Mummy-Dの30年ラップを続けた境地「ラップで人間国宝を目指す」

Mummy-Dの30年ラップを続けた境地「ラップで人間国宝を目指す」

インタビュー・テキスト
宮田文久
撮影:鈴木渉 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)
2019/10/11
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日本でラップを根付かせたパイオニア。その魂を若い世代に受け継ぎたい

―Dさんは「フィジカル」が重要だとよくいいますよね。

D:俺は論理的思考に寄りすぎてしまう人間で、天才タイプとは全然違う。気をつけなきゃいけないのは、「頭だけで作らない」ということ。頭の中だけで組み立てたもの……たとえばビートにラップを乗せるときにリリックを書いて、きれいに韻を踏めた、カッケエなと思って録ってみると、超予定調和でぜんっぜん面白くないわけ!(笑)

どこかで自分でもよくわからない部分、破綻、謎みたいなものの余地を残さなきゃいけない。「知性の部屋」だけで書いているとダメで、1回そこを出て、「フィジカルの部屋」に行く。そこでただノリノリで、音楽が命令してくることを感じる。そのバランスは俺の永遠の課題。だから酒を飲むとか、いろいろしてみるわけ(笑)。

Mummy-D

―二つ名は「Mr. Drunk」ですもんね(笑)。若い頃からそういう意識だったんですか。

D:自分が論理的思考の人間だとはわかっていたけど、若い頃は技術がついてきていなかったから、とにかく目の前のものの質を高くするように頑張っていればいいだけだったのね。だって、技術的にどこかで破綻は出てきちゃうから。でもいまはカッチリ作れるようになってきた分、隙がなさすぎるものにならないように、フッと謎が生まれてくる余地を残しておく。

これ、もの作り全般に当てはまるんじゃないかな。壺を作っている人でも同じことをいうかもしれないね。「指の跡がここに残っているからいい」みたいな。

Mummy-Dの<何がリリカル?真実(こたえ)はシニカルなほどにフィジカル>という歌詞が印象的なRHYMESTER“Come On!!!!!!!!”(2010)(Apple Musicはこちら

―なるほど。これからの若い世代に対しては、“Future Is Born”(最新アルバム『ダンサブル』収録)で言祝ぐというか、応援していらっしゃいますよね。その上でDさんのヴァースでは、<ただしオマエらのRootsはあくまでオレだ>とラップしています。

D:最後にね……それをいわなきゃいいのにねえ、ハハハハハ!(笑) いや単に、ちょっといいこといっちゃったかな、ヤなことも入れとこう、というバランスなんだけど。やっぱりラッパーだからね、若い子が出てくると、「おお、ここはかなわねえなあ」と感じつつ、「ここは俺のほうが全然勝ってるな」って大人げなく思うし(笑)。

俺はもっと、若い子と一緒にものを作りたいんです。でもさすがにね、10歳とか20歳差ならまだしも、それより下になってくると、若干の断絶を感じるというか……先達たちの思いがわかってきたんですよ。

―といいますと?

D:大御所の方々も、若い子たちとものを作って一緒に「遊びたい」はずなんですよ。でも近づきがたくなっちゃったり、怖がられちゃったりして……。

俺も最近、若い子のライブをちょっと見に行っただけで、ネットに「つながろうとしてんじゃねえ?」とか「必死過ぎwwwww」みたいなことを書かれることがあって……。「ちげえよ! 一緒に遊びてえだけなんだよ!」って(笑)。

PUNPEEとコラボレーションした“Kids In The Park”

―ベテランならではの悩みですね(笑)。

D:30年間続けてこられたから、なにか受け継いでいけることもあると思うしさ。幸いなことに黎明期からいままで現役でずっとパイオニアとしてやってこれたし……それは当時、一緒に音楽をやっていた先輩たちに不良が多くて、活動を続けない人が多かったからでもあるんだけど(笑)、自分たちは相談相手がいなかったぶん、下に引き継いでいきたいものがあるよね。

Mummy-D

「満足」を知らない者が目指すのは、ラップで人間国宝

―Dさん自身を30年間続けさせているものは、なんなのでしょうか。

D:これはねえ、「満足いってないから」に尽きる。まだ全然甘いの。ボーカリストとしての発声がイケてない瞬間とかは、自分のレーダーが敏感に察知する。スタジオで録ったヴァースを「わ、なにコレ、だっさ」って思ってすぐ引っ込めることもある(笑)。

かといって選び抜いた言葉でヴァースを埋め尽くすと、飛躍が足らなかったり、隙がなかったりする。毎回フレッシュなものではないと世の中には出せない。だから、「俺、ちょっとだけ成長したから、次のこの曲聞いてみてよ!」みたいな気分で、ずーっと30年。もっとラップが上手くなりたいよ、ホント。

<決して魂は満足せず このゴールなき大いなる助走のプロセス>という宇多丸のリリックもあるRHYMESTER“ラストヴァース”(2010)

―これから先はどう考えていますか。

D:ここ数カ月でわかったことがあるんですよ。ちょっと不遜かもしれないけど……俺は日本語ラップにおいて人間国宝みたいになることを目指したいんだな、って。

ラップはまだ歴史が浅いから、伝統芸能で人間国宝の人が技術をストイックに磨き上げているレベルまでにはなってない。まだ破れる殻もあるし、可能性がある。武道館でライブができたとか、人によってそれぞれいろんな喜びはあるだろうけど、その先が見えているかどうかの違いはでかいから。俺はそこを目指したいんだよ……チーッス、みたいな(笑)。

―“Future Is Born”みたいなバランスですね(笑)。

D:「俺はそこをやっていくんで、チーッス!」っていう(笑)。老人になっても聴けるヒップホップの可能性だってまだこれからだろうし、俺たちがカッコイイまま現役を続けていけば、70代のジャズメンみたいになれるかもしれない。それはラッパーが一生食える職業になるということであって、これからヒップホップをやりたいと思っている若い子にもすごく夢があることだろうし。

―70代になったRHYMESTERの皆さんのステージ、楽しみです(笑)。

D:「ジャンプ! ジャンプ!」って煽りながら、すっげえ跳んでたらいいね。「うわ、打点たっけえ!」みたいになってたらカッコイイねえ(笑)。

Mummy-D

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RHYMESTER 結成30周年記念ツアー
『KING OF STAGE VOL. 14 47都道府県TOUR 2019』

2019年10月13日(日)
会場:北海道 PENNY LANE24
OPEN 16:00 START 17:00

2019年10月26日(土)
会場:福井県 福井CHOP
OPEN 16:30 START 17:00

2019年10月27日(日)
会場:滋賀県 滋賀U☆STONE
OPEN 16:30 START 17:00

2019年11月2日(土)
会場:大分県 DRUM Be-0
OPEN 16:30 START 17:00

2019年11月3日(日)
会場:長崎県 DRUM Be-7
OPEN 16:30 START 17:00

2019年11月9日(土)
会場:兵庫県 THE LIVE HOUSE CHICKEN GEORGE
OPEN 16:15 START 17:00

2019年11月10日(日)
会場:徳島県 club GRINDHOUSE
OPEN 16:30 START 17:00

2019年11月16日(土)
会場:神奈川県 CLUB CITTA'
OPEN 16:00 START 17:00

2019年11月23日(土)
会場:石川県 金沢AZ
OPEN 16:30 START 17:00

2019年11月24日(日)
会場:東京都 LIQUIDROOM
OPEN 16:00 START 17:00

2019年11月30日(土)
会場:京都府:磔磔
OPEN 16:30 START 17:00

2019年12月1日(日)
会場:大阪府 BIGCAT
OPEN 16:00 START 17:00

2019年12月7日(土)
会場:静岡県 Live House 浜松窓枠
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2019年12月8日(日)
会場:愛知県 NAGOYA ReNY limited
OPEN 16:00 START 17:00

2019年12月21日(土)
会場:福岡県 DRUM Be-1
OPEN 16:00 START 17:00

2019年12月22日(日)
会場:沖縄県 桜坂セントラル
OPEN 16:30 START 17:00

(振替公演)
2020年1月11日(土)
会場:埼玉県 HEAVEN'S ROCK
OPEN 16:30 START 17:00

プロフィール

Mummy-D(まみーでぃー)

1970年横浜市生まれ。ラッパー、プロデューサー、役者。ヒップホップ・グループ「ライムスター」のラッパー、サウンドプロデューサーであり、グループのトータルディレクションを担う司令塔。1989年、大学在学中にメンバーと出会いグループを結成。活動初期の日本にはまだ、ヒップホップ文化やラップが定着しておらず、日本語ラップの方法論、日本人がどのような内容のラップをすれば良いのかなど、試行錯誤を重ねて作曲を続け、精力的なライブ活動によって道を開き、今日に至るまでの日本のヒップホップシーンを開拓牽引してきた第一人者。最近ではライムスターでの意欲的な活動の一方でドラマ、CM、舞台など役者、ナレーター業に活躍の場をひろげて好評を得ている。中でも2017年にTBSテレビ・ドラマ『カルテット』に出演すると、登場シーンはSNS上で毎回バズを起こしていた。ライムスターは2019年に結成30年を迎えて、さまざまなセレブレートリリース、イベントが企画され、現在は47都道府県ツアーを敢行中。

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