占星術研究家・鏡リュウジに訊く、なぜ人は占いに惹かれるのか?

占星術研究家・鏡リュウジに訊く、なぜ人は占いに惹かれるのか?

インタビュー・テキスト
夏生さえり
撮影:西田香織 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

「この世界のものは、すべてがメッセージだ」っていう考え方がいいんじゃないかなぁと。(鏡)

—えっ、あまりよくない文字なんですか……?

:でも逆に「結晶のシンボル」とも言えます。つまり、「プレッシャーは大きいけど、なにか今までにしていることを形にしていく、成果にしていく、形にしていくとき」である。だからつらいこともあるかもしれないけれど、一つひとつ形にしていきましょうと。そういう感じですね。

左から:鏡リュウジ、夏生さえり

—なるほど! ありがとうございます。ちなみに他の占いとの違いは、どういうところでしょうか? とてもシンプルな占いだなぁとは思ったのですが。

:もちろん、占い方を複雑に構築しようとする人たちもいます。ただ、シンボリズムが非常にシンプルでわかりやすいことと、北欧の神話に結びついている……ということが特徴でしょうか。

—この占いにも「世界観」があるんですよね?

:そうですね。『The Way of Wyrd』(1983年、ブライアン・ベイツ著)という本が相当影響力を持っていて……フィクションなんですけど、歴史学者・人類学者が書いた本で、昔の世界観をよく調べて、彼らが思っていたであろう精神世界を再現した本なんですよ。ちなみに推薦を書いているのが、ニコラス・ケイジなんです。

—面白そう……。ちなみに「ルーン占いは当たる!」とか「タロットのほうが当たる!」とかあるんでしょうか?

:うーん、僕は「これだけがすごい」っていうものはないと思っています。実際、コインを投げても同じだと思うんですね。

システムがすごいというよりも、松任谷由実さんの歌じゃないですけど「この世界のものは、すべてがメッセージだ」っていう考え方がいいんじゃないかなぁと。占いをして、ちょっと考えてみて、そこからメッセージを受け取ることができたらいいよねと思っています。

—すべてのことはメッセージ……。でも人によっては、占いのメッセージを深刻に受け止めすぎることも、きっとありますよね。鏡さんの立場からすると、どのように思いますか?

:昔は、そのほうがよかったんだと思いますよ。というのも、近代以前は、自分の人生を自分で決めるなんて、逆によくないとされていましたから。「傲慢だ」「大それたことだ」と考えられていたと思います。ギリシャまでさかのぼると、「自分のことは自分で」っていうのは、哲学者や自由民だけに許されたことでした。

鏡リュウジ

:それに、神様が言ったこと(占いの結果)に逆らうなんてとんでもないわけですよ。もちろん日本でも、お上のいうことに逆らうなんてできなかったし、親の決めた相手と違う人と結婚するなんてできなかったですよね。僕の親の世代はまだ「自由恋愛」っていう言葉があったくらいですからね。

でも、近代に入ってからは、「自分の人生を合理的に、自分で決定していこう」ということになりました。それは素晴らしいことです。でも、すごく自由になったけれど……自由って大変ですよね。だから凝り固まったときに、もうひとつ違う世界を持っておけるといいんじゃないか? と思うんです。

—なるほど、自由に選べる今の時代だからこそ「占い」が必要だということですね。

夏生さえり
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占いや魔法って、科学じゃないし学問じゃないし、言ってみれば「役に立たないこと」だから好きなんですよ。

—わたしは占い、大好きです。たとえば占星術であれば、「今、調子が悪いのは、わたしの行いのせいだけじゃなくて、星の動きがそうだからなんだな」って思うだけで、すごく気持ちが楽になれる。それに、「それなら無理せずにやってみよう」と前向きになれたりもします。

:僕もそういう意味で、すごく好きです。全部自分のせいにするとつらくなっちゃう。「体がこうだから」というような感じで「星がこう言っているから」という世界観を持っておくといいと思いますよ。

鏡リュウジ

:僕は、自分の職業のモデルとなる人がいなかったから、昔はすごく悩んでいたんですよね。このままでいいのかな? 自分はどうなるんだろう? って。でも、自分のホロスコープを作ったとき「太陽がほかの星と絡んでいない」ということを知りました。太陽は人生を自分で切り開いていくための基本的なエネルギー。それがいわばひとりぼっちになっている。これは生きるためのモデルがない、というイメージなんです。

それで、英国で占星術の先輩に「どうなんでしょ?」と聞いたら、「目的地なんか決めないで旅そのものを楽しめばどうですか」って言われたんですよね。終着点なんかではなく、旅の途上だってことを楽しめばいい。そういうホロスコープでしょって言われて、すごく救われたんですよね。

—そういうふうに占いで言ってもらえた言葉が、ずっと指針として残ることってありますよね。言葉ひとつで勇気が出たり、この先において背中を押してもらえたり。

:そうですね、そう思います。でも最近、「がっつき系」って僕が呼んでいるような、目先の現世利益だけをあけすけに求める占いが目立つのはちょっと残念かな......。

—どういうところがですか?

:僕の思っている占いや魔法って、科学じゃないし学問じゃないし、言ってみれば「役に立たないこと」だから好きなんですよ。そこに豊かさがあるというか、役に立たないことを楽しめるっていうのが自由ということだと思うし。

でも「がっつき系」は、「これを使って最短で成功してやろう」とか、「これを使ってより生産性を求めよう」ということなのですが、それだったら占いじゃなくてもっと他のことでいいじゃんって思っちゃって。何度もいいますが、占いって近代とは違う思考法なんですよ。音楽を例にとると、この音楽を聴いたら能率があがりますっていう話ばかりだったら嫌じゃないですか。

—たしかに。解釈を楽しんで、ときに糧にしたり、しなかったり。そういうふうに楽しめることこそが占いのよさでもあるのかもしれないですね。

:そうですね。僕はそんなふうにして占いには向き合っていってほしいと思っています。

左から:鏡リュウジ、夏生さえり
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プロフィール

鏡リュウジ(かがみ りゅうじ)

1968年、京都生まれ。占星術研究家・翻訳家。国際基督教大学卒業、同大学院修士課程修了。占星術の第一人者として、雑誌やテレビ、ラジオなど幅広いメデイアで活躍する。著書に『占星術の文化誌』『占星術の教科書』(原書房)、『タロットの秘密』(講談社現代新書)、訳書に『ユングと占星術』(青土社)など多数。英国占星術協会会員、日本トランスパーソナル学会理事、京都文教大学、平安女学院大学客員教授。

さえりさん

ライター。出版社、Web編集者を経て独立。Twitterのフォロワー数は合計18万人を突破。人の心の動きを描き出すこと、何気ない日常にストーリーを生み出すことが得意。著書に『今日は、自分を甘やかす』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。『口説き文句は決めている』(クラーケン)、『やわらかい明日をつくるノート』(大和書房)、共著に『今年の春はとびきり素敵な春にするってさっき決めた』(PHP研究所) Twitter:@N908Sa

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