Salyu×原田郁子はサウナ友達 いい歌の為に機嫌のいい時間を作る

クリエイティブな仕事をする人からサラリーマン、学生まで、巷では「最近サウナにはまっている」という人が増えてきている。サウナにはまったきっかけはたとえば女性だったら美容のためだったり、肩こりや冷え性改善といった健康増進が目的だったり、はたまたサウナの中で瞑想をしたりして自分と向き合うためだったり、と人それぞれ。

では、ミュージシャンとして表現する側の人たちはどのような目的でサウナに行くのだろうか? クリエイティブなアイデアを求めて? それとも癒しとして?

今回お話を伺ったのは、クラムボンのメンバー原田郁子さんと、シンガーソングライターのSalyuさん。2人ともサウナが好きで一緒に行くこともあるほど仲のよい友人同士。2人の音楽にとってサウナはどんな役割を果たしているのか、サウナとの関係性について聞いた。

サウナは、「自分へのご褒美」っていう感じです。(Salyu)

—まずはじめに2人のサウナとの出会いからお聞きしたいのですが、いつ頃どのようなきっかけでサウナに行く習慣ができたのでしょう?

Salyu:私は8年くらい前かな。友人からサウナという文化を教えてもらいました。その頃、季節の変わり目やストレスを感じたときに出てくる肌荒れやアトピーの症状に悩まされていたのですが、その友人から「サウナに行けば代謝がよくなるし、デトックスやリフレッシュにもなるよ」と言われてタナカカツキさんの『サ道』(2011年 / パルコ出版)を貸してもらったんですね。読んでみたらはんなりした雰囲気でとても楽しんで読めて「やってみようかな」と思えたのがきっかけです。

原田:私は2000年頃、クラムボンが八ヶ岳・小淵沢のスタジオに曲作りやレコーディングをしに行くようになったのですが、毎日近くの温泉に行くとどこも必ずサウナがあって。信州の冬は本当に寒くてお風呂に浸かっただけだと温まりきれないから自然とサウナに入りはじめました。

そのあと、タナカカツキさんや伊藤ガビンさんと一緒にお仕事をさせていただく機会があって。ガビンさんから「カツキさんが新しい本を作ったんだけど、郁子ちゃん、好きだと思うよ」と教えてもらったのが、さっきSalyuも言っていた『サ道』でした。

Salyu:みんな必ず『サ道』を通る(笑)。バイブルですね。

原田:目から鱗だよね。これまで誰も言語化しなかったサウナ感が、ユーモラスに綴られていて、私も衝撃を受けました。

左から:Salyu、原田郁子

原田:そうそう! Salyuと初めて一緒にサウナに行ったとき、「誕生日プレゼントに」って入り口でサウナのチケットをくれたんだよね(笑)。

Salyu:そう(笑)。それがちょうど8年くらい前で、私がサウナを試みはじめたばかりの頃。「サウナって気持ちいいし楽しい!」って体感していろんな人に教えたくなって、郁ちゃんの誕生月にはりきって「今日サウナ行かない?」って誘ったんだよね(笑)。

原田:なんて粋なことをする人だろうって、うれしかったです。

—普段どんなときにサウナに行かれますか?

Salyu:なんの約束も入ってなくて自分のためだけに使える時間がある日に行きます。そんなときは大きめのスパ施設に行ってゆっくりして、アカスリまでしてもらってマインドのケアをしますね。「自分へのご褒美」っていう感じです。

原田:私もSalyuみたいに小さい頃からアトピーがあって、汗をかくとかゆくなったりするので普段はあまり汗をかかないようにしているのですが、たまに「思いきり汗をかきたい!」っていうときがあって。あとは、パソコン作業が続いてバキバキのとき、風邪を引きそうなときにも行きます。サウナに行くと調子がよくなる感じがするんです。

Salyu:わかる! そういうときにサウナに行くと治る感じはあるよね。私はいまはもうほとんどアトピーはなくなったんですけど、たまに「あれ? 出てきそうかも」っていうときにサウナに行って早めに処方する、みたいな感じで。

—では身体のメンテナンスという目的が大きいのですね。

Salyu:ほとんどそうですね。

原田:前に1度、EGO-WRAPPIN'のよっちゃん(中納良恵)と3人でサウナに行ったことがあったね。Salyuオススメのサウナに行ってゆっくりして、そのあと飲みに行って、「身体のメンテナンスをしよう」っていうような1日。楽しかったね!

頭空っぽにしたいから、ただひたすらぼんやりと、何も考えないのがいい。(原田)

—サウナの入り方のこだわりとか、ご自身のサウナ作法のようなものってありますか?

原田:基本的にそれぞれのペースとか入り方があるから、3人で行ったときもみんなバラバラで、黙々と(笑)。

Salyu:単独行動だよね(笑)。

原田:そのときわかったんだけど、Salyuは水風呂に入っている時間が信じられないくらい長かった(笑)。

Salyu:そう、私は水風呂に5分くらいは入ってる(笑)。なんかすぐに出ちゃうと掴みきれないというか、水の音を聞きながら次の段階がやってくるのを待っているという感じ。そうしていると身体のバイオリズムがすごくゆっくりに感じられるんです。日頃なかなか味わうことのできないバイオリズムに向きあうのが楽しくて。

原田:ふふふ。

—そうして向き合う中で、クリエイティブなアイデアが湧いてくるということはあるものなんですか?

Salyu:実は全然ないですね。

原田:私もないですね。クラムボンの合宿のときも、サウナの中でふと、さっきまでやっていた作業のこととか曲のこととか考えそうになるんですけど、「いかんいかん!」って。

原田が持参した、クラムボンのツアーグッズで作った手ぬぐい

—じゃあ敢えて考えないようにしているんですね。

原田:そうですね。頭空っぽにしたいから、ただひたすらぼんやりと、なにも考えないのがいいですね。

Salyu:インナートリップだよね。言葉を発想したりするのって外とのコミュニケーションということだと思うんだけど、それよりもっと手前の自分の身体の内側、たとえば心拍数とかに気が向くよね。

原田:ただプクプクと出ては消える水の泡を見ているとかね(笑)。

Salyu:うっとりしながらね(笑)。それが楽しい。

好きなことにハマったり探求したりする時間は、「癒やし」にもつながっている。(原田)

—サウナのどんなところが魅力だと思いますか?

Salyu:私はサウナのあとに必ず水風呂に入るのですが、あたたかいのと冷たいのを繰り返すことによって、緊張と脱力の幅が広がってリラックスすることができるというところですかね。それによってリセットされる感じはあります。

あとは覚醒して敏感になっているからだと思うのですが、さっきまであまり気にしていなかった水風呂に注がれている水の音がクリアに聞こえたりとか、五感が研ぎ澄まされるところ。

Salyu(さりゅう)
1980年生まれ、神奈川県出身。岩井俊二の映画『リリイ・シュシュのすべて』でデビュー。作中に登場する架空のシンガーソングライター「Lily Chou-Chou」としての活動を行う。ヒップホップMCである「ILMARI」とのコラボレーションなどを経て、2004年にはソロデビューを果たす。2011年7月13日に両A面シングル「青空/magic」をリリース。さらに8月10日、作曲・小山田圭吾、作詞・坂本慎太郎(ex.ゆらゆら国)が手掛けた
“INFOBAR A01”のCMイメージソングとしての書き下ろし曲「話したいあなたと」をsalyu×salyuの新曲として配信限定でリリース。

原田:うん。感度が変わる感じはあるね。サウナって密室に知らない人同士が裸でじっとしてて、よく考えたら不思議な空間ですよね(笑)。ツアー先でもサウナに行くことが多いのですが、地元の人たちが方言でしゃべっていたり、お金とか病気とか愚痴とか「こんなこと聞いていいのかな?」っていうような話を聞いてしまったりすると、この状況面白いなあって(笑)。普段の生活では出会うことがないだろう人と裸同士で居合わせるっていうのも、サウナとかお風呂ならではですよね。

あとSalyuが言っていたみたいに、「めちゃくちゃ熱い」と「めちゃくちゃ冷たい」を交互に繰り返すと、針が振り切れる感覚というか……荒治療じゃないですけど、溜まってたものがぬけていって、スッキリするんですよね。

原田郁子(はらだ いくこ)
1975年、福岡生まれ。1995年にスリーピースバンド「クラムボン」を結成。歌と鍵盤を担当。バンド活動と並行して、ソロ活動も精力的に行っており、これまでに4枚のソロアルバムを発表。2010年には、吉祥寺の多目的スペース&カフェ『キチム』の立ち上げに携わる。近年は、クラムボンが自身のレーベル「トロピカル」より3枚のミニアルバムを発表し、独自の販売方法を試み、ジャンル問わずの約300店舗にまで広がりを見せている。

—「サウナでリセットする」とおっしゃっていましたが、そもそもなぜリセットすることが必要なのでしょうか?

原田:なにか動物的なものかな、という感じはあります。職種は違えど、働くっていうことは、ものすごい緊張感だったり、プレッシャーだったり、人間関係においてもストレスが多いと思うんです。

たとえば、競馬の馬はレースを走り切ってもしばらく興奮状態が続いて、落ち着いてくるのに少し時間がかかるということを聞いたことがあります。自分も思い当たるんですけど、そういった「戦闘モード」というか、交感神経が研ぎ澄まされている状態があるとしたら、動物的にその反対がちゃんとないとバランスが取れなくなってくる。

人によってはスポーツだったりサウナだったり音楽だったりゲームだったりアニメだったり。好きなものに没頭できるって、ほんとに尊いなあ、って思うんですよね。いろんなことを忘れるくらい好きなことにハマったり探求したりする時間は、自分内治癒というか、「癒し」にもつながっているんじゃないかな。

なにがボーカリストとして歌うことの栄養になっているかと言えば、「機嫌のいい時間」だと思うんですよね。

—プレーヤーであると同時に、1人のリスナーでもある2人にとって、音楽と接する時間は「緊張感のある戦闘モード」の時間ですか? それとも好きなことに没頭するという意味での癒しなのでしょうか?

Salyu:それは両方ですね。リラックスしてくつろいだ状態で音楽を聴いたとしてもやっぱり自分なりに「その音楽になにがあるのか」というディテールを感じ取ろうとすることはあります。

表現するときも聴くときも「共感すること」に一番癒されますね。人に共感することで救われるし、それが喜びだと思います。

原田:ライブのときって、どうしても「間違っちゃうんじゃないか」と不安になったり恐怖を感じることもあって追い込まれていくんです。でも、それと同時に音楽の中でこそ解放されたり自由な感覚になったりすることもあるんですよね。

私はその解放感というのが音楽のすごいところだな、と思っていて。そこにちょっとでも近づいていきたいと思っています。そしていいライブ、いいパフォーマンスをするためにも、身体をちゃんとケアしなくちゃいけない。気持ちとか気合いだけでいける年齢でもないですから(笑)。ひとりだとついそこを忘れがちになっちゃうんですけど、Salyuに会うとそのことを思い出しますね。

—音楽を表現するには身体のケアっていうのも大事なんですね。

原田:Salyuは特にボーカリストとして身体ひとつでステージに立っているから、身体が楽器だよね。私もガクッとしんどくなったり波があるけれど、身体と心の状態って密接だな、と思います。

Salyu:「健康」って言うと「なんか色気がないなー」って思っちゃうんですけど、なにがボーカリストとして歌うことの栄養になっているかと言ったら、私は「機嫌のいい時間」っていうのが大事だと思うんですよね。さっき郁ちゃんが言っていた「好きなことに向かう時間」っていうのは、私にとっては心地よくて安心できてひとりになれるという意味でもサウナなんですね。

原田:うん。ボケーッとひとりで浸っていられる時間って、必要だね。

Salyu:でもネガティブな意味での「ひとりぼっち」っていうんじゃなくて、自分の身体の中にこんな世界があったんだ! っていう新しい世界との出会いがあるよね。そういう自分の内側、感性や感覚を改めて見つめる時間っていうものに、栄養をもらっていますね。

プロフィール
Salyu (さりゅう)

1980年生まれ、神奈川県出身。岩井俊二の映画『リリイ・シュシュのすべて』でデビュー。作中に登場する架空のシンガーソングライター「Lily Chou-Chou」としての活動を行う。ヒップホップMCである「ILMARI」とのコラボレーションなどを経て、2004年にはソロデビューを果たす。2011年7月13日に両A面シングル「青空/magic」をリリース。さらに8月10日、作曲・小山田圭吾、作詞・坂本慎太郎(ex.ゆらゆら国)が手掛けた
“INFOBAR A01”のCMイメージソングとしての書き下ろし曲「話したいあなたと」をsalyu×salyuの新曲として配信限定でリリース。

原田郁子 (はらだ いくこ)

1975年、福岡生まれ。1995年にスリーピースバンド「クラムボン」を結成。歌と鍵盤を担当。バンド活動と並行して、ソロ活動も精力的に行っており、これまでに4枚のソロアルバムを発表。2010年には、吉祥寺の多目的スペース&カフェ『キチム』の立ち上げに携わる。近年は、クラムボンが自身のレーベル「トロピカル」より3枚のミニアルバムを発表し、独自の販売方法を試み、ジャンル問わずの約300店舗にまで広がりを見せている。



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「幸福度が高い」と言われる北欧の国々。その文化の土台にあるのが「クラフトマンシップ」と「最先端」です。

湖や森に囲まれた、豊かな自然と共生する考え方。長い冬を楽しく過ごすための、手仕事の工夫。

かと思えば、ITをはじめとした最先端の技術開発や福祉の充実をめざした、先進的な発想。

カルチャーマガジン「Fika(フィーカ)」は、北欧からこれからの幸せな社会のヒントを見つけていきます。

スウェーデンの人々が大切にしてい「Fika」というコーヒーブレイクの時間のようにリラックスしながら、さまざまなアイデアが生まれる場所をめざします。

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