Yogee New Waves角舘健悟が綴る、海への想い。ある冬の夜の話

不器用でも「僕らしく」、愛おしい。角舘健悟が愛車への想いを綴る

VOLVO 240の鍵穴に、古めかしいエンジンキーを突き刺して、けたたましく鳴り響くエンジン音を聞く。アクセル踏み込むと、車体とハンドルを伝う振動と低音。最近はStevie Wonderの『Talking Book』『Innervisions』『First Finale』の三部作を、交互に聴くのが習慣になっている。備え付けのスピーカーが妙にいい音で、冷房が壊れていることはさておき、基本的に窓を開けて運転するのがとても好きだ。外の音と音楽が混じって聞こえる。

最近は、なにごとも「~らしさ」っていうのが大切なことに気づきつつあって、20代後半の僕らが感じる車らしさを、このVOLVOは不器用ながらに多分に秘めているように思う。もちろん、今の時代の人には今の時代の人らしさの中で、愛される車があることも知っている。ただ、僕の大好きな90年代カルチャーを思えば、このVOLVOは「僕らしさ」の中に自然と存在していることがわかる。

僕のVOLVOの紹介をしたいと思う。VOLVO 240セダン、色が特に気に入っていている。カラーは少しクリームがかったホワイト。1990年生まれの僕のひとつ上の先輩にあたる29歳。去年から今まで仕事で一緒になった、番組制作の方に譲ってもらった。左前の窓は、他の窓に比べてゆっくりと開く。冷房はうんともすんとも言わないけれど、暖房だけはカンカンに機能する。走行距離13万km。修理回数は、僕の手に渡っただけで4回。呼んだJAFの回数は山手通り1回、渋谷の街中で1回。乗せた友達の数は40人以上、一緒に海へ行った人数5人。この車への他人からの否定回数、0回。

角舘の愛車・VOLVO 240
Yogee New Waves。このアーティスト写真はVOLVO 240とともに撮影された

なぜ僕らは海へ行くのだろう? 角舘健悟が「冬の海」を愛するワケ

僕は海が好きです。浜であろうと防波堤であろうと、自然であろうと、都会であろうと大好きです。綺麗であろうと、汚かろうとあまり関係ありません。特に友達と海に行くのが好きで、千葉の対岸のきらきらと光る工場地帯を見るのも、高速道路下の海も好きです。海の前だと、なぜだか会話が最小限になるのが好きです。お互いの会話のリズムが常にフラットで、好きなタイミングで好きなことを言えるのも好きです。できればそういう時はふたりがいい。3人になると、その時間の楽しさを思い切り追求したくなって、たくさん話してしまう。それはそれで好きなんだけれども。

では、ひとりで海に行ったことはあるだろうか。昔、僕は岡山にある祖母の家から、徒歩10分の瀬戸内海沿いをぶらぶらするのが好きだった。その頃、銀杏BOYZが2枚のアルバムを出した後、3枚目のシングル『17才』をリリースしたころで、iPodに入れてバッテリーが切れるまで、なん度も繰り返し聴きながらぶらぶら歩いていた。使いもしない貝殻を拾ったり捨てたりを繰り返していた。

Yogee New Wavesの4人がVOLVO 240に乗って旅に出る、ロードムービー風のミュージックビデオ

あんなに虚しくて、ひとりぼっちで非生産的行為ありゃしないけれども、社会にいる僕と、心の中にいる僕との距離をしっかりと測ることができる。自分らしさというものを、ひとりぼっちと一緒に再発見させてくれる。それがひとりの海だ。しかも、にぎやかな夏よりも、冬の海が特に素晴らしい。なぜなら「誰もいない」からである。

「誰もいない」というと、すこし語弊がある。人がひとりもいないのではなく、僕を巻き込むものがなにひとつないのである。楽しそうな笑い声も、誰かが流している音楽も、ナンパもギャルも、いかつい人も誰もいない。いたとしても、犬を散歩するおじさんやランニングをする男性、コートに手を入れて歩くカップル、その程度である。

ようするに彼らにとっての海は、生活の一部であり、娯楽ではない。僕らが家から駅まで歩いていくように、彼らもまた、浜を歩いたりして生活をしている。そこにすっぽりと溶け込むように、流木や浜に腰を下ろすのである。そうすれば、彼らは僕らのことを、自然の中のひとつと思ってくれる。僕らを巻き込まず、入り込むことも干渉することもない。それが冬の海の醍醐味である。強くお勧めしたい。

角舘は旧友と海へ向かう。ある冬の夜の話

話を戻そう。ある寒くなったころ、16歳からの友達(以下、石原)とふたりで東京の若洲のほうへ海に出かけた。車が手元にきてから、随分と海へのアクセスがしやすくなって、石原は気分転換をしに海へ行きたいと、僕にちょこちょこと連絡をしてくれる。僕は少しも嫌じゃなく、気持ちよく誘いに乗る。

石原は渋谷区あたりの下着屋さんで働いていて、僕のような曜日感覚のない音楽家とは違った、きちんとした仕事をしているもんだから、ちゃんと仕事を終わらせて、20時あたりに車で迎えに行くことが多い。僕らは車に乗り込むと、堰を切ったように、最近あったこと、嬉しかったこと、悲しかったこと、たくさんのことをノンストップで話し合う。漫才のように、あらかじめ決まり切ったテンポで話すように、なめらかに会話が進んで行く。東京都内から20分〜30分も車を滑らせば、あっという間に海に着いてしまう。透き通る沖縄の海とは真逆の、真っ暗で真っ黒な東京湾を眺めにいく。

海に着くと話す場所を探す。できるだけ波に近く、けれども海が満ち切った時に水滴が飛んでこないような適切な場所を選ぶ。お決まりのスポットは存在していなくて、その時の気分と雰囲気で決まる。だけれど、いつからか僕が選ぶようになっていた。どうやら僕はコツを知っているようだ。

今回はごつごつとした、ちょうどふたりが座れそうな岩の上に決めた。さっきまでのマシンガントークが嘘だったかのように、僕らは最小限の会話に不思議な落ち着きを感じていた。じっと波の打つ音に耳をすませる。風が時々強く吹いて、さっきまでの車内の暖かさも嘘のようだ。やっと何かを言う気になった顔になる。最初に出た言葉は「きもちがいいね」の間の抜けた一言だった。

会話は車内ほどテンポよく続かない。言いたいことを言ったら、それについての長いシンキングタイムがやってくる。それをじっと待つ。もしくは、考える。穏やかな時間が過ぎていくのがわかる。その間、僕は目に映るものをじっと見ている。真っ黒な波に反射する街灯の光がきらきらしていて、とても綺麗だ。遠くに見える工場地帯もオレンジに燃えている。遠くに見える橋の上を、光がゆっくりと走っている。人によっては、どぶの臭いがすると言われてしまいそうな、この東京湾の潮の匂いも、僕には愛らしく思える。都会に戻ってしまったら、この潮の匂いもないような、ガス臭いだけなのだから。

海に慣れたふたりの会話は、コツを掴んだかのようにちょうどいいリズムで、夜と一緒に進んで行く。時間は深夜4時になる。疾走するトラックが増えた。朝がこれからやってくる。こういう時、朝までに帰らなくちゃならないような気がするのはなぜだろう。ふたりにとってベストのタイミングで、「かえろうか」の一言が漏れ出た。

楽しかった旨を伝えて、石原の家まで送ることを約束した。僕らはまた、堰を切ったように話をして、車に乗り込む。

リリース情報
Yogee New Waves
『BLUEHARLEM』初回限定盤(CD+DVD)

2019年3月20日(水)発売
価格:4,104円(税込)
VIZL-1540

[CD]
1. blueharlem
2. Summer of Love
3. CAN YOU FEEL IT
4. Good Night Station
5. Suichutoshi
6. emerald
7. Bring it Home
8. past song
9. Bluemin’ Days (Album Ver.)
10. SUNKEN SHIPS

[DVD]
・Bluemin’ Days Asia Tour Documentary “Love you Asia”
・CAN YOU FEEL IT TOUR at Zepp DiverCity Tokyo 2018.12.13
「Climax Night」「Sunset Town」「Like sixteen candles」「Bluemin’ Days」「CAN YOU FEEL IT」「Summer of Love」
「emerald」
・Music Video
「Bluemin’ Days」「CAN YOU FEEL IT」「Summer of Love」

Yogee New Waves
『BLUEHARLEM』通常盤(CD)

2019年3月20日(水)発売
価格:3,240円(税込)
VICL-65136

1. blueharlem
2. Summer of Love
3. CAN YOU FEEL IT
4. Good Night Station
5. Suichutoshi
6. emerald
7. Bring it Home
8. past song
9. Bluemin’ Days (Album Ver.)
10. SUNKEN SHIPS

イベント情報
『TOUR BLUEHARLEM 2019』

2019年6月8日(土)
会場:岡山県 YEBISU YA PRO

2019年6月14日(金)
会場:福岡県 DRUM LOGOS

2019年6月15日(土)
会場:鹿児島県 SR HALL

2019年6月16日(日)
会場:長崎県 DRUM Be-7

2019年6月22日(土)
会場:静岡県 浜松 窓枠

2019年6月29日(土)
会場:新潟県 新潟 studio NEXS

2019年6月30日(日)
会場:宮城県 仙台 darwin’

2019年7月5日(金)
会場:愛知県 名古屋 ダイアモンドホール

2019年7月6日(土)
会場:石川県 金沢 EIGHT HALL

2019年7月12日(金)
会場:北海道 札幌 ペニーレーン24

2019年7月14日(日)
会場:大阪府 なんばHatch

2019年7月15日(月・祝)
会場:香川県 高松DIME

2019年7月17日(水)
会場:Zepp DiverCity TOKYO

2019年7月21日(日)
会場:沖縄県 桜坂セントラル

プロフィール
角舘健悟 (かくだて けんご)

1991年生、東京出身。2013年にバンド、Yogee New Wavesを結成し、ボーカルとして活躍。2014年4月にデビューe.p.『CLIMAX NIGHT e.p.』を全国流通でリリース。2018年3月にはメジャーデビューとなる3rd e.p.「SPRING CAVE e.p.」をリリースし、アジア3ヶ国(台湾、香港、タイ)を含めた全12箇所のリリースツアーを開催。2019年3月20日には待望の3rdアルバム「BLUEHARLEM」のリリースが決定している。



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「幸福度が高い」と言われる北欧の国々。その文化の土台にあるのが「クラフトマンシップ」と「最先端」です。

湖や森に囲まれた、豊かな自然と共生する考え方。長い冬を楽しく過ごすための、手仕事の工夫。

かと思えば、ITをはじめとした最先端の技術開発や福祉の充実をめざした、先進的な発想。

カルチャーマガジン「Fika(フィーカ)」は、北欧からこれからの幸せな社会のヒントを見つけていきます。

スウェーデンの人々が大切にしてい「Fika」というコーヒーブレイクの時間のようにリラックスしながら、さまざまなアイデアが生まれる場所をめざします。

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