生理を憎まず生きるために 戸田真琴が綴る優しい想像力の大切さ

生理を憎まず生きるために 戸田真琴が綴る優しい想像力の大切さ

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戸田真琴
撮影、編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

自分にとって分からないものは、エロいものであるように感じる。中には生理を誤解する男性の存在も

生理の誤解についてはこういった身体的症状についての誤解のほかに、もうひとつ深刻なものがあります。それは生理がどこか「いかがわしいもの」「エロに関係しているもの」として見られてしまうという誤解です。

これは特に女性が身近でない男性に多く、生理について性教育では教わらなかった詳細の部分を、想像などで補完してしまうことによって起こるのではないかと考えています。例えば、「生理は血が出る」という情報を「初体験は血が出ることが多い」という情報と混同して「セックスをすると生理がくる」と思い込んだり、精通と生理を教科書でシンメトリーのように同時に紹介することで生理も性欲に強く影響されるものだと思い込んだり、といった誤解が挙げられます。また、「生理が女性特有のもの」ということで、どことなくエロティックな気持ちを抱く人もいるかもしれません。

もちろんそういう性癖の人がいてもいいと思いますし、女性側にもその気持ちを理解できる人もいるとは思いますが、女性にとっての生理はもっと、どちらかというと毎月決まった時期に来る風邪とか、変な話でいうと排泄にも近い、生命活動の一環であるような感覚が強いように思うのです。

戸田真琴

AV女優をしていて気付かされたエロの法則のひとつに、「分からない=エロい」というのがあると思っています。女性の身体って神秘的だなあ、という感情や、分かりやすいところでいうと、普通の言葉でも途中途中を伏字にしてみるといかがわしいものに見えてくるように、なんだかよく分からないもの、というのは仕組みを分かりきっているものよりも興味を惹かれ、エロく見えてしまったりするのです。

生理をエロと一緒くたにする人には、ただ単純に「細部の理解」が足りていないのだと思います。そして、あっけらかんと理解し合うことがいつかできたら、生理をここまで恥ずかしいものと捉えなければならない世の中も少しは変わって来るのかもしれないと思います。

生理の重さもそれに対する感情も、人それぞれ。だから、向き合い方も人それぞれでいい

男性にも生理を理解して、できれば支えてほしいと願う気持ちがある一方で、やはり植えつけられた恥ずかしさは拭きれず、なるべくそっとしておいてほしいと思うときも、もちろんあります。辛さを分かっていてほしいけれど、過剰に気を使われたり腫れ物を触るように扱われるのも、いたたまれない気持ちになる。そんな一見わがままな気持ちが、生理を取り巻くリアルな感情だったりもします。

生理の重さもそれに対する感情も人それぞれなのだから、向き合い方も人それぞれでいい、というのが、この過渡期の中、ひとまずの結論なのだと思います。

カジュアルに生理について意見交換することを求める人、SNSなど匿名の場でのみ話せるという人、女子同士なら話そうと思う人、誰にも生理の話をしないで自分で解決しようと望む人、生理用品や生理中の過ごし方を好みの形にしようと模索する人、産婦人科医と相談して痛みや負担を和らげる方法を探す人、アロマやヨガなど精神的に安らげるようアプローチする人、痛み止めを飲んで我慢をしてもバリバリと働くことを選ぶ人……。

男性側も、なるべく深く理解したいと願う人、困ったときに支える人、不快にさせないためにわざと関わらないようにする人……自分にとって気持ちのいい「生理」との距離感を探って、そしてどのように生理に向き合う人に対しても、頭ごなしに否定することなくそれぞれの向き合い方を尊重し合えたらいいのではないかと思います。

戸田真琴

余談ですが、私の理想としてはどんな職種や学校においても、生理休暇が当たり前にあって、周りの人たちや決定権を持つ大人もそれに対する理解が自然になされている社会になってほしいと思っています。ある種理不尽にやってくる苦痛を伴う生理的現象、それを憎まず快く付き合っていくには、生理のせいでなにかを諦めたり誰かに疎まれたりすることがなく、理解して助け合える社会になることがとても大切なのではないかと思うからです。

すぐに制度は変わらないので、まずはこれを読んでくれたあなたから、「生理を憎まずにいられる世界」を作るお手伝いをしてほしいと願っています。ずっと付き合っていくものだから、「恥ずかしい」とか「つらい」を超えて受け入れて生きていきたいですものね。生理がない人も、自分の身体や心を憎まずに受け入れていきていくことを想像するように、たまに考えてみてくれたら嬉しいです。

戸田真琴
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プロフィール

戸田真琴(とだ まこと)

2016年にSODクリエイトからデビュー。その後、趣味の映画鑑賞をベースにコラム等を執筆、現在はTV Bros.で『肯定のフィロソフィー』を連載中。ミスiD2018、スカパーアダルト放送大賞2019女優賞を受賞。愛称はまこりん。

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