Spotify主催のイベントレポ。NulbarichやSIRUPら登場

世界最大級の音楽ストリーミングサービス「Spotify」。発祥の地、スウェーデンでは水道や電気と同様、インフラのようになっているともいわれる本サービスが主催する音楽イベント『Spotify presents Early Noise Special』が、3月28日にEX THEATER ROPPONGIにて開催された。

「オンラインからオフラインへ、ライブ体験を通してアーティストの魅力を伝える」。そんな目的のもとに異なる個性を持った8組が集った。フェスでさえありえないほどにジャンルごちゃまぜの、まるでプレイリストのような一夜は、想像を超えるような盛り上がりを見せ、日本の音楽シーンの新たな夜明けを感じさせた。

新時代を予感させる、あっこゴリラからRIRIまで

トップバッター・あっこゴリラは、アグレッシブでパワフルでありながら、観客に対してまっすぐ手を差し伸べるようなパフォーマンスで、会場の空気を完璧に掴んでいた。“100%AKKOGORILA”にはじまり、ラストの“GRRRLISM”まで矢継ぎ早に5曲を披露。多様性へのメッセージを乗せたラップと、随所に忍ばされたポップスのエッセンスで、さまざまな年齢層の観客を踊らせる。ライブ後のトークでは、ハリー杉山との抜群の掛け合いを披露し、「新年度は、価値観がゴロゴロ変わっていく1年になる。仲間やみんなとつながって、おもしろいことをやっていきたい」と語った。その言葉は、一貫してブレないあっこゴリラの思想を体現しているのだろう。

あっこゴリラ

『ライオン・キング』のSEに導かれたのは、ピアノポップの新旗手・ビッケブランカ。跳ねるようなピアノでスタートする“ウララ” では、ステージを所狭しと行き来しアグレッシブなパフォーマンスを披露したかと思えば、しっとりと落ち着いた“まっしろ”から多幸感溢れる“Winter Beat”へと、続けて披露。会場にいる誰もが手を叩き、聴き惚れてしまうさまは、まるでワンマンライブと見まがうほど。ベース、ドラム、プログラミングもこなすマルチプレイヤーらしい振れ幅の広さ、音楽への造詣の深さを、短い持ち時間の中で魅せた。

ビッケブランカ

3番手はSIRUP。ブラックミュージックやR&Bのリクリエイションは世界的な潮流のひとつであり、それを日本のリスナーに迎合することなく、されど多くのリスナーを振り向かせる絶妙の距離感で実現しているアーティストだ。“Do Well”で観客を踊らせた後に「だいぶ暑なってるやん、1回休憩しようか? チルしようか?」という関西弁のMCを挟んで“LOOP”をしっとりと歌いきった。空気をざらりと震わせたかと思えば、なめらかに鼓膜を通り抜ける。その声の説得力は「2曲? え、これで終わり?」という観客の声が裏づけていた。

空間系のエフェクトを効かせた音像は、まさしくドミコの得意とするところ。ローファイなサウンドをループで重ね、2人組とは思えない重層的な即興を行う。響きが美しい“ベッドルーム・シェイク・サマー”から、夢から醒めたように鋭い“ペーパーロールスター”へ。ドミコの持ち味であるサイケデリックとセンチメンタリズムが存分に伝わる2曲を演奏した。

ドミコ

4人のダンサーとともに登場した19歳のシンガーRIRIは、16歳のときからLAで有名プロデューサーと制作を行ってきたほか、世界的なDJ ZEDDとのコラボレーション、『SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)』への日本人最年少参加と、活躍ぶりは枚挙にいとまがない。4月のリリースに先駆けて披露されたKANDYTOWN・KEIJUとのフィーチャリングソング“Summertime”は、グローバルとの接続を感じさせる壮大な1曲。プロデュースは小袋成彬が手がけている。エネルギーにあふれたダンスパフォーマンスもあいまって、新時代のポップアイコンとしての存在感を示した。

RIRI

熱量の高まりも最高潮に。NulbarichからOfficial髭男dismまで

一際大きな歓声に迎えられたのは、JQ率いるNulbarich。ネオソウルやアシッドジャズのエッセンスを巧みに織り交ぜ、空間をひとつへ溶かしてゆく。「次の曲、踊る曲」という短いMCを挟んで披露した“VOICE”は、ディスコサウンドを感じさせる1曲。シルキーなファルセットと艶のあるミックスボイスを織り交ぜたボーカルはもちろん魅力だが、エモーショナルなギターソロとベースソロが印象に残っている。武道館公演を経て、バンドサウンドの強度が増したのだろう。

Nulbarich

ループステーションを用いて、アコースティックギター、キーボードを重ね、フォークとダンスの境界を行き来する演奏を披露したのは、シンガーソングライターのReN。派手な演出を見事にものにしたステージングが印象的だった。MCでは、「Spotifyというプラットフォームに集うのは音楽を本当に愛している人たち。みんなが新しい音楽を知りたいと思っているからこそ、こんなにさまざまなアーティストが出ているのに一体感があるんですね」と語り、この一夜を祝した。

ReN

トリを務めたのは、Official髭男dism。放射状の照明がフロアを貫き、鐘の音とともに演奏開始。1曲目、“ノーダウト”が始まるやいなや、誰もが体をゆらし、口ずさみ始める。2曲目は“FIRE GROUND”、ステージ上に炎の柱が上がり、フロアの温度は文字通り上昇し、それに呼応するようにコールアンドレスポンスも熱を帯びる。「ここまでのライブを見ていて、僕らにも早くやらせてくれって思ってました」というMCを挟み、“115万キロのフィルム”を披露。「サムネイル」といった歌詞が象徴する時代の変化と、愛情の普遍性の対比が美しい。およそ3時間に渡るイベントのラストソングは、“Stand By you”。見渡す限りほぼすべての観客が完璧に手を叩くさまは、まるでワンマンライブのようだった。

Official髭男dism

Spotifyには、視聴データをもとに選出される「スーパーファン」というシステムがあり、リスナーとアーティストの新しい関係性を模索している。今回のイベントには各アーティストのスーパーファンが招待されており、その熱量の高さがぶつかり合う特別な一夜となった。

撮影:CINRA.NET編集部
イベント情報
『Spotify presents Early Noise Special』

2019年3月28日(木)
会場:EX THEATER ROPPONGI
出演:
あっこゴリラ
ビッケブランカ
SIRUP
ドミコ
RIRI
Nulbarich
ReN
Official髭男dism



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「幸福度が高い」と言われる北欧の国々。その文化の土台にあるのが「クラフトマンシップ」と「最先端」です。

湖や森に囲まれた、豊かな自然と共生する考え方。長い冬を楽しく過ごすための、手仕事の工夫。

かと思えば、ITをはじめとした最先端の技術開発や福祉の充実をめざした、先進的な発想。

カルチャーマガジン「Fika(フィーカ)」は、北欧からこれからの幸せな社会のヒントを見つけていきます。

スウェーデンの人々が大切にしている「Fika」というコーヒーブレイクの時間のようにリラックスしながら、さまざまなアイデアが生まれる場所をめざします。

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