楽天の異端者。仲山進也は、組織のレールを外れても楽しく働く

楽天の異端者。仲山進也は、組織のレールを外れても楽しく働く

テキスト
唐川靖弘
写真:高橋直貴 編集:木村健太

フリーでも働けるのに、組織に所属する理由

—あらためてうかがいますが、組織のしがらみに関係なく自由に働けるようになってもなお、仲山さんが楽天という会社に属しているのには、なにか理由があるのでしょうか?

仲山:僕が入社したときから楽天市場が掲げている、「日本の中小企業を元気に」というコンセプトが大好きで。実際にその手応えを感じられるのが何より楽しいんです。

楽天大学でご一緒した店舗さんのなかに、60歳を超えてネットショップへの挑戦を決めた店長さんがいました。自分の代でお店を畳もうと決めていたそうなのですが、「一本指打法」でパソコンと格闘しながらサイトを作成して、わからないことがあると、上京して就職した息子さんに電話をしてパソコンの操作方法を聞いて、と熱心に頑張っていたんです。

その後、売り上げが伸びた結果、息子さんが家業を継ぎに戻ってくることになりました。息子さん曰く、「電話がかかってくるたびに、親父がどんどん楽しそうになっていくのを感じて、継ごうと決めた」と。このように、全国各地の中小企業やお店の商売、そしてそこで働く人がどんどん魅力的になっていく過程に伴走させてもらえるのは、何よりの喜びです。

仲山進也

—それは良いエピソードですね。具体的に、会社の仕事と個人の仕事は、どのように切り分けているのですか?

仲山:よく聞かれるのですが、実際のところ、すべてがつながっていて切り分けられないんです。

たとえば、岐阜県庁さんと行った県内のネットショップ支援事業は、もともと個人の仕事として始めました。それがすごく盛り上がったことで、楽天の同僚から「佐賀と宮崎でもやるから手伝って」と言われて、会社の仕事になったんです。だから、個人も会社も、やっていること自体は一緒ですね。

ただ、組織が大きくなると、部署間の調整などが必要になり、新しいことが始めにくくなります。なので、面白そうなことは個人として始めて、軌道に乗ったら会社でやる、という使い分けをしています。小さく始めておいて、事業としての広がりは組織的にやったほうが得られるので、いいとこ取りをしようと。

立場の使い分けができることで、「こんなことできたら面白いですね」となったときに「やりましょう」と即決できる。「持ち帰って検討します」と言わずに済むのはとても大きいです。

—なるほど。新しいアイデアを自由にかたちにするスピード感と、組織による力強い推進力を融合させた、イノベーションを起こすための理想的なかたちとも言えますね。とはいえ、いまの仲山さんの働き方だけを見て「自由で楽しそうだな。どうやったら仲山さんみたいになれますか」と安易な最短ルートばかりを探されても困りますね(笑)。

仲山:レールから外れたことを活かそうと試行錯誤した結果なので、「うろうろアリになるレールはどこにあるか教えてください」と言われると困ります(笑)。

物事って、螺旋状に進んでいくものだと思うんです。ゴールを目指して直線的に走るのが早いように思えるけれど、現実は螺旋状にカーブしているから、直線で走るとコースアウトして遠回りになってしまう。螺旋の真ん中に軸があるとしたら、それを片手でぐっと掴んだままぐんぐん前に進んでいけば、それは自然と螺旋状に駆け登る最短の道のりになります。その真ん中の軸が自分にとっての価値観であり、それをブレさせないことが大事かなと思っています。

「日本の中小企業を元気にする」という思いを実現するために、組織の垣根もしなやかに飛び越え、自分にしか提供できない価値をつくり続けている仲山さん。

インタビュー中にも出てきましたが、ご自身の「うろうろアリ」的働き方を「ムーミン」のスナフキンに例えて、「ムーミン谷をホームグラウンドにしながらも、自由気ままに世界を旅して、旅先の村で焚き火を囲んで村人たちと語り合ううちに、何だかわだかまっていた村人たちを自然にチームビルディングしてしまう、みたいな。そんな仕事をしているのかも(笑)」とユニークに表現してくれました。

楽天という大企業の際で活躍する仲山さんの姿は、まさにうろうろアリとしてのplayfulな遊びゴコロに満ちていました。

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書籍情報

『組織にいながら、自由に働く。仕事の不安が「夢中」に変わる「加減乗除(+−×÷)の法則」』
『組織にいながら、自由に働く。仕事の不安が「夢中」に変わる「加減乗除(+−×÷)の法則」』

著者:仲山進也
価格:1,620円(税込)
発行:日本能率協会マネジメントセンター

プロフィール

仲山進也(なかやま しんや)

北海道生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。シャープ株式会社を経て、1999年に社員約20名の楽天株式会社へ移籍。2000年に「楽天大学」を設立し、Eコマースのみならず、チームづくりや理念づくりどの講座を提供。2007年に楽天で唯一のフェロー風正社員(兼業自由・勤怠自由の正社員)となり、2008年には仲山考材株式会社を設立。著書に『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則』、『あのお店はなぜ消耗戦を抜け出せたのか』などがある。

唐川靖弘(からかわ やすひろ)

1975年広島県生まれ。外資系企業のコンサルタント、戦略プランニングディレクターを経て、2012年から米国コーネル大学ジョンソン経営大学院 Center for Sustainable Global Enterpriseマネージングディレクターとして、多国籍企業による新規ビジネス開発プロジェクトや新市場開拓プロジェクトをリード。自身のイノベーションファームEdgeBridge LLCを拠点に、企業の戦略顧問や人材育成プログラムディレクター、大学の客員講師としても活動。フランスの経営大学院INSEADにおいて臨床組織心理学を研究中。

連載『イノベーションを生む「うろうろアリ」の働き方』

変化のスピード増す現代において、既存の価値観や会社という枠組みに囚われないない「うろうろアリ」こそがイノベーションをリードする。自由な発想で新たな価値を生み出し続ける彼らの、最先端の働き方を紹介するインタビュー連載です。

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