戸田真琴と性を考える セックスはいつまでも、薄暗いものじゃない

戸田真琴と性を考える セックスはいつまでも、薄暗いものじゃない

インタビュー・テキスト
菅原さくら
撮影:柴崎まどか 編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

性について話すのはただのエロじゃないし、人生において大切なことだと思う。なのに、全然話せないんですよね。

—AV女優になってみて、生きづらさは解消されましたか?

戸田:AV女優として活動しているいまのほうが、生きやすいですね。性には、確かなニーズや市場があるじゃないですか。世界中でそれほど大きな分量を占めているテーマに対して、嫌悪ばかりで理解できなかったことが、私の生きづらさの一因だったんだと思う。だから、AVを通して性を表現する立場に就いてみて、少し楽になったんじゃないかな。

戸田真琴

—戸田さん自身の、性の捉え方も変わったんでしょうか。

戸田:昔みたいに「性や男性=得体の知れないもの」じゃなくなりましたね。10代のころは性欲と好意がまったく別物だと思っていたから、性欲を向けられるのが不快だったけれど、じつは両立できるものなんだと感じるようになったし。

だからいまは、性について話すのはただのエロじゃないし、人生において大切なことだと思う。なのに、全然話せないんですよね。自分も周りもこれだけセックスしているのに、まだまだ分からないことがたくさんある。男女がペアになることをこれだけ推奨されている世の中で、お互いのことを何も知らないんですよ。

—「性について分からない」というのは、どういうことなんでしょう。AVを含め、性的なコンテンツはあふれているけれど、正しい情報が足りなくて理解が追いつかない、みたいなことでしょうか?

戸田:そうですね。きちんと教わらないまま大きくなると、何が本当なのか分からなくなっちゃうんです。隠れてこっそり得られる性の情報は、とても限られていて。その代表格であるAVやエロ漫画にはフィクションがいっぱい施されているから、現実とは違うじゃないですか。

日常にセックスがある人はそれをファンタジーとして楽しめるけれど、そうではない人もたくさんいます。性について興味を持ったり、知識を得ようと思ったとき、気軽にアクセスできるコンテンツがフィクションしかない状態って、すごくやばいと思うんです。

戸田真琴

AV女優はさまざまな偏見を向けられる仕事だけど、みんな性欲があるし、セックスしますよね。

—正しい性の知識を、いいタイミングで提供できるコンテンツがほしい。たしかにいまの日本では、最適なものがありませんね。

戸田:大人は、なるべく子どもに無知であってほしいと思っているんですよね。下手に教えて道をそれてしまうことが怖いから、なるべく何も知らせず、考えさせないように蓋をする。でもそれって、分からないものほど知りたくなる子どもの好奇心を無視していて、逆効果なんですよ。正しく知らせてしっかり導くのが、大人の仕事だと思っています。

戸田真琴

戸田:私たちは性について学校で教わらなかったし、人前で話さないように教育されてきました。だから、性に関することはぜんぶ不正解で、ぜんぶタブー。いつまでも「セックスはこっそりする悪いこと」っていうイメージがある。なのにいきなり「避妊をしましょう」とか言われても、理由も方法もピンとこないんですよね。

たとえば日本は海外に比べて、ピルの普及率がすごく低いんです。ピルといえば「セックスする人が飲むもの」というイメージが、普及率を下げているんだと思う。本当は生理痛緩和にも役立つし、10代の子がホルモンバランスを整えるために飲んだっていいのに、その選択肢は伝えられていないんです。いろんなことをきちんと分かったうえで生きていけたら、もっともっと楽なのにと思います。

—そういう日本の性に対する姿勢を、戸田さんは具体的にどうしていきたいですか。

戸田:「性は薄暗いもの」という偏見を、壊していけたらいいなと思っています。何も知らなかったあの頃の自分みたいな人に、適切な情報を与えたい。いまはそういう気持ちもあって、この業界にいる気がします。AV女優はさまざまな偏見を向けられる仕事だけど、みんな性欲があるし、セックスしますよね。そんな当たり前のことを嫌悪するのは、やっぱりおかしい。

もちろん、私だって大声でセックスの話をするのは恥ずかしいですよ(笑)。「誰もが性についてあっけらかんと話せる」ことだけが理想ではないけれど、「話したいと思っている人が普通に話せる」世の中にはしたい。適切な情報を踏まえたうえで、人それぞれの性の捉え方を、フラットに受け止められるようになったらいいですよね。

戸田真琴
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プロフィール

戸田真琴(とだ まこと)

2016年にSODクリエイトからデビュー。その後、趣味の映画鑑賞をベースにコラム等を執筆、現在はTV Bros.で『肯定のフィロソフィー』を連載中。ミスiD2018、スカパーアダルト放送大賞2019女優賞を受賞。愛称はまこりん。

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