:西田香織 編集:青柳麗野・飯嶋藍子
2018/09/13
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「ていねいな暮らし」や「豊かさ」など、私たちの生活にまつわるさまざまな気づきを、独自の観点から再定義し続けてきた松浦弥太郎。そんな彼にとって「北欧」とは、どんな場所なのだろうか。

「決して北欧に詳しいわけではありません」と言いながらも、これまで何度も北欧を訪れ、そこに暮らす人々や文化から、いろいろなヒントやインスピレーションを得ているという松浦。片や、この8月下旬、ストックホルムに北欧1号店をオープンさせたユニクロ。その両者がタッグを組んで現在進行形で展開中なのが、「LifeWear Story 100」というプロジェクトである。

それは果たして、どんな意図のもとに生み出された企画なのだろうか。そして両者はなぜいま、「北欧」を目指すのだろうか。ユニクロのグローバルマーケティング担当者である松沼礼の同席のもと、松浦弥太郎に話を聞いた。

「北欧と日本は大切にしているものが似ている」(松浦)

—まずは端的な質問から。松浦さんにとって北欧とは、どんな場所なのでしょう?

松浦:正直、僕の中に北欧が特別という感覚はあまりないんです。「北欧にすごい夢中」とか「北欧について語りたい」とか、「いまは北欧がある種のトレンドである」みたいな気分も特にありません。

ただ、世界を見渡したときに、アメリカだったり、イギリスだったり、フランスだったり……いろんな国があって、それぞれの国の魅力や文化が自分にいろんな刺激を与えてくれたり、なにかを考えさせてくれたりするわけです。「北欧」と一括りにしてしまっていいのかわからないですけど、北欧も、自分にとってはアメリカやイギリスと同じく、常にベンチマークしている場所のひとつです。

松浦弥太郎
松浦弥太郎

—ほかの国とそこまで変わらないということですか?

松浦:ただ、ほかの欧米の国々に比べると、北欧のライフスタイルや文化には、僕ら日本人にとって非常に近しいものを感じます。たとえば、常に自然と向き合う意識だったり、なにかを飾り立てるより、どちらかと言うとシンプルな志向だったり、僕ら日本人がもともと備え持っているものと、非常に似たところがあるなあって。あと、大切にしているものも似ていますよね。たとえば、手仕事であったり……。

—いわゆるクラフトマンシップ的なものとか?

松浦:そうですね。どちらかと言うと、目に見えてわかるというよりも、テクスチャーが温かいものとか心地好いものなど、触れてわかる感覚の良さっていうのは、すごく北欧ならではのものだし、日本人として僕らが持っている、ある種繊細な感覚とすごく重なるところがあると思います。

「北欧も日本も、それぞれがシンプルを再定義し合いながら、相互に刺激し合っている」(松浦)

—日本人が北欧の文化に親しむようになって久しいですが、それはもはや一過性のブームではなく、ある程度定着したものになりつつあるように思います。それについてはいかがでしょう?

松浦:ブームというのは、非常に物質的なものですからね。そうではなくて、その背景にあるライフスタイルや文化、あるいは歴史みたいなことが、やっと最近になって伝わり始めたところがあるのかもしれませんね。

さっき言ったように、北欧の文化には、僕らが日本人として、うまく説明はできないんだけど、なんとなく共感できるというか、スッと理解できるみたいなところが、実はたくさんあるから。そこにいま、新しい価値観を感じたり、豊かさを感じたりする人が増えているのではないでしょうか。そこから学べるものが、もっとあるんじゃないかって。そういう好奇心が湧いてきているのが、昨今の状況なのかなっていう気がします。

松浦弥太郎

—なるほど。

松浦:しかも、それが一方向的なものではなく……いま北欧にいるクリエイターとかアーティストとか、なにかを発信している人たちに話を聞くと、日本から多くのことを学んでいて、そこで学んだものを自分たちの表現として発信している人も少なからずいるんですよね。で、それを日本人が見て、さらにそこから学ぶみたいな。そういう交流というか、感覚の交歓があることを、いまはすごく感じられます。

—一方的に影響を受けているわけではなく、お互いがお互いの文化に影響し合っているような状況であると。

松浦:うん、そうですね。これはあくまでも僕の主観ですけど、ひとつはシンプルっていうことにすごく共感するところがありますよね。日本人が考えるシンプルと、北欧の人たちが考えるシンプルというのは若干違うんですけど、それぞれがシンプルを再定義し合いながら、相互に刺激し合っている。それが衣食住の全般にわたって見受けられる感じがします。

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プロフィール

松浦弥太郎(まつうら やたろう)

2005年から「暮しの手帖」編集長を9年間務め、2015年7月にウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。2017年、(株)おいしい健康・共同CEOに就任。「正直、親切、笑顔、今日もていねいに」を信条とし、暮らしや仕事における、たのしさや豊かさ、学びについての執筆や活動を続ける。著書多数。雑誌連載、ラジオ出演、講演会を行う。中目黒のセレクトブックストア「COW BOOKS」代表でもある。

松沼礼(まつぬま れい)

2004年にグラフィックデザイナーとしてUNIQLOに入社。2007年グラフィックデザインチームリーダーとなりUTブランドを発足。UT Store Harajuku.の立ち上げの中心となる。2011年にはデジタルマーケティングチームリーダーを兼務し、「Uniqlooks」「Voice of New York」などを多数のデジタルマーケティングを展開。MoMAとのアートプロジェクトやPharrell Williams、KAWSなどとのプロジェクトも実施。現在、UTコラボレーション事業推進部部長・グローバルマーケティング部PR部長を務める。

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