戸田真琴が肯定する「性」の自由 幸せなセックスのための考え方

戸田真琴が肯定する「性」の自由 幸せなセックスのための考え方

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戸田真琴
撮影、編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

女の子がエロいことを考えるのは、おかしいこと?

さて、もう一度自己紹介しますが、私は現役のAV女優です。初めてのAV出演を決めたときは、まだ性行為の経験がないいわゆる「処女」でした。私の家はなんというか少し変わった古風な価値観を持っていて、私は母に、過剰に男性を恐れるように、ましてやデートや交際などはしないようにと教えられていました。もともとロマンチストだったことも相まって、「結婚して子供を作りたいと思うような人としか絶対セックスはしないし、それ以前のお付き合いとかもしない!」という誓いを掲げて青春時代を過ごすことになりました。

戸田真琴

色々あって、自分を潔癖に保つことよりも今の自分を壊して新しい自分になることのほうが優先だと思うようになったとき、思い切ってAVに出てしまおうと決めたわけですが、そういった生い立ちのなかで、一つ大きな疑問が残っているのです。今回はそのことについて少し、考えていきたいと思っています。

それは、「女の子がエロいことを考えるのって、おかしいの?」という疑問です。AVデビューしてから今まで何度も尋ねられてきた質問に、「処女を喪失して変わったことは?」というものや「どうしてAVで処女を捨てたの?」といったものが多くありました。初めはその言い回しをなんの疑問もなく受け入れていたのですが、同じくAVのなかで男性が初体験を終えることは「童貞卒業」というおめでたい言葉で表現されることが多いのに対して、処女でなくなることは「喪失」「捨てた」とまるでなにかを失ったようなネガティヴな言い回しをされるということに、だんだんと疑問を抱くようになりました。

私自身、世間一般の性的価値観のなかに「経験のない女性が好ましい」という類のものがあったからこそ、AVデビューする際に大事に扱ってもらえたり、注目してもらえたりしたという自覚があるので、そういった価値観に救われた側面も少なからずあります。でも、そもそもどうして女性は経験が少ない方が好ましく、男性は経験が多いことが立派だとされる風潮があるのか、納得しきれていないところもあります。

戸田真琴

お母さんも学校の先生も、子供時代に目にする大人はみんな性について話すことや知ることをよくないこととしていました。思春期を迎えると、クラスの男の子はエロについて好奇心のままに話し合い始めるのに対し、女の子たちの間では少なくともエロに関することは話題にされないか、ごく内緒話のうちで交わされていたのだと思います。

いざエロについてオープンに話してみたい、と思っても、「下ネタOK」な女の子は自身も性欲が強くて誰でもウェルカム、という偏ったイメージで誤解されることもしばしば、まるであの日の教室でエッチな雑誌を回し読みしていた男子のように思うままに話をすることは、なかなか叶いません。

女性向けのAVも製作されるほどには、だんだんと女性の性欲が明るみになることについても寛容になってきた社会だとも思いますが、それらの内容は感情に重きを置いたソフトな表現が多く、男性向けのAVにあるような「どんなどぎつい性癖でもカバーします!」という頼もしい空気感を獲得するには、きっともう少し時間がかかるのだろうな、と思わざるを得ません。女の子が積極的にエロについて口にできることは、やはり「女性は性経験がなるべく少ないほうが好ましい」とされるこの社会では、困難なことなのでしょうか。

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プロフィール

戸田真琴(とだ まこと)

2016年にSODクリエイトからデビュー。その後、趣味の映画鑑賞をベースにコラム等を執筆、現在はTV Bros.で『肯定のフィロソフィー』を連載中。ミスiD2018、スカパーアダルト放送大賞2019女優賞を受賞。愛称はまこりん。

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