『TOKION』創刊者ルーカス・B.B.。ムダが雑誌を伝説にした

『TOKION』創刊者ルーカス・B.B.。ムダが雑誌を伝説にした

インタビュー・テキスト
唐川靖弘
撮影:升谷玲子 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

一見ムダなことでもチャレンジをやめないクリエイターの現在の関心事

ルーカスさんが新しいアイデアを考える際に意識していることが、2つある。1つは、世の中に必要なもの。もう1つは、イメージが固まっていないもの。その2つが合わさったアイデアを作るためなら、どんなに手がかかろうと、一見ムダに見えようとも、彼は新しいことにチャレンジする道を選ぶ。

ルーカス・B.B.さん

そんなルーカスさんがいま最も興味があるテーマは、「HIKE & BIKE」。徒歩や自転車によって自力で日本各地を旅することだ。そもそもは妻・香織さんの実家がある静岡県焼津まで歩いて帰ってみたいと思ったことがきっかけだった。ところが香織さんは「そんな大変なことなんて」と大反対。なんとか彼女の気を惹く接点を見つけようと思案していたところ、焼津の隣の藤枝を旧東海道が通っていることを知った。試しに、この旧東海道を香織さんとともに歩いてみたところ、その土地ならではの文化や自然、魅力的な人々に出会える、この上なく楽しい快適な経験となった。

ルーカスさんの作る雑誌『Hike』&『Bike』
ルーカスさんの作る雑誌『Hike』&『Bike』

ちょうど、東日本大震災による原発事故によって、無防備に信じていた科学や技術の脆さを痛感し、いいようのない不安に包まれていた時期だった。日本が長年にわたって積み重ねてきた歴史や文化の大切さを改めて痛感し、以来、ルーカスさんは日本中のあらゆる街道を自分の足で旅し、情報発信を続けている。

ルーカス:過去はいまも生きているし、未来にもつながっている。過去をきちんと知って、活かすことは僕たちの世代の仕事だ。

世の中にないアイデアを考えて、形にすることが好き 。そして、もともと寂しがり屋だから、1人で全てやるよりも、他の人と力を合わせてやり遂げることが好き。1つ1つのパーツが組み上がっていくプロセスを体感することが、無上の喜びだという。そんなルーカスさんに、これからの人生に欠かせないものをたずねてみた。「そうだねー」ちょっと考えてからニコッと笑った。「僕の人生に必要なのは、すごくシンプルで、いい文化。おいしい食べものと空気。あと、妻の香織。それさえあれば十分だね」。

左から:唐川靖弘と、ルーカス・B.B.さん
左から:唐川靖弘と、ルーカス・B.B.さん
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プロフィール

ルーカス・B.B.(ルーカス・ビービー)

1971年、アメリカ・ボルティモア生まれ。サンフランシスコ育ち。1993年に来日、1996年にニーハイメディア・ジャパンを設立する。カルチャー誌『TOKION』を発行し、斬新な切り口で若者の注目を集める。その後もトラベルライフスタイル誌『PAPERSKY』やキッズ誌『mammoth』を手がけながら、『Metro min.』(スターツ出版)や『Planted』(毎日新聞社)など、数多くのメディアの創刊にクリエイティブディレクターとして関わる。ファミリー向け野外フェスティバル「マンモス・ハローキャンプ」や日本各地を自転車で巡る「ツール・ド・ニッポン」のイベント企画やプロデュースなど、雑誌以外のさまざまなフィールドでもクリエイティブ活動を行う。

唐川靖弘(からかわ やすひろ)

1975年広島県生まれ。外資系企業のコンサルタント、戦略プランニングディレクターを経て、2012年から米国コーネル大学ジョンソン経営大学院 Center for Sustainable Global Enterpriseマネージングディレクターとして、多国籍企業による新規ビジネス開発プロジェクトや新市場開拓プロジェクトをリード。自身のイノベーションファームEdgeBridge LLCを拠点に、企業の戦略顧問や組織・人材育成プログラムディレクター、大学の客員講師としても活動。フランスの経営大学院INSEADにおいて臨床組織心理学を研究中。

連載『イノベーションを生む「うろうろアリ」の働き方』

変化のスピード増す現代において、既存の価値観や会社という枠組みに囚われないない「うろうろアリ」こそがイノベーションをリードする。自由な発想で新たな価値を生み出し続ける彼らの、最先端の働き方を紹介するインタビュー連載です。

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