北欧を代表する5人のイケメン俳優、おすすめの出演作を紹介

「イケメンを観る」という映画の楽しみ

北欧映画の魅力を紹介し、2011年からこれまでに100本ほどの作品を上映してきた『トーキョーノーザンライツフェスティバル』(以下、『TNLF』)がおすすめの北欧映画を紹介するこの連載。第4回目となる今回は、「北欧のイケメンが出演する映画」をテーマにお届けします。

私が初めてスウェーデンを訪れたときの第一印象は「美男美女が多い国」というもの。流石はハリウッドのサイレント映画期を代表するスター、グレタ・ガルボを生んだ国! と感動しました。ミーハーに思われるかもしれませんが、美しい俳優を目当てで作品を探すというのも、れっきとした映画を観る楽しみのひとつです。今回は5人のイケメン俳優とともに、彼らが出演するおすすめの北欧映画を紹介します。

美しい兄弟愛を描いたハートフルコメディ『シンプル・シモン』 / ビル・スカルスガルド

©2010 Naive AB, Sonet Film AB, Scenkonst Vasternorrland AB, Dagsljus AB, Ljud & Bildmedia AB, All Rights Reserved
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スウェーデンのイケメン俳優といえば、まず紹介したいのがスカルスガルド家。『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』(2006年)、『マンマ・ミーア!』(2009年)、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015年)など数々のヒット作に出演する名優ステラン・スカルスガルドをはじめ、その息子3人がイケメン俳優というサラブレッドの家系です。

スティーヴン・キング原作の最恐ホラー小説を映画化した『IT / イット “それ”が見えたら、終わり』(2017)で殺人ピエロ・ペニーワイズを演じ注目を集めたのが、ビル・スカルスガルド(Bill Skarsgård)。スカルスガルド家の四男です。

ストックホルム出身の彼は2011年にスウェーデンの映画賞『ゴールデン・ビートル』においてアンドレアス・エーマン監督『シンプル・シモン』(2010)で主演男優賞にノミネートされ注目を集めました。翌年2012年には『第62回ベルリン国際映画祭』で、ヨーロッパの期待の若手俳優に贈られる「シューティング・スター賞」を受賞。

『シンプル・シモン』でビルはドラム缶に閉じこもり、想像上の宇宙と交信するアスペルガー症候群の主人公、シモンを演じています。『シンプル・シモン』の原題タイトル『I rymden finns inga känslor』は「宇宙には感情がない」という意味。人間の感情のように浮き沈みがなく規則的な宇宙をこよなく愛すシモンですが、その良き理解者であるお兄ちゃんのサムが失恋する様子を見て、兄のために完璧な恋人探しをはじめます。ポップな音楽、洗練された北欧インテリアも見所のラブコメディで、大切な人と観るのにぴったりの作品です。

シモンの兄、サム役のマッティン・ヴァルストレムもまた、スウェーデン生まれのイケメン。出演作こそ多くはありませんが、アンドレアス・エーマン監督の最新作『Remake』(2014)で主演を務めるなど、今後要注目の俳優です。

名匠トリアーによる美しき絶望の世界。『メランコリア』 / アレクサンダー・スカルスガルド

続いて紹介するのはスカルスガルド家の長男、アレクサンダー・スカルスガルド。デヴィッド・イェーツ監督の『ターザン:REBORN』(2016)で主役を務めているのでご存知の方も多いのではないでしょうか?

おすすめの出演作はラース・フォン・トリアー監督作品『メランコリア』(2012)です。ヒロインであるジャスティンの新郎マイケル役をつとめ、父ステランと親子共演を果たしています。本作はまるで破滅を賛美するかのような表現によって、観る者を陰鬱な世界へと引き込むSF映画。鬱病を患った経験のある監督がその経験をもとに誰ひとりとして救われない状況に陥っていく様子を、古い絵画のような映像で描いています。バックの効果音にリヒャルト・ワーグナーの“トリスタンとイゾルデ”のみが流れるという演出がメランコリックな気分をさらに増長させます。

アレクサンダーは「カルバン・クライン」のメンズ香水のイメージモデルにも選ばれる程のクールなイケメンですが、本作で見せるのは絶望の淵に立たされた男の顔。鬼気迫った彼の名演をお見逃しなく。

高校の演劇部を舞台に「大人の成長」を描く『キス・ミー!』 / クリストッフェル・ヨーネル

『キス・ミー!』

ノルウェー映画には欠かせないイケメン個性派俳優、クリストッフェル・ヨーネル。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの『レヴェナント:蘇えりし者』(2015年)など話題作にも多く出演する彼ですが、なかでも心にのこる1作としてご紹介させて頂きたいのが『キス・ミー!』(2011)です。

この映画の面白いところは、学校を舞台にしたラブコメディでありながらも単なる青春恋愛映画にとどまらないところ。高校生と、自分の道を決められない大人、それぞれが成長しながら前に進んで行く様子を緻密な演出によって描いています。ヨーネルは俳優としての成功を収めながらも、人生に疲れ、都会から田舎町にやってきた演劇部のコーチを演じ、この作品にぐっと深みを与えています。

残念ながら日本ではDVD未発売の本作ですが、ポール・シュレットアウネ監督の『隣人 ネクストドア』(2005年)『チャイルドコール 呼声』(2013年)などでもヨーネルの名演は観られます。また、2018年2月10日から16日にわたって行われる『トーキョーノーザンライツフェスティバル2018』ではノルウェーの気鋭、アーリル・アンドレーセン監督の『オルハイム・カンパニー』(2012)『愛せない息子』(2017)など、ヨーネルの出演作を上映予定です。

18世紀に実在した情緒不安定な王の物語『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』 / ミケル・ボー・フォルスゴー

©2012 Zentropa Entertainments28 ApS, Zentropa International Sweden and Sirena Film Prague
©2012 Zentropa Entertainments28 ApS, Zentropa International Sweden and Sirena Film Prague

デンマーク出身のイケメン俳優ミケル・ボー・フォルスゴーは、映画デビュー作となったニコライ・アーセル監督の『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(2012年)で、『第62回ベルリン国際映画祭』の男優賞を獲得した俳優。同作は「第85回アカデミー賞外国語映画賞」ではデンマーク代表に、「第70回ゴールデングローブ賞外国語映画賞」に共にノミネートされています。

この映画の題材となったのは、デンマークでは王室史上最大のスキャンダルとして知られる18世紀後半の実話です。貴族が圧政を敷いていた1766年、英国王太子の娘カロリーネは、デンマーク王、クリスチャン7世のもとに嫁いできましたが、精神不安定な王に愛情どころか失望を感じていきます。そんな精神不安定な王の待医として採用されたのがドイツ人のストルーエンセ。カロリーネ王妃は、王ではなく次第にストルーエンセを愛していくことに……。

クリスチャン7世を演じるミケル・ボー・フォルスゴーは、無礼な振る舞いのなかにもどこか寂しさを宿らせた表情で、不安定な王の姿を見事に演じます。大きな権力を有する者達は誰しもが恐怖と寂しさのなかにいることを、深く語りかけてきます。

デンマーク映画のブラックユーモアを楽しむ。『アダムズ・アップル』 / マッツ・ミケルセン

デンマーク・コペンハーゲン出身のマッツ・ミケルセンが演じている映画は沢山ありますが、ぜひ観ていただきたいのがアナス・トマス・イェンセン監督の『アダムズ・アップル』(2005年)です。

舞台は仮釈放受刑者の更正プログラムを行っている、田舎の教会。マッツはそんな教会に仕える牧師、イヴァンを演じています。イヴァン牧師がある日、教会に送られてきたネオナチのならず者アダムに「なにか目標を持つように」と話すと、彼はイヴァンをからかうように「ケーキでも焼くさ」と答える。その言葉を真に受けたイヴァン牧師はアップルパイ作りを続けるようアダムに言い渡す。冗談にならなくなってしまった強面のアダムが、真剣にアップルパイを焼く姿は見ものです。

物語はデンマーク映画らしいブラックジョークを交えながら進行していきます。イヴァンは銃で顔面を撃ち抜かれたり、脳内大量出血を起こしたりと散々な目に遭いますが、まるでアメリカンコミックのヒーローのように決して死ぬことはありません。毒気とユーモアに溢れた設定の、一見するとはちゃめちゃな映画ですが、マッツの持つ風変わりな存在感が作品全体に説得力を与えています。不死身のイケメン、マッツの姿を是非ご覧になってみてください。

また、『トーキョーノーザンライツフェスティバル2018』では、オーレ・クリスチャン・マセン監督の『プラハ』(2006)を上映します。マッツ・ミケルセンが主演を務める日本未公開作品ですので、マッツファンの方はこちらもぜひご覧ください。

イベント情報
『トーキョーノーザンライツフェスティバル2018』

2018年2月10日(土)~2月16日(金)
会場:東京都 渋谷 ユーロスペース、UPLINK FACTORYほか
上映作品:
『トム・オブ・フィンランド』(監督:ドメ・カルコスキ)
『グッド・ハート』(監督:ダーグル・カウリ)
『オルハイム・カンパニー』(監督:アーリル・アンドレーセン)
『愛せない息子』(監督:アーリル・アンドレーセン)
『プラハ』(監督:オーレ・クリスチャン・マセン)
ほか

リリース情報
『シンプル シモン』(DVD)

2015年3月4日(水)発売
発売元:アップリンク/フリッカポイカ
販売元:TCエンタテインメント
価格:4,104円(税込)

リリース情報
『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(DVD)

2013年10月2日(水)発売
発売元:ニューセレクト
販売元:アルバトロス
価格:4,104円(税込)



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「幸福度が高い」と言われる北欧の国々。その文化の土台にあるのが「クラフトマンシップ」と「最先端」です。

湖や森に囲まれた、豊かな自然と共生する考え方。長い冬を楽しく過ごすための、手仕事の工夫。

かと思えば、ITをはじめとした最先端の技術開発や福祉の充実をめざした、先進的な発想。

カルチャーマガジン「Fika(フィーカ)」は、北欧からこれからの幸せな社会のヒントを見つけていきます。

スウェーデンの人々が大切にしている「Fika」というコーヒーブレイクの時間のようにリラックスしながら、さまざまなアイデアが生まれる場所をめざします。

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