Mummy-Dの30年ラップを続けた境地「ラップで人間国宝を目指す」

Mummy-Dの30年ラップを続けた境地「ラップで人間国宝を目指す」

インタビュー・テキスト
宮田文久
撮影:鈴木渉 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)
2019/10/11
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ヒップホップと向き合ってきた男の次なる旅は、マイミュージックの探求

―デビューした30年前の頃と、もの作りへの姿勢も変わってきましたか。

D:活動の初期は、時間があればとにかくトラックを作りたい、リリックを書きたいと思っていたよね。そうした趣味が仕事になると、いろんな課題も見えてくるし、どんどんハードルも上がっていくでしょう? それはラッパーであろうとシンガーであろうと、みんなそうだと思うよ。

Mummy-D

―たとえば刺激を受けるものも、30年の間に変化があったのでしょうか。

D:そりゃあ変わるよね。最初は仲間内で、「こんな曲作ったらどう感じてくれるかな」「あいつが作ったあの曲カッケエなあ」と考えてモチベーションにしたり、アメリカのヒップホップのトレンドを「俺もやってみてえ!」って日本語ラップに置き換えてやってみたり。

けど、いまはもうジャンルにとらわれなくなった。最近はゲームの『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』がすっげえ面白くて、やりすぎちゃってる……(笑)。その前は『龍が如く5 夢、叶えし者』や『ゼルダの伝説』。もうね、どれも脚本が素晴らしいんですよ。どんなことでも、面白いこと、あるいはそれをやっている人は気になるよね。その人がなにをやっているのか、なにをやっていないのか。

俺は日本のヒップホップを作るというより、「マイミュージック」を作るんだ、という感覚に変わってから、もう10年ぐらい経ってるかな。

Mummy-D

―ジャンルにとらわれない、自分の音楽を作る、と。

D:うん。たまたま俺はラップが得意で、ヒップホップのビートを作ることが得意だから、その影響から逃げることは絶対にできないけど、それらを使って、最新のヒップホップを作るというよりは、いまは「マイミュージック」を作るという意識だね。

―そうした広い意識でいま、刺激を受ける人はいますか。

D:これは人前で初めていうんだけど、ここ数年で一番ビックリしたのは、元ゆらゆら帝国の坂本慎太郎さん。作詞が本当に、普通とは「角度」が違うというか、力の抜け方もすごい。俺とも全然違うんだけど、「この人からなにか盗みたい!」と、すごく思わされた人です。

トラックも、ちゃんとそれぞれの楽器がいい役割を果たしているんだよね。技術的に正統な方向にクオリティーを高めるということではない、まったくベクトルの異なるクオリティーというものを感じた。ドラムひとつとっても、上手そうに叩かないんだけど、それも細心の配慮のもとでやっているんだな、って。「なにをやらないか」という話にもつながるかもしれないね。

ポップの大切さに直面。さらば「マス対コア」時代

―Dさんはなにを「やらない」ようにしていますか。

D:これは難しい質問だな……きっとあるはずだけど、自分ではよくわからない。どちらかというと30代以降は、それまで「ナシ」にしてきたものを、全部「アリ」にしてきたから。面白いものって、基本的には「やっちゃってる」ものだと俺は思っているんです。あまり人がやってないことだからこそ「やっちゃえ! やっちゃえ!」と果敢に挑戦するというか。

たとえば俺は、1990年代にアンダーグラウンド志向が強かった時期といまは違って、「ポップスってやっぱりいいよね」って思うようになった。6月にリリースしたシングル“予定は未定で。”もそうなんだけど、ポップなトラックに負けないラップができるようになったいまだからできることなんだけどね。

―なにがDさんに、「ポップっていいなあ」と思わせるようになっていったんですか。

D:まず俺たちが経験した、日本のヒップホップの黎明期からバブルまでは、ポップ対コア、ポップ対アンダーグラウンドというような対立の構造があったんだよね。

 

―当時のシーンを象徴する、ECDさんの名曲“MASS 対 CORE”もありますね。

D:まさにそれだよね。そうした態度をみんなも俺も、自分たちの強みだと思い、バネにして戦ってきた。ただその中で、「ポップであること=ダサイ」という空気も定着しちゃった。みんな、本当はポップなものがすごく好きなはずなんですよ。だせえよなって表で言ったって、実は家で聴いてる、みたいなさ(笑)。

Mummy-Dの<サグでブリンブリンまたはポップセルアウト 型にハマればトップセラー ニオうニオうぞウソくせーな>というリリックがあるRHYMESTERの“グレイゾーン”(2004年)(Apple Musicはこちら

―だんだんポップの魅力に気づき直した、と。

D:ポップでレベルが高いものは、それだけ人を惹きつける力を持っているし、そうした高度なことをやるのはすごく難しいことでもある――そのことに、いつからだろう、特にUSの音楽の流れが変わっていく中でみんな気づいて、考えが変わっていったんだよね。個人的な感覚ではあるけれど、EDMが流行ったり、ラッパーもセレブになったりとかが象徴的かな。

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イベント情報

RHYMESTER 結成30周年記念ツアー
『KING OF STAGE VOL. 14 47都道府県TOUR 2019』

2019年10月13日(日)
会場:北海道 PENNY LANE24
OPEN 16:00 START 17:00

2019年10月26日(土)
会場:福井県 福井CHOP
OPEN 16:30 START 17:00

2019年10月27日(日)
会場:滋賀県 滋賀U☆STONE
OPEN 16:30 START 17:00

2019年11月2日(土)
会場:大分県 DRUM Be-0
OPEN 16:30 START 17:00

2019年11月3日(日)
会場:長崎県 DRUM Be-7
OPEN 16:30 START 17:00

2019年11月9日(土)
会場:兵庫県 THE LIVE HOUSE CHICKEN GEORGE
OPEN 16:15 START 17:00

2019年11月10日(日)
会場:徳島県 club GRINDHOUSE
OPEN 16:30 START 17:00

2019年11月16日(土)
会場:神奈川県 CLUB CITTA'
OPEN 16:00 START 17:00

2019年11月23日(土)
会場:石川県 金沢AZ
OPEN 16:30 START 17:00

2019年11月24日(日)
会場:東京都 LIQUIDROOM
OPEN 16:00 START 17:00

2019年11月30日(土)
会場:京都府:磔磔
OPEN 16:30 START 17:00

2019年12月1日(日)
会場:大阪府 BIGCAT
OPEN 16:00 START 17:00

2019年12月7日(土)
会場:静岡県 Live House 浜松窓枠
OPEN 16:30 START 17:00

2019年12月8日(日)
会場:愛知県 NAGOYA ReNY limited
OPEN 16:00 START 17:00

2019年12月21日(土)
会場:福岡県 DRUM Be-1
OPEN 16:00 START 17:00

2019年12月22日(日)
会場:沖縄県 桜坂セントラル
OPEN 16:30 START 17:00

(振替公演)
2020年1月11日(土)
会場:埼玉県 HEAVEN'S ROCK
OPEN 16:30 START 17:00

プロフィール

Mummy-D(まみーでぃー)

1970年横浜市生まれ。ラッパー、プロデューサー、役者。ヒップホップ・グループ「ライムスター」のラッパー、サウンドプロデューサーであり、グループのトータルディレクションを担う司令塔。1989年、大学在学中にメンバーと出会いグループを結成。活動初期の日本にはまだ、ヒップホップ文化やラップが定着しておらず、日本語ラップの方法論、日本人がどのような内容のラップをすれば良いのかなど、試行錯誤を重ねて作曲を続け、精力的なライブ活動によって道を開き、今日に至るまでの日本のヒップホップシーンを開拓牽引してきた第一人者。最近ではライムスターでの意欲的な活動の一方でドラマ、CM、舞台など役者、ナレーター業に活躍の場をひろげて好評を得ている。中でも2017年にTBSテレビ・ドラマ『カルテット』に出演すると、登場シーンはSNS上で毎回バズを起こしていた。ライムスターは2019年に結成30年を迎えて、さまざまなセレブレートリリース、イベントが企画され、現在は47都道府県ツアーを敢行中。

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