マルコメ社員と料理家、世界一くさい缶詰を食べて発酵を語る

マルコメ社員と料理家、世界一くさい缶詰を食べて発酵を語る

インタビュー・テキスト
大北栄人
撮影:鈴木渉 編集:中田光貴、石澤萌(CINRA.NET編集部)

「日本食自体が世界的に注目されて『なぜあんなにおいしいんだ?』となったときの根幹は、発酵食品に行きつくと思うんですよね。」(尾田)

─さきほどのレネ・レゼピさんもそうでしたが、日本の発酵食品が世界的に注目されるのはなぜですか?

榎本:まず発酵の技術ですね。たとえばアルコール発酵には糖分が必要なんですが、日本酒の場合、お米って噛まないと甘くないじゃないですか。それはデンプンがまだブドウ糖に分解されていないからなんです。その糖化を米麹がやりつつ、さらにできた糖を酵母がアルコール発酵させる。それをマルチタスクで平行してやるっていうのが世界でも類をみない高度な醸造方法なんです。

尾田:日本の発酵食品ってものすごい技術の集結だと思うんですが、日本ではなかなか注目されないですよね。日本人として味噌や醤油があるのは当たり前すぎて、なぜか後発的に日本に入ってきたヨーグルトよりも研究が進んでなかったりします。

 

あるある。たしかに私たちはヨーグルトの効能ばかり知っている。今後よく調べるとインフルエンザに効く味噌とか出てくるのかもしれない。

榎本:そしてもちろん技術だけでなくおいしさもありますよね。今、「noma」の元シェフが日本で「INUA」というレストランをやっていて、そこでも味噌や酒粕が使われています。旨味や甘みを高める日本の発酵食品の力を存分に活かしているんですね。

日本食ってすごく複雑で奥深い味がしますよね。国によって違いがありそうですが、たとえばフランスのソースを作っているシェフが深みを出すのに日本の食材に目を向けるんじゃないのかなと。

尾田:日本食自体が世界的に注目されて「なぜあんなにおいしいんだ?」となったときの根幹は、発酵食品に行きつくと思うんですよね。醤油だったり味噌だったり、日本食のベースが発酵食品なので、フランスや別の国の料理にもチャレンジはされるでしょう。

最近では、食品にこだわりのあるかたは化学調味料の代わりに塩麹や醤油麹でうまみを出したり、上白糖のかわりに甘酒を使ったり、発酵調味料を使われていますね。

 

榎本:食のトレンドである北欧をはじめ、世界的に日本食のおいしさと発酵の技術を認めてもらっている。それなのに日本人の多くがそこまですごみをわかってないのはもったいないですよね。日本の食卓ではごはんと味噌汁とか、ごはんとつけものとか、いつもごはんが中心ですけど海外だとワインやチーズが中心にきたりする。日本でも発酵食品がその位置づけにもうちょっときてもいいんじゃないかと思います。

「話は無限に拡がるんですが……」と前置きされたうえでうかがったお話はほんの一部である。世界一匂いが強い食品から、あなたの代わりに米を甘くなるまで噛んでくれる甘酒まで。発酵の力と、どうやってそれを見つけてきたのか頭が痛くなるような人間の文化の分厚さに頭が下がる思いだ。今後は牛丼屋で「牛丼に味噌汁つけて」とはもう言わない。「味噌汁に牛丼つけてください」とオーダーすることにした。

 
 
Page 4
前へ

プロフィール

マルコメ株式会社(まるこめかぶしきがいしゃ)

だし入りの味噌「料亭の味」や液状タイプで使いやすい「液みそ」を主力とする食品メーカー。近年は味噌づくりに欠かせない米糀と発酵技術を活かしたアルコール0%の「糀甘酒」が大ヒット。同じく味噌の主原料にある大豆では、高たんぱくで低脂質な「大豆のお肉」やグルテンフリーの「大豆粉」関連の商品が話題に。ベジタリアンやヘルシー志向の方にとどまらず、罪悪感のない食事を意味するギルトフリーの食生活を提案している。

榎本美沙(えのもと みさ)

料理家、発酵マイスター。広告会社勤務の傍ら、夫婦で一緒に料理を作るレシピ紹介サイト「ふたりごはん」を開設。その後、調理師学校を卒業し独立。「季節の手仕事・季節の料理」を忙しい人にも気軽にをモットーにレシピ開発をおこなう。主に「旬野菜、発酵の手軽料理」などの領域で、雑誌やWEBへのレシピ提供、企業のレシピ開発、料理教室、イベント出演などを行う。

大北栄人(おおきた しげと)

ウェブのライター、コントのユニット「明日のアー」の主宰。映像作品で『したコメ大賞2017グランプリ』受賞。アーは恥ずかしいことを思い出して出るうめき声のこと。いましてることはすべて明日のアーであるという自覚がある。

Category カテゴリー

Latest Articles 最新の記事

What's "Fika" ? フィーカとは

「Fika」はCINRA.NETとVOLVOが送る、北欧カルチャーマガジンです。北欧デザインの思想の基盤を「クラフトマンシップ×最先端技術」と捉え、そこに学びながら、これからのカルチャーやライフスタイルにまつわるコンテンツをお届けします。