フィンランドの奇祭にならい、日本の「おかしな祭り」を考えた

フィンランドの奇祭にならい、日本の「おかしな祭り」を考えた

テキスト・撮影
大北栄人
編集:高橋直貴、原里実 トップ画像提供:Visit Finland
2018/06/08
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フィンランドあるある本を翻訳した人、唐突に祭りの相談をされる

—シャイだけどお祭り好き、シンプルを大事にする、厳しい環境からくるPRの上手さや、自虐的ユーモア……よくわかりました。まさかフィンランドの人もこんな遠くから冷静な分析をされるとは思ってなかったと思います(笑)。じつは今回フィンランドの「へんなお祭り」みたいなものを自分たちでもやってみたいという思いがありまして。そこで、フィンランド人って結局どういうことをやってるのかなと分析してみたんです。

そしたら要素は2つあって、まず地元の文化に根ざしたものであること。『携帯電話投げ選手権』は地元の携帯電話会社があってのことだし、『ベリー摘み』も地元でとれるベリーが起点ですよね。もう一つは生活のなかでちょっとおもしろいなと思っていること。エアギターやテーブルドラムがそれにあたりますね。

そこで日本文化を世界選手権化するなら何かと考えた結果、お茶じゃないかと。お茶室の足のしびれじゃないかと。これ見てください。実際にやってみたんです。

柳澤:えっ、なんですか? もうやってきたんですか? お祭りを?

本の翻訳しただけなのにお祭りの相談をされる柳澤さん。右が筆者です。
本の翻訳しただけなのにお祭りの相談をされる柳澤さん。右が筆者です。

しびれた足で全力ダッシュ! 『お茶室30分正座後15メートル走』

—今回は『お茶室30分正座後15メートル走』というものを考えました。30分間正座したあとに15メートル走って、そのタイムを競います。お茶の世界を通じて精神世界に没入したあと、そこからいかに早く戻れるかが鍵ですね。

目の前に茶碗を置いて30分正座する。選手は俳優の宮部純子さん。小劇場界隈でご活躍中です。
目の前に茶碗を置いて30分正座する。選手は俳優の宮部純子さん。小劇場界隈でご活躍中です。

柳澤:えっ? これすごくいいじゃないですか(笑)。わ、しかも実際にやってるんですね。いい、いい。お茶なら世界の人にもすごく興味を持ってもらえそう。

20分あたりから足がしびれてくる。ここから全力で15メートル走をする。
20分あたりから足がしびれてくる。ここから全力で15メートル走をする。

宮部純子さん

—ただこれには少し問題があってですね。動画を見てもらえればわかるんですが……。

『お茶室30分正座後15メートル走世界選手権』(宮部)

選手「あっ、いけるいける!」。いけてしまったのだ。
選手「あっ、いけるいける!」。いけてしまったのだ。

—30分くらいして感覚がなくなってくるんですが、それでも走れてしまうんですね。本気で走れなくさせようと思ったら、1時間や2時間正座させないといけないかもしれない。ただこれ、ものすごく暇ですし、競技として選手一人にそんなに時間かけていられないですよね。

筆者も体験したがものすごく暇だった。天気がよくてよかった。色々なことを考えた。30分後にはやっぱりふつうに走れてしまった。
筆者も体験したがものすごく暇だった。天気がよくてよかった。色々なことを考えた。30分後にはやっぱりふつうに走れてしまった。

柳澤:時間がかかるんだ(笑)。でもいまお茶や禅のことに興味を持っている人はすごく多いですし、正座の時間は禅について考えるとかにすればみんな来てくれると思います。たしかフィンランドのファブリックメーカーのマリメッコも、お茶室をデザインしてましたよ。

共感の世界記録! 『相槌選手権』

—あとはもう少し他の日本らしいものも考えまして。『相槌世界選手権』というものなんですけど、日本人の会話って相槌が多いらしいんです。それならいっそどれだけ多く相槌を打てるかやってみようと。だれかの話に重ならないようにして相槌の数を競う選手権です。

スマホを持って原稿を読む人の邪魔をしないように相槌を打つ。それをカウントする。
スマホを持って原稿を読む人の邪魔をしないように相槌を打つ。それをカウントする。

柳澤:えっ? ほんとにやってもらったんですか? やってるフリじゃなくて?

動画を見てもらうと「相槌打ちすぎだろ」感がよく伝わるかもしれない

柳澤:相槌めっちゃ打ってますね!

—としかいいようがないですよね。ただ、動画を見てもらうとわかるんですが、差がなかなか出にくいシビアな競技だということも判明し……ちょっと地味ですよね。

相槌世界選手権を2人でやってみた。ここにはめちゃくちゃ納得してる2人がいる……。

柳澤:たしかに地味ですけど、フィンランドの祭りもやってることは地味ですよ。長靴投げ選手権とか見ましたけど、砲丸投げみたいに投げているだけなので(笑)。やってる時間はみんな淡々としてます。それで終わったあとにみんなで楽しむ。

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プロフィール

柳澤はるか(やなぎさわ はるか)

ライター、翻訳家。1985年生まれ、東京大学文学部卒。文化、コミュニケーション、ジェンダー、教育、働き方などを題材に、日本と北欧について取材記事やコラムを執筆。翻訳書に『マッティは今日も憂鬱 フィンランド人の不思議』『マッティ、旅に出る。』(方丈社)。フィンランドの「シス」の秘密に迫るノンフィクション、『Finding SISU』(原題)日本語版を、2018年初秋に方丈社より発売予定。

大北栄人(おおきた しげと)

ウェブのライター、コントのユニット「明日のアー」の主宰。映像作品で『したコメ大賞2017グランプリ』受賞。アーは恥ずかしいことを思い出して出るうめき声のこと。いましてることはすべて明日のアーであるという自覚がある。

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