世界が注目の19歳、BOY PABLO 孤独でもハッピーな音楽を作る

世界が注目の19歳、BOY PABLO 孤独でもハッピーな音楽を作る

インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:伊藤惇 通訳:安江幸子 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)
2018/12/25
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(北欧は)あまりに雨が多いし、夜も長い。だからこそ、音楽はそういう気候をやり過ごすための手段なのかも。

―『NME』のインタビューでは、「自分にとって、曲を書くことはセラピーのようなものかもしれない」と語っていましたよね。

パブロ:うん、そうだね。メロディーが頭に浮かんで、それを形にしたりプレイできないでいると、イライラすることがあったりして。みんなそれぞれ、いろんな気持ちを抱えていると思うけど、僕は自分の気持ちを、音楽を通じて外に出しているんだと思う。

BOY PABLO

―では、これまでリリースされた2作のEP『Roy Pablo』と『Soy Pablo』、それぞれの作品には、どんな自分が刻まれていると思いますか?

パブロ:そうだね……どちらも似ている作品ではあると思うんだよね。まぁ、完成度的に言うと『Roy Pablo』は人生初のEPでもあったから、いい意味で不完全だったと思うんだけど。

『Soy Pablo』では曲への取り組み方やプロダクション面で、1st EPから学んだことを活かせたから、完成度は高くなっていると思う。でも、どちらも恋愛について書いているっていう点では共通しているね。僕の歌詞には言葉以上の意味が隠れていることもあるけど、でも、できるだけストレートなラヴソングを書くようにしているんだ。

BOY PABLO『Roy Pablo』を聴く(Apple Musicはこちら

BOY PABLO『Soy Pablo』を聴く(Apple Musicはこちら

―パブロさんの出身地であるノルウェーのベルゲンは、雨が多い街だそうですね?

パブロ:うん、ものすごく雨が多いよ。

―そもそもスカンジナビアの音楽って、ダークなものだという印象があるんですよね。メタルのイメージも強かったりしますし。

パブロ:うん(笑)。

―でもパブロさんの音楽は、そういうのとはまったく違う。先ほども話していただいたように、どれだけ孤独や喪失を歌おうとも、曲自体はとても明るく、多幸感をともなった質感を持っている。そこはやはり、すごく特別な部分のような気もするんですよね。

パブロ:そうだな……やっぱり、そういう土地的な部分での反動もあるんだろうな。あまりに雨が多いし、夜も長い。だからこそ、音楽はそういう気候をやり過ごすための手段なのかも。ねえ、Young Dreamsというバンドを知ってる?

―いや、知らないです。

パブロ:チェックすべきだよ。同郷のバンドなんだけど、そのバンドのメンバーに、僕たちのEPのミキシングに参加してもらっていてね。マティアス・テレスという人なんだけど、彼も以前、「自分がハッピーな音楽を作るのは、もしかしたら気候への反動なのかも知れない」なんて話をしていたんだよね。

BOY PABLO

―“Everytime”のビデオにも、ベルゲンが少し出てきますよね。

パブロ:うん。正確には、ベルゲン郊外だけどね。とても綺麗なところだよ。僕が通っていたハイスクールがあるところなんだ。

(ベルゲンには)アフリカ音楽だけをプレイするライブハウスもあるんだ。すごくクールなことだと思うよ。

―ご両親はチリの出身ということですが、ベルゲンには外国出身の人は多いんでしょうか?

パブロ:たくさんいるよ。僕の両親は1980年代からベルゲンに住んでいるんだけど、多いのはインド、スリランカ、南米、中近東……ベルゲンはまさに「人種の坩堝」だよ。

―となると、ノルウェーの音楽もマルチカルチャーになっているのでは?

パブロ:うん。たとえば、アフリカ音楽だけをプレイするライブハウスもあるんだ。南米音楽だけがかかっているクラブとかね。すごくクールなことだと思うよ。

―ヒットチャートにもその影響は表れているのでしょうか?

パブロ:いや、チャートはノルウェーのポップミュージックが主だね。ロックも人気だけど、やっぱりポップスかな。最近は特に、SigridやAURORAというアーティストが人気だね。僕は、Sigridの音楽はけっこう好きなんだ。ラジオ向きのポップスっていう感じだけど、クールだと思う。あとは、ポスト・マローンとかカニエ・ウェストのような外国の音楽が人気かな。

ノルウェーで最も美しい街と呼ばれるオーレスン出身のアーティスト

BOY PABLO同様、ノルウェー・ベルゲン出身のアーティスト

―パブロさんの音楽にも、そうした欧米のポップスの影響はあると思いますか? 最近は特にヒップホップなんかが人気ですけど。

パブロ:うん、そういう音楽も好きでよく聴くよ。僕は、あらゆる音楽からインスピレーションを得ていると思う。

―語学的にはどうでしょう? パブロさんの曲は基本的に英語で歌詞が書かれていますし、今も英語で話してくださっていますけど、恐らく、普段使う言葉は違いますよね?

パブロ:そうだね。英語は第三言語で、第一言語がノルウェー語かな。その次がスペイン語。言いたいことを言うのは、ノルウェー語が、一番自分らしい気がする。だから、こうやって英語で自分の音楽について説明するのも、実はちょっと難しい部分もあるんだけど……。

―そうなんですね。そういった前提があったうえで、歌詞を英語で書かれているのはなぜなのでしょう?

パブロ:僕は英語の曲しか聴かないから、そっちのほうが自然なんだ。それにノルウェー語で歌詞を書くのは苦手だしね(笑)。すごく難しいんだ。ノルウェー語にすると、なんか変なんだよね(笑)。ノルウェー語で、クールな感じで歌詞を書きたかったら、詩人に近い言葉選びが必要になってくるんだよね。

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リリース情報

BOY PABLO
『Soy Pablo』(CD)

2018年12月5日(水)発売
価格:1,620円(税込)
OTCD-6579

1. Feeling Lonely / フィーリング・ロンリー
2. wtf / wtf
3. Sick Feeling / シック・フィーリング
4. t-shirt / Tシャート
5.Limitado / リミタド
6.Losing You / ルージング・ユー
7. tkm / tkm

プロフィール

Boy Pablo(ぼーい ぱぶろ)

Boy Pabloはノルウェーのベルゲン出身のシンガーソングライター、Pablo Muñozのプロジェクトだ。現在19才のPablo Muñozはチリ人の両親のもと、1999年に生まれた。10才の頃から兄の影響で音楽に興味を持ち始め、2015年12月、Boy Pabloとしての活動を開始。2016年2月にシングル「Flowers」、同年6月にシングル「Beach House」をリリース。ノルウェーのフェスティヴァルにも出演し、注目を浴びるようになる。2017年5月、まだ高校生であった前年に制作した6曲入りEP『Roy Pablo』をリリース(2018年8月に日本のみでCD化)。同EPに収録された「Everytime」のビデオが大きな注目を浴び、YouTubeで1200万回のヴューを獲得する(2018年9月現在)。2018年3月にはシングル「Losing You」をリリース。「ノルウェーからの素晴らしいインディ・ロック」とPitchforkで絶賛される。また同年の3月から4月にかけ、ヨーロッパをツアー。初めてノルウェー以外の国でライヴを行う。2018年夏の全米ツアーも成功をおさめ、10月にはUKツアーを実施。11月にはパリで行われるPitchfork Music Festivalにも出演し、その後、初来日公演も実施した。

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