占星術研究家・鏡リュウジに訊く、なぜ人は占いに惹かれるのか?

占星術研究家・鏡リュウジに訊く、なぜ人は占いに惹かれるのか?

インタビュー・テキスト
夏生さえり
撮影:西田香織 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)
左から:鏡リュウジ、夏生さえり

日本人はよく、無宗教だっていわれますけど、全くそんなことはなくて。

—先ほど、占星術が日本で流行ったのが1966年ごろというお話がありましたが、特に日本で「占い」が流行りやすい理由ってあるんでしょうか?

:うーん、どうでしょうね。他の国でも、占いは流行っていますから。でも、日本人は受け入れるのはすごく早いんですよ。それはやっぱり、日本が昔から多神教の文化だったというところも影響しているかもしれません。

欧米には、既存の一神教の世界観では満足できない人がたくさんいるんです。そういうキリスト教の世界では、異教、異端とされる人たちは、「魔女」と呼ばれたこともあったと言われます。もちろん今の時代でも「魔女」はたくさんいて、僕の友達にもいっぱいいます。

鏡リュウジ

:でも今のところ日本では、西洋的な「魔女」はほとんど存在しないですよね。だって僕たちはお守りを持つし、お月見するし、盆踊りする。じつは盆踊りなんて、魔女のサバト(集会)と同じようなものなんです。海外ではああいうものを見て、いかがわしいと禁止してきた歴史もあるけれど、日本には自然崇拝に根ざした風習が残っている。

—日本は多神教ゆえに、占いの持つ世界観にも寛大ということでしょうか。

:日本人が寛容かどうかは全く別問題ですが、まあ、占いには今のところ寛容でしょう。日本人はよく、無宗教だっていわれますけど、全くそんなことはなくて。

—一時期、みんなが“トイレの神様”を歌っているときに思いました。トイレに神様がいるということを自然に受け入れられているなんて、日本人は特殊な宗教観なんだろうなって。でも、周りの人がだいたい同じような宗教観を持っているから、主張するタイミングも必要もなく、だから「わたしは無宗教」とか思っちゃうのかもしれないですね。

夏生さえり

:全世界的に見ると、そのほうが普通なのかもしれませんよ。人間って、もともとあらゆるところにスピリットを感じる動物なんじゃないかな。それにしても占星術の象徴の普遍性というか普及力には驚かされます。たとえば僕たちはみな「曜日」を使っているでしょう? あれは占星術が起源なんです。古代のバビロニアから17世紀まで、占星術では日付と時間に7つの惑星を配当してきて、そこに意味があると思っていた。

僕は自由な仕事だから、ときどき曜日の感覚とかなくなっちゃうんですけど、銀行で働く人とか曜日の感覚がすごくしっかりしていてそれに従っていますよね。彼らのほうがよっぽど占星術の世界を生きてるなぁって思いますね。

—紐解いていくと、本当に自然と馴染んでいるものが多いんですね。

北欧にルーツを持つ「ルーン占い」を体験

—今回は北欧メディアFikaの取材でお話を伺っていますが、北欧がルーツの「ルーン占い」というものがあるんですよね?

:はい。ルーン占いは、ルーン文字を使用して行う占いですね。ルーン文字は、簡略化されたアルファベットみたいなもので、もともとは普通に文字として使われていたので、これ自体は別に神秘的なものではありません。

:でも、古くから護符や占いに用いられていたという記録もあります。長い歴史の中で伝統としては途絶えましたけど、(J・R・R・)トールキンの『指輪物語』などのファンタジー作品で取り上げられたこともあって、新たに人気が出ました。

ルーンのほかにヘブライ文字なんかもそうなんですが、表音文字であると同時に、表意文字でもあるというのが特徴です。「フェオ」という文字はアルファベットのFにあたる表音文字でありながら、「家畜」を表している表意文字である、とか。ちなみにあとから加えられたもので、「ブランクルーン」というルーン文字もあります。何の音も形も持たないもので、トランプで言えばジョーカーみたいなものでしょうか。

—この文字を使って、占いをはじめたのはいつくらいのことなんですか。

:20世紀初頭くらいだと思いますね。でも歴史はもっともっと深いはずです。古代ローマ時代に書かれたタキトゥスの『ゲルマニア』には、ローマ人がゲルマン人を支配したときに「ゲルマン人たちが木の枝に何かを刻んで書いていた」という記録が残っているんです。

でも支配者側の記録しか残っていないから、どういうふうに使われていたかということはわかっていなくて。おそらく19世紀末から20世紀にかけて、ロマン主義的な民族復興みたいなのが起こったときに、今の占いのベースができたと考えられています。

—なるほど。どういうふうに占うものなんでしょう?

:混ぜてひとつ引いてもらうだけなのですが……ちょっとだけ一緒にやってみましょうか。聞きたいことを考えながら引いてみてください。

—じゃあ「2019年のわたしの気持ち」を占ってみたいです。(袋からひとつとって)これにします。

左から:鏡リュウジ、夏生さえり

:あぁ。これは、「ハガル」という文字ですね。いろんな意味がありますが、ひとつは「氷」とか「雹(ひょう)」っていう意味なんです。だから、これ自体はあんまりよくないんですよね。

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プロフィール

鏡リュウジ(かがみ りゅうじ)

1968年、京都生まれ。占星術研究家・翻訳家。国際基督教大学卒業、同大学院修士課程修了。占星術の第一人者として、雑誌やテレビ、ラジオなど幅広いメデイアで活躍する。著書に『占星術の文化誌』『占星術の教科書』(原書房)、『タロットの秘密』(講談社現代新書)、訳書に『ユングと占星術』(青土社)など多数。英国占星術協会会員、日本トランスパーソナル学会理事、京都文教大学、平安女学院大学客員教授。

さえりさん

ライター。出版社、Web編集者を経て独立。Twitterのフォロワー数は合計18万人を突破。人の心の動きを描き出すこと、何気ない日常にストーリーを生み出すことが得意。著書に『今日は、自分を甘やかす』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。『口説き文句は決めている』(クラーケン)、『やわらかい明日をつくるノート』(大和書房)、共著に『今年の春はとびきり素敵な春にするってさっき決めた』(PHP研究所) Twitter:@N908Sa

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