レゴはなぜ愛される? 日本で唯一の認定ビルダー三井淳平に訊いた

レゴはなぜ愛される? 日本で唯一の認定ビルダー三井淳平に訊いた

インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:鈴木渉 編集:川浦慧
左から:三井淳平、今井理代

私の上司はデンマーク人で、主体的に何かを作る、それが課題を解決する材料になるということを大事にしています。(今井)

—三井さんが認定されているプロビルダーについてもお聞きしたいです。世界的に見ても限られた人数しかいないと聞きました。

三井:現在のところ16名います。イメージとしては各国に1名ずつで、市場規模の大きいアメリカのように、複数人いる地域もありますね。

今井:三井さんたちビルダーの皆さんには、弊社が大きなイベントを開催するときなどに協力していただいています。作品を制作・発表していただくだけでなく、レゴファン向けのワークショップを指導していただくこともありますね。

—プロビルダー世界一決定戦、みたいな競技会もあったりしますか?

三井:『TVチャンピオン』がそれに相当していたと思いますが、公式にはありません。というのは、レゴは競い合いの場ではなくて、自由な創作の場だからです。「俺の作品を見て欲しい!」という表現欲求を大勢が持っていて、お互いの作品のよいところを見つけ合うのがレゴなんですよ。

今井:競い合うことが目的でないという意味では、レゴは親と子どものためのコミュニケーションツールとしての役割を持っているんですよね。

—そういったレゴ社のマインドは、デンマーク固有のものとも言えるかもしれません。例えば北欧は教育面でとても先進的な地域で、抽象的なかたちを積み木に採用して想像力を育む方法を始めたのも北欧だったと聞きました。

今井:私の上司はデンマーク人で、答えを与えられるのではなく、主体的に考え、自ら定義する、自ら作り出すということが大事であるとよく話しています。そこにはデンマークの教育が土台にあると思いますし、それは弊社の社訓にも見てとれます。

「Value(価値)」「Fun(楽しさ)」「Innovation(革新)」「Caring(思いやり)」「Creative(創造性)」というふうに、シンプルな言葉だけがある。日本の企業だと「●●は■■である」という風に、文章で定義されますよね。「Fun」という言葉の意味を自分で紐解き、そしてレゴにとってのFunとは何なのかを常に考えさせられる。そういうカルチャーのある会社なんです。

今井理代

三井:レゴ社さんの考え方自体がレゴブロック的発想ですよね。つまり、1つのピースを与えるけれど、そこから作品を創造するのは、それぞれの個人の考え方に委ねられている。

今井:みんなが違う価値観を持っているのは当然で、そこで起こる違いや衝突は話し合って解決する、ということを好むんですよね。北欧のルーツが海洋文化にあって、船で航海をしていたことも関係しているかもしれません。船の中の社会では、合議制で物事が決まっていきますからね。

三井:シンプルなレゴブロックと何か別のアイデアを掛け合わせて新たな創造性を生み出すのが、レゴの大好きなところです。選択肢の豊かさ、選択のしやすさがレゴの本質にある限り、一生楽しめるんだろうなって思います。

三井淳平

—やっぱり「レゴ=人生」なんですね(笑)。

今井:LEGOって言葉の成り立ちは「よく遊べ(Play well)」という意味から来ていますから、三井さんのコメントはとても光栄です。

私たち社員も、月に1回くらいの頻度で「プレイタイム」という時間を設けているんですよ。勤務時間内に、レゴを使ってゲームをしたり、チームを組んでいろんなものを作ったりしています。例えば「デュプロを組み立ててトンネルを作って、全員がいちばん最初に通過できたチームが勝ち」というお題を与えられたとします。もしもチームメンバーにぽっちゃりした人がいたとすれば、その人も通れるような造作が必要になるし、同時に強度も求められる。そういったさまざまな課題を考えながら、私たち自身が「よく遊ぶ」んです。遊んでいないと子どもたちや世の中にレゴの創造性を提供できませんからね。

変わらずに大事にしているのは「想像力を育む」こと、そして「未来のビルダーを作る」です。(今井)

—今後、レゴはどんな未来を描いていくでしょうか?

今井:想像力を育み、子どもたちの健やかな成長をサポートできるブランドでありたい、というのは普遍的な願いです。

ただ、時代とともに子どもたちの遊び方も大きく変わっていきますから、新しい掛け合わせ方を発見し、開拓していく必要を感じています。例えばタブレットを使ってプログラミングできる「ブースト」シリーズは、2020年にプログラミングが日本の学校では必修科目になることを想定して企画されました。

左から:タブレットを使ってプログラミングできる「ブースト」シリーズ、新作の「VOLTRON」シリーズ
左から:タブレットを使ってプログラミングできる「ブースト」シリーズ、新作の「VOLTRON」シリーズ
会議室にはレゴ商品が並んでいる
会議室にはレゴ商品が並んでいる
会議室内には、デンマークと日本の時刻を示す時計があった
会議室内には、デンマークと日本の時刻を示す時計があった

—レゴ商品以外への広がりも最近の特徴ですよね。映画『レゴムービー』や『レゴバットマン ザ・ムービー』は、レゴの世界観を伝えるだけでなく、コメディーとしても素晴らしい内容でした。かなり攻めたブラックジョークも満載で(笑)。

今井:さまざまな子供たちのさまざまな興味関心がありますので、映画を接点として子どもたちに関心を持ってもらうことは重要だと考えています。それは同時に、かつてレゴで遊んだことのあるお父さんやお母さんにもレゴ体験を思い出していただくチャンスでもあります。映画シリーズのテーマが「家族」や「コミュニケーション」なのは、そういう理由なんですよ。

『レゴムービー2』特報(2019年公開予定)

三井:レゴ関係の映画に関しては「評論1本書けるぞ!」というぐらい、レゴオタクとしての視点がいっぱいあります。私の個人的な見解ですけど、レゴブロック自体の規格化された環境が、逆に複数の世界観が入り混じっても許される環境を作っていると思うんです。『レゴムービー』のなかで『指輪物語』のガンダルフと『ハリーポッター』シリーズのダンブルドアが「お前たち名前も見た目も似ていてややこしいぞ」っていじられる描写があります。もちろん、それぞれの原作でそんなクロスはできませんよね。

でも、レゴブロックであればクロスすることは現実に起こっている。だから彼らが共存している状態に違和感が生まれないのだと考えています。

—愛知県のレゴランドのように、レゴを軸にしていろんな世界を作り、そして体験することができる場所や機会がどんどん増えているのも特徴的です。親から子へと受け継がれる時間軸だけでなく、現在におけるレゴ文化の広がりの横軸も加わっています。

三井:レゴのシンプルなルール、シンプルな構造が想像力を広げていくんでしょうね。レゴブロック自体のかたちはとても単純です。でもそのシンプルさがあるからこそ、複数の世代の支持を得ていく未来を描けるのではないでしょうか。

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プロフィール

三井淳平(みつい じゅんぺい)

レゴ®認定プロビルダー(LEGO Certified Professional)/世界で16人しかいないレゴ社公認のプロのレゴ職人/マツコの知らない世界・TVチャンピオン等出演。阪急三番街・HANKYU BRICK MUSEUMで作品展示中。

今井理代(いまい まさよ)

レゴジャパン シニアブランドマーケティングマネージャー。複数のフランチャイズ(ブランド)の戦略立案からマーケティング施策立案、実施までを担当。

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