北欧サッカーの完成型スウェーデンに学ぶ、ベスト8進出への鍵

北欧サッカーの完成型スウェーデンに学ぶ、ベスト8進出への鍵

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宇野維正
編集:木村直大、山元翔一
2018/08/10
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(メイン画像:作者 Кирилл Венедиктов (soccer.ru) [CC BY-SA 3.0 GFDL, CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0) または GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html)], via Wikimedia Commons)

観客動員数約3倍、テレビ視聴者数約5倍と『オリンピック』に圧倒的な差をつける『FIFAワールドカップ』

時々間違った認識をしている人に出会うこともあるが、世界最大のスポーツイベントはもちろん夏季オリンピックではなく『FIFAワールドカップ』である。それも、僅差でワールドカップの方がデカいというレベルではない。連続して同じブラジルでおこなわれた2014年の『FIFAワールドカップ』ブラジル大会と2016年の『リオ・オリンピック』で比べると、観客動員では342万人と117万人でワールドカップがオリンピックの約3倍、全世界のテレビ視聴者数(延べ)では263億人と47億人でワールドカップがオリンピックの5倍以上と圧倒している。

まだ公式に数字は発表されていないが、今回の『FIFAワールドカップ』ロシア大会も300億人の視聴者数が見込まれていたという。今大会、筆者は全64試合中50試合ほどを視聴したので(グループリーグ最終戦は同時間帯に2試合おこなわれるので全試合の生視聴は不可能)、そこで6億分の1ほどの貢献をしたということになる。

スタジアムで観戦する、バイキングを模したコスチュームが特徴的なスウェーデンサポーター 作者 Кирилл Венедиктов (soccer.ru) [CC BY-SA 3.0 GFDL, CC BY-SA 3.0  (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0) または GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html)], via Wikimedia Commons
スタジアムで観戦する、バイキングを模したコスチュームが特徴的なスウェーデンサポーター 作者 Кирилл Венедиктов (soccer.ru) [CC BY-SA 3.0 GFDL, CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0) または GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html)], via Wikimedia Commons

2002年の日韓大会では開催国の1人のサッカーファンとして、2006年のドイツ大会ではサッカー誌の編集者として、それぞれ10試合近くスタジアムで観戦することができたが、都市ではなく国全体に開催地が散らばったワールドカップの現地観戦には長時間、長距離の移動が常に伴う。つまり、特に試合の日程が詰まったグループリーグ期間中の試合は、必然的にいくつも見逃すことになる。「大会全体をリアルタイムで楽しみ尽くすなら、エアコンの効いた部屋でのテレビ観戦に限る」ということを、今回のロシア大会でも改めて実感することとなった。もちろん、汗とお金をたれ流しながら現地で試合観戦を続けていれば、事前には想像もしてなかったような世界への知見がたくさん得られるわけだけど。

大会マスコットのザビバカ 作者 Дмитрий Садовников (soccer.ru) [CC BY-SA 3.0 GFDL, CC BY-SA 3.0  (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0) または GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html)], via Wikimedia Commons
大会マスコットのザビバカ 作者 Дмитрий Садовников (soccer.ru) [CC BY-SA 3.0 GFDL, CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0) または GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html)], via Wikimedia Commons

人口やGDPとサッカーは、まったく比例しないことを証明した小国アイスランド

始まる前から、今回のロシア大会にはワールドカップという巨大イベントの特異性が集約されていた。世界各国の人口ランキングの上から5つ(中国、インド、アメリカ、インドネシア、ブラジル)の国のうち、出場国は5位のブラジルのみ。同じく、現在GDP(国民総生産)で世界の2トップであるアメリカと中国の代表チームは予選で敗退。

その一方で、『FIFAワールドカップ』スポンサーとリージョナルスポンサー、合わせて13企業のスポンサーを国別で見ると、中国企業が7社と圧倒的にトップ。ピッチの上には中国代表もアメリカ代表もいないないのに、コカ・コーラ(FIFAパートーナー)、マクドナルド、バドワイザーといったアメリカのイメージを象徴する企業と並んで、中国企業の漢字のロゴがスタジアムの広告スペースを占めるという不思議な現象が起こっていた。

漢字の看板が印象的だったロシア大会 作者 Oleg Bkhambri (Voltmetro) [CC BY-SA 4.0  (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)], via Wikimedia Commons
漢字の看板が印象的だったロシア大会 作者 Oleg Bkhambri (Voltmetro) [CC BY-SA 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)], via Wikimedia Commons

サポーターの持つカップにはバドワイザーのロゴ 作者 Кирилл Венедиктов (soccer.ru) [CC BY-SA 3.0 GFDL, CC BY-SA 3.0  (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0) または GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html)], via Wikimedia Commons
サポーターの持つカップにはバドワイザーのロゴ 作者 Кирилл Венедиктов (soccer.ru) [CC BY-SA 3.0 GFDL, CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0) または GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html)], via Wikimedia Commons

「人口が多ければ多いほど有利」「国力が大きければ大きいほど有利」というビジネスでもスポーツでも他の領域では大体通じる(野球のようなローカルスポーツは別だが)常識のようなものが、サッカーの世界においてはまったく通じない。サッカーとはスポーツであると同時に文化であり、文化の成熟には歴史の蓄積と正しいアプローチと、さらに代表チームにおいては国全体のムードが大きく影響する。だから、サッカーは面白い。

それを真逆の側から証明していたのが、人口わずか35万人、国内にはプロリーグも存在しないのに、2016年のユーロ・フランス大会でのベスト8進出に続いて、今回のワールドカップ・ロシア大会でも初出場を果たしたアイスランドだ。欧州予選は、今大会で準優勝に輝いたクロアチアをはじめ、トルコやウクライナといった過去にワールドカップで結果を残してきた国と同グループでありながらトップで通過。本戦でも、初戦のアルゼンチン戦では追う展開からドローに持ち込むというアップセットを演じてみせた。アイスランド国内の同試合の視聴率は99.6%(と報道されたが、実際にこの数字は視聴率ではなくて同時間帯の占有率のようだ)。「試合中継を見なかったのはピッチにいた選手とロシアに渡ったサポーターだけ」と話題になった。

強国だらけのグループで健闘したアイスランド代表。アイスランドの人口(約35万人)は東京都の町田市(約43万人)よりも少ない 作者 Светлана Бекетова (https://www.soccer.ru/galery/1055463/photo/733636) [CC BY-SA 3.0 GFDL, CC BY-SA 3.0  (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0) または GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html)], via Wikimedia Commons
強国だらけのグループで健闘したアイスランド代表。アイスランドの人口(約35万人)は東京都の町田市(約43万人)よりも少ない 作者 Светлана Бекетова (https://www.soccer.ru/galery/1055463/photo/733636) [CC BY-SA 3.0 GFDL, CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0) または GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html)], via Wikimedia Commons

カウンターとセットプレー、中でもロングスローを武器とするアイスランド代表のサッカーは、2015-16シーズンのプレミアリーグを制したクラブチーム、レスター・シティを思わせる、典型的な下克上サッカー。実際にアイスランドの主なスターティングメンバーは、エバートンのシグルドソン、バーンリーのグドムソン、カーディフのグンナールソン、ブリストル・シティのマグヌソン、アストン・ビラのビャルナソン、レディングのバーバソンと、プレミアリーグ中堅~下位クラブやイングランド2部に所属しているプレーヤーが軸となっていた。

「国内にプロリーグが存在しない」ということは、つまりサッカーで生活していくならば国外の環境に飛び込むしか選択肢がないことを意味する。アイスランド代表の闘志むき出しのプレースタイルは、日常的に国外のリーグで激しいコンペティションに晒されているプレーヤーたちあってのものだ。続くナイジェリア戦、クロアチア戦では僅差ながら敗戦を喫し、結果的にワールドカップ初勝利はお預けとなってしまったが、アイスランドとまったく関係のない試合でも他国サポーターがアイスランドサポーターお約束のバイキングクラップを真似るという現象が各スタジアムで発生するなど、小国ながら大会全体に大きなインパクトを刻んだ。

作者 Светлана Бекетова (https://www.soccer.ru/galery/1055463/photo/733626) [CC BY-SA 3.0 GFDL, CC BY-SA 3.0  (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0), GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html) または CC BY-SA 3.0  (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], via Wikimedia Commons
作者 Светлана Бекетова (https://www.soccer.ru/galery/1055463/photo/733626) [CC BY-SA 3.0 GFDL, CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0), GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html) または CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], via Wikimedia Commons

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