ドトール最高級ブランド「神乃珈琲」のこだわり 代表が語る40年愛

ドトール最高級ブランド「神乃珈琲」のこだわり 代表が語る40年愛

インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:鈴木渉 編集:石澤萌、川浦慧(CINRA.NET編集部)
2019/01/25
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1億3千万人いる日本人の食卓のコーヒーも変えていきたいと願っています。

—神乃珈琲は菅野さんにとってどのようなお店なのでしょうか?

菅野:「毎日使ってほしい店」というドトールのテーマとはギャップがありますが、コーヒーにまつわる美味しさの秘密や文化を包み隠さず伝える場所が神乃珈琲だと思っています。ですから、店内をスケルトン構造にして、通常だったら門外不出の焙煎工程もお見せしています。

自分にとって、ここは店舗というよりも工場。工場見学のように、コーヒーが製造される工程を見ることができて、さっき焙煎したばかりのコーヒーが飲める。定期的に少人数のコーヒー教室を開いているのも、工場が持つ教材的な側面を活用していきたいからです。そうやって、少しずつコーヒーを楽しむことを広げていって、やがては1億3千万人いる日本人の食卓のコーヒーも変えていきたいと願っています。

店内の焙煎工場の様子
店内の焙煎工場の様子

菅野:今の時代は本当にすべての流れがはやくて、コンビニで飲めるカウンターコーヒーのクオリティも日々進化しています。でも、「飲む」ということだけで完結せず、コーヒーを通して日常とはちょっと違う空間・経験をお客様にご提供することが、私たちのやってきたこと。ひいては、喫茶文化が連綿と受け継いできた使命だと思っています。

—その理念は、「ボルボ スタジオ 青山」に出店中の店舗にも通じる気がします。

菅野:最初にボルボさんからお話をいただいたとき、自分なりに「なぜ自動車のショールームにカフェが必要なのか?」と考えたんですよ。自動車はもともと馬にかわる移動・運搬の手段として登場し、そこから時代を経て、レース、娯楽や趣味、家族のための空間といった風に、さまざまな用途に使われるようになった。自動車自体の価値が多様化していったわけです。だとすると、次に求められているのは、自動車が示す新しい未来像のように思います。

例えば、車に小型のコーヒーセットがついていて高原までドライブする。到着したら、小型のガスバーナーとペットボトルの水でパッとコーヒーを点てて、高原のコーヒーを楽しむだとか。そういう風にコーヒーや自動車が物語を作ることは、次のビジョンを呼び込んでくれるのではないでしょうか。

菅野眞博

「いらっしゃいませ」と「ありがとうございました」の間に、立ち上がるストーリー

神乃珈琲で、菅野さんのおよそ40年にわたるコーヒー遍歴と愛に触れ、また特別なおもてなしを受けながら思い浮かべたのは、劇場で演じられている演劇のことだった。数十人から数千人まで規模はさまざまだが、演劇は舞台上で演じる俳優が、観客一人ひとりと結びつくことで成立するコミュニケーションについての芸術だ。菅野さんに手を引かれるようにしてコーヒーの楽しみ方や作法を学び、工場見学のように店内の焙煎作業を見る経験は、演劇に似ていないだろうか?

菅野:たしかに演劇は面白いですよね。俳優さんと観客が糸のようにつながって、作品が表現しようとしている背景を理解する。しかも5000人が一緒に見ていたとしても、私の経験は私1人のものとしてあり、まるで自分が舞台に立っているように感じられてくる。

毎日たくさんのお客様がいらっしゃるドトールも、根本は同じです。「いらっしゃいませ」とお客様をお迎えして、注文を受け、「ありがとうございました」とお送りする。たった数十秒の時間ですが、そこにもストーリーやシーンは立ち上がるはずですから。

ドトールコーヒーの取締役、神乃珈琲の代表である菅野さんは、もう1つ別の肩書きを持っている。「日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)」理事として、コーヒー文化の醸成と促進を進める活動を続けているのだ。サードウェーブ系のコーヒーが定着し、新たなスタイルのコーヒーショップが次々と開店するなかで、コーヒーの定義や淹れ方も多様化し、ときに誤った焙煎や抽出の方法が広まってしまうこともあるという。それに対し、SCAJではコーヒー文化の横軸を共有することで、コーヒーの美味しさを保つ活動を展開している。

ここにも、コーヒー文化を未来に伝え、コーヒーを通した「楽しいシーン」を立ち上げようとする菅野さん、そして日本でコーヒーを作る人々の心意気が宿っている。

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店舗情報

「ファクトリー&ラボ 神乃珈琲」

日本人による日本人のためのコーヒーを追求するファクトリー&ラボ。コーヒーの提供だけでなく、豆の買い付け、輸入、研究・開発、焙煎も行う。また、定期的に珈琲セミナーを開催。

プロフィール

菅野眞博(かんの まさひろ)

株式会社ドトールコーヒー常務取締役、株式会社プレミアムコーヒー&ティー代表取締役社長。日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)の理事、C.O.E.国際審査員、株式会社ドトール・日レスホールディングスの取締役など、様々な肩書きを持つコーヒーのスペシャリストとして知られ、テレビ出演してコーヒーのおいしい淹れ方などを披露している。

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