戸田真琴と性を考える セックスはいつまでも、薄暗いものじゃない

戸田真琴と性を考える セックスはいつまでも、薄暗いものじゃない

インタビュー・テキスト
菅原さくら
撮影:柴崎まどか 編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

性は文化の手前にあるものだから、向上心がなくてダメダメなときにだって、セックスは慰めになる。

—戸田さんとお話していると、本当に性って身近だし、べつに特別視するものじゃないはずなのにな……と思えてきます。

戸田:映画とか小説とか、心を満たせるものって山ほどあるじゃないですか。でもそういうものを深掘りしようと思うと、本を読み切ったり映画をいろいろ解釈したり、何かとエネルギーが要る。誰もがいつでも文化的に生きられるものではないな、と思うんです。

だけど、性は文化の手前にあるものだから、ほかのコンテンツには興味が持てない人でもキャッチできるんですよ。向上心がなくてダメダメなときにだって、セックスは慰めになる。だから、性はやっぱりすごく身近で、私たちにとって必要なものだなと思います。

戸田真琴

—その一方でセックスは、誰かを傷つけるものにもなりえますよね。どうすれば性のポジティブな側面を、きちんと活かしていけるんでしょう。

戸田:悪い意味でのツールとして使われると、セックスはとたんにネガティブになりますよね。強要することだけでなく、誰かをつなぎとめたり、何か利益を得る代償にしたりすることもそう。

たとえばスウェーデンでは、1970年代に「性革命」が起こり、性がぐっとひらかれた存在になったそうです。以降のセックスは、パートナーとのコミュニケーションを深めるツールとして、いい立ち位置が確立されつつある。そんなふうに相手と自分を喜ばせるものとして、カジュアルに楽しめる風潮ができればいいなと思います。……「Fika」だから、スウェーデンの事例も勉強してきました!(笑)

—下準備、ありがとうございます……! もともとスウェーデンでは性がかなり抑圧されてきたから、日本と状況が似ていますよね。なのに意識改革が起きて「性の先進国」になったのは、本当にすごい。

戸田:いま日本で売れているAVって「痴漢」とか「無理やり」とか、背徳感を強めに出した内容なんです。これは、抑圧された現状を映しているのかも、と思っています。好きな人とほがらかにセックスすることは、多くの人にとっていいことであるはずなのに、コンテンツでは「やっちゃいけないことをやる快感」が強調されているんです。もちろん、心の中だけは自由であってほしいから、作品でその欲望を満たすのは全然いいんだけど……あまりにもその比率が大きいから、違和感はありますよね。

戸田真琴

どんな人もどんな意見も、どこかでなだらかに地続きしているものだという意識を、まずは忘れずにいたいです。

—とはいえ、日本の性意識もこの数年間で、少しは前に進んできていると思いたいです。とくにジェンダーの面では、さまざまな運動が起きてきました。

戸田:そうですね。たとえば「#MeToo(性的嫌がらせなどの被害体験をSNSで告白や共有する際、使用されるハッシュタグのこと)」が広まったり、LGBTQの社会運動が高まったり、ジェンダー観には変化の兆しが見えてきました。その一方で、反射的に相手を嫌悪する態度が目に付いたりもして……たとえば、女性が何かを主張したときに、男性がそれをおとしめる。「女性の権利を守ること=男性の権利を否定すること」ではないのに!

戸田真琴

—そんななかで私たちはこれから、どんなふうに性と付き合っていけばいいんでしょう。

戸田:私たちは性別を問わず、一緒に生きていく共同体で、立ち位置や視点がほんの少し違うだけ。どんな人もどんな意見も、どこかでなだらかに地続きしているものだという意識を、まずは忘れずにいたいです。だから本当は「女性 / 男性」とか「LGBTQ」とか、あえて分けるものでもない。分けないままだと理解が得られないから、いまは便宜上分けているけれど、いまみたいな運動や反発が繰り返されていくうちに、ちょっとずつ意識も融合していくはず。

—セックスやジェンダーは、自分と誰かを必要以上に差別化したり、誰かを攻撃したりするためのものではない。もっと、人生を豊かにできるものだという気がしてきます。

戸田:昔と違ってインターネットが発達しているいまは、誰もが声を上げられます。だから「女性だからこう」「セックスはこうだ」という状況を鵜呑みにせず、違和感をおぼえたら「そうじゃないかもしれないよ」って声に出していい。誰もが自分の性別らしく、画一的に生きているわけじゃありません。

そんなことを考えるたび、自分の本当の性って何だろう? って分からなくなるんですよね。そうなると生きづらいのが現状の日本だけど……それでも、自分たちが幸せになれる生き方を求めて、分からなくなることは間違いではないと思っています。

戸田真琴
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プロフィール

戸田真琴(とだ まこと)

2016年にSODクリエイトからデビュー。その後、趣味の映画鑑賞をベースにコラム等を執筆、現在はTV Bros.で『肯定のフィロソフィー』を連載中。ミスiD2018、スカパーアダルト放送大賞2019女優賞を受賞。愛称はまこりん。

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