元問題児の小国士朗がNHKで学んだ、熱量を公共に生かすアイデア術

元問題児の小国士朗がNHKで学んだ、熱量を公共に生かすアイデア術

インタビュー・テキスト
唐川靖弘
撮影:升谷玲子 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

みんなで笑いながら革命を。NHK退職後のうろうろアリが目指す社会

小国さんはこれからも、そうした「出会い方のデザイン」を意識していきたいと思っている。

世の中には、認知症やがん、LGBTQなどいろんな課題があるけれど、北風と太陽にたとえていうなら、テレビって北風みたいな描き方が多かったりする。認知症は大変だぞ~ってネガティブな部分にフォーカスしてしまいがちだったり、しっかり真面目に啓発を繰り返している。それは自分を振り返ってもそう思う。もちろんそれも大事なことだけれど、暗い話や怖い話だけだとやっぱりみんな疲れてしまう。関心や支援も続かなくなります。

だから、僕は太陽のようにやりたい。みんなが社会課題に抱く印象を楽しいものに変えて、身構えたりすることなく、より多くの人が参加できる場を作りたいんですよ。

小国士朗

小国さんが目指すのは、みんなで笑いながら革命を起こそうと語りかける存在だという。時代の流行り廃りに左右されるのではなく、たとえば自分の子どもが15年後でも「パパが作ったもの、面白いね」といってくれるようなアイデアを世に送りたい。「公共性」をなによりも重んじるNHKで磨き続けたのは、「なぜいま、その問題を取り扱わなければならないのか」という普遍の水脈を見つけ出す「見立て力」。それを時代のフィルターを通して表現することによって、普遍と時代性を併せ持つ、強いクリエイティブアイデアを生み続けたいのだと語ってくれた。

独立して、「小国士朗事務所」という自分の名前を冠した会社名としたのも、役職などの肩書で自分の動きを規定するのではなく、ただ「小国士朗」として生き続けたい、勝負し続けたいという自分への宣言だそうだ。思ったこと、やりたいことに対して、もう寸止めする必要はない。「毎年1つくらいは大ホームランを打ち続けて、自分の名刺の実績をアップデートし続けたいですね。『プロフェッショナル』のアプリや『注文をまちがえる料理店』をやった小国さんですよね、といつまでもいわれないように」と語る。

最後に、LEGOブロックを使って、小国さんがこれからどんな存在でいたいのか、を表現してもらった。うーん、と一瞬考えた後、パッパッと頭の中に浮かんだ映像を形にしてくれた。自身は真ん中にいて、手を挙げているように見える赤い服のキャラクター、その周りを様々なキャラクターが囲んでいる。小国さんが表現したのは「この指とまれ」をしている自分。どこにも属さない素人の自分が、「みんなで見てみたいと思う風景」を語りながら、「この指とまれ」と呼びかけ、みんなを集めて壮大な遊びを起こし続けたいのだそうだ。

小国さんが作ったレゴの世界
小国さんが作ったレゴの世界

そんな小国さんを見守り続けているのが、10歳の土曜日に手にしたクラスメートからの手紙。自分を律するお守りとして人生の節目で何度も読み返し、いまも大切に保管している。小国さんの謙虚さを支え、多くの人との出会いに導いている。

僕は思った。小国さんの中にいるのはモンスターなんかじゃない。ジャイアンでも出木杉くんでもない。世の中の夢をかたちにして人を熱狂の渦に巻き込み、楽しさや明るさを与える存在……そう、クレイジーなドラえもんじゃないか。なんて勝手にいったら本人には叱られるかもしれないが。

左から、「この指とまれ」ポーズの小国士朗さんと、唐川靖弘
左から、「この指とまれ」ポーズの小国士朗さんと、唐川靖弘

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連載『イノベーションを生む「うろうろアリ」の働き方』

変化のスピード増す現代において、既存の価値観や会社という枠組みに囚われないない「うろうろアリ」こそがイノベーションをリードする。自由な発想で新たな価値を生み出し続ける彼らの、最先端の働き方を紹介するインタビュー連載です。

プロフィール

小国士朗(おぐに しろう)

株式会社小国士朗事務所 代表取締役・プロデューサー。2003年NHKに入局。ドキュメンタリー番組を制作するかたわら、200万ダウンロードを記録したスマホアプリ「プロフェッショナル 私の流儀」や世界1億再生を突破した動画を含む、SNS向けの動画配信サービス「NHK1.5チャンネル」の編集長の他、個人的プロジェクトとして、世界150か国に配信された、認知症の人がホールスタッフをつとめる「注文をまちがえる料理店」などをてがける。2018年6月をもってNHKを退局、フリーランスのプロデューサーとして活動。

唐川靖弘(からかわ やすひろ)

1975年広島県生まれ。外資系企業のコンサルタント、戦略プランニングディレクターを経て、2012年から米国コーネル大学ジョンソン経営大学院Center for Sustainable Global Enterpriseマネージングディレクターとして、多国籍企業による新規ビジネス開発プロジェクトや新市場開拓プロジェクトをリード。自身のイノベーションファームEdgeBridge LLCを拠点に、企業の戦略顧問や組織・人材育成プログラムディレクター、大学の客員講師としても活動。フランスの経営大学院INSEADにおいて臨床組織心理学を研究中。

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