現金を持たない市川渚が綴る、キャッシュレス決済の良し悪し

現金を持たない市川渚が綴る、キャッシュレス決済の良し悪し

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市川渚
イラスト:日向山葵 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)
2019/03/18
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世界に比べてまだまだ普及しない、日本のキャッシュレス事情

日本でも、今年10月の消費増税にあわせて、政府がキャッシュレス化を推奨し、法律や補助金制度などを整えはじめたところである。昨今大胆なキャンペーンで話題になったPayPayや前出のLINE Payなど、大手企業やベンチャーが手がけるスマホ決済サービスが続々と登場。とはいえ、日本ではまだまだ浸透していないのが現状だ。

一方、世界に目を向けてみると、日本とは比べ物にならないくらいキャッシュレス化が進んでいる地域がいくつかある。そのひとつが北欧諸国だ。

もともとデビットカードやクレジットカードが普及しており、キャッシュレス決済に対して抵抗のない人が多いという背景もあるが、今ではカードだけでなく、スウェーデンではSwish、デンマークではMobilePayといった銀行が立ち上げたスマホ決済サービスが国民の1/3~約半数ほどに浸透しているという。

キャッシュレス化の指標となるGDPに対する現金流通量は、日本ではまだ2桁%代なのに対して、これらの国は1桁代。公共交通機関からマーケット、美術館、公衆トイレまで、街のいたるところにQRコードが提示され、スマホで決済をすることができるようになっていて、「現金お断り」のお店も増えてきているという。現金やクレジットカードの入ったお財布を持たずとも、スマホさえ持っていれば、生活できてしまうのである。

こういった国に足を運ぶことになったとき、旅行者としてもキャッシュレスの恩恵を受けられる部分は多い。損をしてしまうようなレートで、使うかもわからない現金を両替する手間を省けるし、トラブルに遭ってしまった時も、キャッシュレス決済は記録が残るので、リスクを回避しやすい。

個人的にも、海外に出かける際、最近は「念のため」両替をする金額が圧倒的に減ったし、カードやスマホ決済が使えない国に行くのは面倒だなと思ってしまうことも。日本に対して、そういった印象を持っている外国人観光客もいるのかもしれない。観光地では、カードすら使えないという場面も多い。

バッテリー切れや端末の故障は、金の切れ目

ここまで、メリットばかりを並べてしまったが、もちろんキャッシュレスにも弱みがある。スマホ決済サービスは、その多くが登録の際に現地の電話番号や銀行口座を紐づける必要がある。旅行者や外国人にとって優しいサービスであるとは限らないのだ。北欧諸国と同様にキャッシュレス先進国であり、スマホ決済が浸透している中国に出かけた際に、自分が苦労した部分でもある。

また、セキュリティの面で不安、という声は周囲の友人や親世代からもよく聞くし、実際のトラブルもニュースなどで耳にする。(これは滅多にないことだとは思うが)システムがダウンしてしまったら不可抗力的に使えなくなってしまうし、もっと身近なところでは、自分のスマホのバッテリーの切れ目が、ある意味、お金の切れ目になってしまう。

筆者も先日、Suicaを使っているApple Watchのバッテリーが切れてしまって、電車に乗れない、ということがあった。幸いその日はお財布を持っていたし、多少の現金が入っていたので、どうにか難を逃れることができたが、過日、新幹線で京都に出かけた際には、Apple Watchの充電器を忘れてしまい、「もしバッテリーが切れたら、チケットレスで予約した帰りの新幹線に乗れないのではないか……」とヒヤヒヤしたこともあった。

無論、普段からバッテリーを切らさないよう充電を欠かさない、モバイルバッテリーを持ち歩くようにする、といった対策を万全にしておけば回避できる部分も大きいが、バッテリー切れではなく、スマホが故障してしまったら……それこそ二進も三進もいかなくなってしまう。こんな時は、代替の決済手段に頼るしかないだろう。

携帯電話が普及したから、街中の公衆電話がゼロになったわけではないように、キャッシュレスも現金も、それぞれ、お金を所持し、使う一手段でしかない。何かひとつのことに囚われすぎず、ライフスタイルに合わせて、心地よく毎日を生きていくための手段を、自分で選んでいく。私はお金に対しても、そんな柔軟な姿勢でいたい。

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プロフィール

市川渚(いちかわ なぎさ)

ファッションデザインを学んだ後、海外ラグジュアリーブランドのPRなどを経て、2013年に独立。フリーランスのファッション・コンサルタントとして、ファッション、ラグジュアリー関連の企業やプロジェクトのコンサルティング、デジタルコンテンツのクリエイティブ・ディレクション、プロデュース、制作などを手がける。ガジェットとデジタルプロダクト好きが高じメディアでのコラム執筆やフォトグラファー、モデルとしての一面も。ファッションとテクノロジーがクロスする領域で幅広く活躍中。

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