なぜ人はサウナに行くのか。服も肩書きも脱ぎ捨てて裸になる意義

なぜ人はサウナに行くのか。服も肩書きも脱ぎ捨てて裸になる意義

インタビュー・テキスト
柳澤はるか
撮影:前田立 編集:中田光貴(CINRA.NET編集部)

日本の男性にとって、そして女性にとっても、サウナが1つの救いになる気がしている。(ヨーナス)

―日本ではサウナと水風呂を交互に入る文化があり、そこで精神が落ち着く感覚を得ることを「ととのう」と表現する人たちもいます。今、日本社会は先行きが非常に不透明で、不安が多い時代。だからこそ、心の平穏を求めてサウナへ行く人が増えているのかもしれません。サウナは心の汚れも落とす場所だという話がありましたが、今、世界的に充満している「心の汚れ」とは、一体なんなのでしょうか。

ミカ:フィンランドの人々は今、地球温暖化を自分事として捉えていて、非常に心配しています。個人レベルの問題として切実に感じながら、しかし自分に出来ることは限られている。その歯がゆさをずっと抱えています。さらには、自分も地球温暖化の原因を作っている1人だという罪悪感もあります。

そのように今は、グローバル規模の問題を個人の不安として受け止めてしまい、それがもともと持っている個人的な悩みや不安と合わさり、どんどん心に溜まっていく時代です。だから日本の人たちも、サウナで心をいったんゼロにする必要性を感じているのかもしれません。

また、時代とともにセルフケアの知識が浸透し、自分を大切にする意識が高まってきたことも、サウナ流行の背景にはあると思います。

ミカ・ホタカイネン

―ヨーナス監督は、人々の「心の汚れ」と、サウナの関係をどう見ていますか?

ヨーナス:これは私自身の話なのですが、今から12年くらい前、私の精神状態はボロボロになってしまっていて、恋人からは「もう医者に診てもらいなさい。私の力では無理だから」と言われていました。でもそのときの自分は、いかにも典型的なフィンランドの男らしく、「誰がそんなところに行くか、俺には必要ない」と突っぱねていて。

そんなとき彼女から、「でもあなた、サウナに行くと、いつも世界一幸せな顔になって帰ってくるじゃない」と言われたんです。そこで私は、毎週金曜日にサウナに行き、2時間から4時間くらい過ごすようになりました。すると、みるみる元気になっていったんです。その体験がこの映画の着想のきっかけになっています。

ヨーナス・バリヘル

―監督自身、サウナに救われた経験があったんですね。

ヨーナス:そうなんです。そして日本社会も、当時の自分の状況と似ているのではないかと思います。仕事中心で、誰にも心を開けないような人が、特に男性には多い。燃え尽き症候群の一歩手前まで追い詰められている人も、いるんじゃないでしょうか。その意味で日本の男性にとって、そして女性にとっても、サウナが1つの救いになる気がしているんです。

サウナはいろんなものを見つけられる場所。孤独に苦しんでいる人がサウナに行けば、同じような気持ちの人と出会えるかもしれない。その意味で、体だけでなく、心にとっても、すごく良い場所なんです。だから、きっと今の日本の社会にも、サウナが必要とされているんじゃないかなと、思います。

左から:ミカ・ホタカイネン、ヨーナス・バリヘル
『サウナのあるところ』ポスタービジュアル
『サウナのあるところ』ポスタービジュアル(公式サイトを見る
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作品情報

『サウナのあるところ』
『サウナのあるところ』

(2010年 / フィンランド / フィンランド語 / ドキュメンタリー / 81分 / 原題:Miesten vuoro / 英題:Steam of Life)
2019年9月14日、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺、新宿シネマカリテほか全国順次公開。

監督:ヨーナス・バリヘル、ミカ・ホタカイネン
後援:フィンランド大使館、公益社団法人 日本サウナ・スパ協会
提供・配給:アップリンク+ kinologue ©2010 Oktober Oy.

プロフィール

ヨーナス・バリヘル

最も国際的に評価されているフィンランド人監督の1人であり、本作でヨーロピアンフィルムアワードにノミネートされ、2010年米国アカデミー賞外国語映画賞のフィンランド代表にも選ばれた。本作や『Mother's wish』(2015)、最新作の『The Happiest Man on Earth』(2019)などは、個人的な視点から社会課題に焦点をあてている。またプロデューサーとして、『Kaisa's Enchanted Forest』(2016)、2018年のフィンランド映画祭で上映された『Entrepreneur』(2018)や『Baby Jane』(2019)なども手掛けている。

ミカ・ホタカイネン

1998年からテレビ、映画業界で働いており、2004年にフィクションの監督としてヘルシンキ応用科学大学を卒業。本作の他に、『Freedom to Serve』(2004)、『Ristin Tie』(2016)といった長編や『Visitor』(2006)、『Loose Wires』(2010)といった短編ドキュメンタリーを制作している。

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