Yogee New Waves角舘が綴る 夏の果て、音楽漬けの日々の中で

夏の終わりに届いた、角舘健悟の書き下ろしエッセイ

めっきり風に熱を感じなくなって、早1か月ほどが経とうとしている。初々しい初夏の夏風を洗い流すかのような、梅雨の洪水。街をさんざん雨で洗い切ったあとの目の奥を突き刺す太陽のまっすぐな光。今年の夏も天候が楽しい季節だった。それを経て、空調の壊れた車乗りたちにとって歓喜の季節がやってきた。

角舘健悟(Yogee New Waves)、愛車・VOLVO 240とともに

車乗りになった今、大好きな街・新宿への想いを綴る

僕は基本的に毎日車に乗っている。友達に会いに行くときも、メンバーとスタジオに入るときも。だいたい車に乗っているせいか、最近、新宿駅に用があって電車で向かったとき、駅の構造がいよいよわからなくなってしまった。人ってのは、生活における習慣が重要なんだということを思い知らされた日だった。

都内の高校に行っていた僕にとって、大迷宮・新宿駅は最短ルートをたくさん知っている、蟻の巣のような好きな駅だったのに。今になっては西口と東口の区別もつかないくらい難しい駅になってしまった。恥ずかしいくらいに、待ち合わせ場所を間違えてしまう。話は脱線して、新宿駅の好きなところを話す。

新宿駅は多種多様な職業の人たちがたくさん行き交う東京の交流地点のようなものである。学生やサラリーマン、観光客や水商売の人たち。渋谷駅はもう少し、エンターテインメントに寄っていて、外国人の観光客や学生たちが心をワクワクさせる街だと思っている。それに比べて新宿という街は、観光客に見せてはいけないようなドロドロとした、人が渦巻く場所が点在している街だ。僕はそのドロドロが好きで、新宿をフェイバリットな街にしているんだけれども。

昔から演劇が盛んで、ライブハウスがいくつもある街だということもあって、少し路地裏に入ればポスターやフライヤーが貼られまくっている居酒屋なんてのも存在する。新宿のゴールデン街にふらっと入っては、ビビッときた名前のバーに入って、マスターのおばちゃんと話をするのもなかなか好きだ。明治通り沿いの煌びやかな新宿のイメージから一転した、人の行き来が盛んな街だということが大いにわかる。そんな新宿という街が子供の頃から大好きだった。

Yogee New Wavesが、デビュー前にたくさんライブしていた新宿MARZというライブハウスも、今じゃメディアに取り上げられて有名になったコリアンタウンである新大久保と新宿に挟まれた、とてもムードのある場所にある。昔から人が行き来している場所というのは、新しいものには作ることのできない独特なムードを持っている。その路地裏を探検気分でうろうろするのが今でも僕は好きだ。この路地裏探検についても、いつか話ができたらと思う。

愛車を転がして出会った秋口の風。季節の変わり目にも敏感になる

話を戻そう。前回のコラムでも記述した通り、僕のVOLVO 240には空調が付いていない(Yogee New Waves角舘健悟が綴る、海への想い。ある冬の夜の話)。正確には壊れているという表現が正しいのだけれども、僕としてはもう付いていないものとして考えている。そうでなくては、日本の夏を乗り切ることはおそらくできない。

特段寒い季節でない限り、僕は窓を全開にして走る。海沿いであろうと街の中であろうと、右前の車の窓からは僕の腕がぬっと出ている。おかげで右腕だけ日焼けしてしまった。右腕と左腕の色が違うのは、なんだか収まりがつかなくて不恰好な気分だ。毎日毎日、窓を開けて車を走らせていると、季節になんだか敏感になる。秋口を見つけた日も車に乗っていた。

風の流れを腕で感じる。指先から手の甲にかけて、涼しくも香りのある風が吹き抜ける。腕を風が撫で、Tシャツをはためかせる。肩に当たった風は、車内に渦を作り永遠にぐるぐると空気を入れ換え続ける。

音楽漬けの日々に訪れる、ささやかな幸福。愛車に乗り込み、ふと思うこと

スタジオワークに区切りをつけて、メンバーと解散したのが深夜1時過ぎ。僕はボーカル録りを終えて少し疲弊していた。今すぐにベッドに飛び込んで、そのまま暗闇と夢の中に溶けたい気分だった。近くの駐車場に急いでは、いつもの動作で車に乗り込む。鍵を差し込みエンジンを捻り点けると、入れっぱなしのビル・エヴァンスの『From Left to Right』がなんとなしにかかる。このCDを入れてからかれこれ2週間は経った。どの曲が途中からかかっても、フラットなおんなじテンションで流れ続けるこのアルバムに、最近はもう居心地のよささえ感じ始めていた。

ビル・エヴァンス『From Left to Right』(1970年)を聴く(Apple Musicはこちら

住宅街を抜けて、けたたましくトラックとタクシーが疾走する山手通りに乗り出た。街はビルと工事の電光掲示板できらきらしている。タクシーたちに急かされながら、早すぎも遅すぎもしない一定のリズムで車を滑らす。このなんでもない1日の終わりを感じる瞬間に、ある種の多幸感を感じていた。この時間がなかったら、ずっと音楽のことを考えてしまうだろう。

好きなことを仕事にすると、気づかないうちに頭がそのことだけを考えてしまって、スパークしてしまうことがしばしばある。とても豊かなことだけれども、その反面、少し難しく思うことがある。そんなジレンマを毎日クリアにしてくれるのは、入れっぱなしのCDと夜を滑り込むこの時間なのかもしれない。

忙しい昼の山手通りに比べて、まだマシな気分にさせてくれる深夜の山手通り。それぞれの通りにはしっかりと色と味があって、好きな街の好きな通りができるくらいに、車というものを生活の中心に置いていることに気づいた。

リリース情報
Yogee New Waves
『to the MOON e.p.』(CD+DVD)

2019年12月4日(水)発売
価格:2,500円(税抜)
VIZL-1657

Yogee New Waves
『to the MOON e.p.』(7インチアナログ盤)

2019年12月4日(水)発売
価格:1,700円(税抜)
VIKL-30011

イベント情報
『Yogee New Waves presents“Dreamin' Night vol.6”』

2019年12月4日(水)
会場:東京都 新木場 STUDIO COAST
料金:前売4,000円(ドリンク別)

『Yogee New Waves CHINA TOUR 2019』

2019年11月21日(木)
会場:北京 疆进酒(Omni Space)

2019年11月22日(金)
会場:上海 MODERN SKY LAB

2019年11月24日(日)
会場:西安 果核劇場

2019年11月26日(火)
会場:杭州 MAO Livehouse

2019年11月27日(水)
会場:南京 稻香音樂空間

2019年11月29日(金)
会場:成都 影响城市音樂節

2019年12月1日(日)
会場:廣州 超級草莓音樂節

プロフィール
角舘健悟 (かくだて けんご)

1991年生、東京出身。2013年にバンド、Yogee New Wavesを結成し、ボーカルとして活躍。2014年4月にデビューEP『CLIMAX NIGHT e.p.』を全国流通でリリース。2018年3月にはメジャーデビューとなる3rd EP『SPRING CAVE e.p.』をリリース。2019年3月には3rdアルバム『BLUEHARLEM』をリリースし国内14公演、アジア4カ国10都市に及ぶリリースツアーを開催。また、同年12月4日には4th EP『to the MOON e.p.』のリリースを控えている。



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「幸福度が高い」と言われる北欧の国々。その文化の土台にあるのが「クラフトマンシップ」と「最先端」です。

湖や森に囲まれた、豊かな自然と共生する考え方。長い冬を楽しく過ごすための、手仕事の工夫。

かと思えば、ITをはじめとした最先端の技術開発や福祉の充実をめざした、先進的な発想。

カルチャーマガジン「Fika(フィーカ)」は、北欧からこれからの幸せな社会のヒントを見つけていきます。

スウェーデンの人々が大切にしてい「Fika」というコーヒーブレイクの時間のようにリラックスしながら、さまざまなアイデアが生まれる場所をめざします。

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