フィンランドの奇祭にならい、日本の「おかしな祭り」を考えた

フィンランドの奇祭にならい、日本の「おかしな祭り」を考えた

テキスト・撮影
大北栄人
編集:高橋直貴、原里実 トップ画像提供:Visit Finland
2018/06/08
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シャイなのに、サウナのなかではおしゃべりだしお祭りでもめっちゃ明るい

—柳澤さんから見ても、「へんなお祭りやってるな~」という感覚はありますか?

柳澤:あります、あります。たとえば、みんなでビールを持って川でボートに乗り込もうぜっていう、『ビールフローティング』というお祭りがあるんです。ペットを乗せてる人もいればソーセージを焼いてる人たちもいて、心から楽しそう。子どもの遊びを大人でも無邪気に楽しむピュアな一面はあるかなと思います。

—フィンランドの人はそもそもお祭り好きなんですか?

柳澤:私の印象では、普段シャイなのにお祭りのときはめっちゃ明るい。「あれ? どうしたの?」ってくらい(笑)。サウナのなかでもみんなおしゃべりになるんです。解放する場所があるんですね。淡々とした日常があって、たまにお祭りみたいな日がある。日本と似てるんじゃないですかね。

絵本のなかの1ページ「どんなにシャイなフィンランド人も サウナでは、ちょっとおしゃべりに」
絵本のなかの1ページ「どんなにシャイなフィンランド人も サウナでは、ちょっとおしゃべりに」

柳澤:あとはシンプルであることを大事にする、北欧的な考え方もありますね。お金をかけないと楽しめない、みたいな消費主義とは逆に、「いつまでも雪が降る、だったら森のなかでクロスカントリーすれば楽しいんじゃない?」とか。身近な楽しみを見つけるのが上手な人たちだなと思いますね。『ビールフローティング』にしても、そこに川があればできる単純な遊び。だけど「あ、それやっちゃうんだ」っていう遊び心がある。

厳しい環境が育てた自虐的なユーモア

柳澤:環境によるものもあると思います。たとえば私がおもしろいと思うのが、『ポーラーベアピッチング』っていうイベント。海が凍っちゃうくらい寒い冬に、バルト海の氷をくりぬいて。スタートアップの会社の人が、冷たい水のなかに入っている間だけ自社のことをプレゼンできるイベントなんです。

柳澤:逆境というか、観光客も来にくい寒さの厳しい環境で、「じゃあいっそのことそれを生かしておもしろいことをやっちゃおう」という姿勢は、イノベーティブですごいなと思います。

—すごい! 日本の「熱湯コマーシャル」(1983年から1999年にかけて放送されていたバラエティー番組『スーパーJOCKEY』のなかのコーナー。熱湯の湯船に浸かっている時間だけ宣伝ができた)の逆ですね。

柳澤:違うのは、そこに外国の人も参加しているということ。たとえばどろんこサッカーにしても、似たような大会は日本にもあります。でも日本の場合、世界大会とうたっているのに、ウェブサイトは日本語だけなんていうことも。フィンランド人はその点、英語でPRするのが上手いです。

フィンランドの人口は550万人。小さな国として世界にアピールしていかなきゃという意識が高いんですね。私が翻訳した『マッティは今日も憂鬱』も、もともと英語で書かれたブログをもとにしているので、それもあって、SNSで広く海外にも広まりました。

観光局のオフィシャルウェブサイトでも、みずから積極的に「私たちってちょっとへんなんです」と、おちゃめな面をPRしています。そういう自虐的なユーモアも上手ですね。たとえば「とってもフィンランド的な問題」というTwitterアカウントでは、「フィンランドってこんなに寒くてやんなっちゃうぜ」みたいな自虐ネタをひたすら投稿しています。

「暑くなってきたら、雪について空想し始める」

柳澤:『マッティは今日も憂鬱』でも、「おれたちこんなに口下手です」とか、フィンランドの人を自虐的に描いた場面があります。日本にも自虐や謙遜の文化があるので、理解しやすいのではないでしょうか。

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プロフィール

柳澤はるか(やなぎさわ はるか)

ライター、翻訳家。1985年生まれ、東京大学文学部卒。文化、コミュニケーション、ジェンダー、教育、働き方などを題材に、日本と北欧について取材記事やコラムを執筆。翻訳書に『マッティは今日も憂鬱 フィンランド人の不思議』『マッティ、旅に出る。』(方丈社)。フィンランドの「シス」の秘密に迫るノンフィクション、『Finding SISU』(原題)日本語版を、2018年初秋に方丈社より発売予定。

大北栄人(おおきた しげと)

ウェブのライター、コントのユニット「明日のアー」の主宰。映像作品で『したコメ大賞2017グランプリ』受賞。アーは恥ずかしいことを思い出して出るうめき声のこと。いましてることはすべて明日のアーであるという自覚がある。

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