楽天の異端者。仲山進也は、組織のレールを外れても楽しく働く

楽天の異端者。仲山進也は、組織のレールを外れても楽しく働く

テキスト
唐川靖弘
写真:高橋直貴 編集:木村健太

「『組織のレールから外れたらゲームオーバー』なんてことはない」

—その自由な働き方も、仲山さんだからこそ発揮できる価値があって認められていることだと思います。

仲山:僕が一貫して心がけてきたのは、店舗さん同士の横のつながりをつくることです。新しい仕事で、まだ世間に理解者が少ないネットショップの店長業は、孤独な闘いになりがちなので、話し相手や切磋琢磨する仲間ができると劇的に伸びていく人が多いんです。

─それが最初におっしゃった「一緒に遊ぶ係」のひとつでもあったわけですね。顧客同士のコミュニティづくりとは、まさに組織の中心にいるだけでは見えない、「うろうろアリ」としての新しい価値だったのではないでしょうか?

唐川靖弘(EdgeBridge LLC代表取締役 / うろうろアリ・インキュベーター)
唐川靖弘(EdgeBridge LLC代表取締役 / うろうろアリ・インキュベーター)

仲山:たしかに、「店舗さんの横のつながりをつくる」という指標を持って働いている人は社内にいません。目に見えて利益につながるというものではないので、「はたらきアリ」の人にとっては仕事をサボって遊んでいるようにしか見えないかもしれませんね。

—先ほど、「マネージャー白旗宣言」をしたとおっしゃいましたが、「自分にはできません」と白旗をあげ、誰もが目指すであろう「組織の中央」から「際」に移るのはとても勇気がいるというか、実際には簡単ではない気がしますが……。

仲山:マネジメントが何をすることなのかもわからない状態でしたし、会議や調整や管理で一日が終わってしまって、新しい講座づくりのような価値創造ができないことが気持ち悪かったんです。役職に縛られてモヤモヤした時間をガマンして出世するより、お客さんに喜んでもらえることをやるほうが自分も楽しいし、結果的に会社の役にも立てるのではないかと思ったんです。

─組織には貢献するけれど、その前提として、個人の持つ力を最大化することがベースになっている。まさに「うろうろアリ」的な発想のように思います。

仲山:組織のレールから外れたことがない人は、「レールから外れるとゲームオーバー」みたいに思っていることが多い気がするのですが、実際に外れてみるとそんなことはありません。世の中にはレール以外にも道路というものもあるし、車というものをゲットすると列車と同じくらいのスピードで動ける。レール上の駅がないところにだって、じつは自由に行けちゃうことを知ってしまった、という感じです(笑)。

「子どもが憧れる、夢中で仕事をする大人を増やしたい」

—兼業自由・勤怠自由になった翌年の2008年には、ご自身の会社「仲山考材」を設立されています。そのように、精力的に活躍の場を広げていくモチベーションの源泉は、いったい何なのでしょう?

仲山:個人的には、「子どもが憧れる、夢中で仕事をする大人を増やしたい」という想いで活動しています。たとえば、小学校の卒業文集で将来はイチロー選手や本田圭佑選手みたいになりたいと書かれるのと同じように、「近所の花屋のおじさんみたいになりたい」って書かれるような大人がそこかしこに増えていったら、日本はもっともっと面白くなると思っています。

仲山進也

─ご自身は、どんな子どもだったのですか?

仲山:小学生の頃は、漫画『キャプテン翼』の影響で、放課後はいつも友達と集まってサッカーをやっていました。2チームに分かれて試合をするのですが、点差がつきすぎると、負けているチームの人がやる気をなくして帰っちゃうかもしれない。みんなが「あー、楽しかった。明日も来よう」と思えるように、強さのバランスを丁度よくしたり、チーム替えのタイミングを図ったりしていました。みんなに楽しんでもらえれば、自分も長く楽しめる、と考えていたんです。

─僕が掲げている「うろうろアリの10箇条」に、「はたらきアリは『相手に勝つ競争』を目指す 。うろうろアリは『相手と創る共創』を目指す」というのがあります。仲山さんは、子ども時代からすでに当てはまっていたんですね。話は変わりますが、何か、これまでにしてしまった大きな失敗はありますか?

仲山:うーん……そもそも「なにが成功か」を定義しないと、自分の体験のどれが失敗かがわからないですよね。「成功するまでやれば何事も失敗にはならない」という言葉もありますけど、いまの時代は正解がよくわからない。だから、「試行錯誤をいかに上手く続けられるか」という姿勢が大事かなと。

—たしかに。成功したように見えていても、それはある基準から見ただけの一瞬のまやかしのようなもので、本質的には何も成し得ていない、ということもありますよね。

仲山:以前、楽天市場の出店店舗のインタビュー記事をつくる仕事をしていたのですが、店舗さんの好事例を紹介する際には、「成功店舗」ではなく「頑張っている店舗」と現在進行形の表現をつかうようにしていました。

「自分は成功者だ」と天狗になった人って、たいてい3年後くらいに苦しくなるんです。そういう姿をたくさん見てきました。たとえ大きな結果を出していたとしても、その手法に甘んじることなく、試行錯誤を続けられる人こそが、楽しみながら商売を長続きさせられると思うんです。

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書籍情報

『組織にいながら、自由に働く。仕事の不安が「夢中」に変わる「加減乗除(+−×÷)の法則」』
『組織にいながら、自由に働く。仕事の不安が「夢中」に変わる「加減乗除(+−×÷)の法則」』

著者:仲山進也
価格:1,620円(税込)
発行:日本能率協会マネジメントセンター

プロフィール

仲山進也(なかやま しんや)

北海道生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。シャープ株式会社を経て、1999年に社員約20名の楽天株式会社へ移籍。2000年に「楽天大学」を設立し、Eコマースのみならず、チームづくりや理念づくりどの講座を提供。2007年に楽天で唯一のフェロー風正社員(兼業自由・勤怠自由の正社員)となり、2008年には仲山考材株式会社を設立。著書に『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則』、『あのお店はなぜ消耗戦を抜け出せたのか』などがある。

唐川靖弘(からかわ やすひろ)

1975年広島県生まれ。外資系企業のコンサルタント、戦略プランニングディレクターを経て、2012年から米国コーネル大学ジョンソン経営大学院 Center for Sustainable Global Enterpriseマネージングディレクターとして、多国籍企業による新規ビジネス開発プロジェクトや新市場開拓プロジェクトをリード。自身のイノベーションファームEdgeBridge LLCを拠点に、企業の戦略顧問や人材育成プログラムディレクター、大学の客員講師としても活動。フランスの経営大学院INSEADにおいて臨床組織心理学を研究中。

連載『イノベーションを生む「うろうろアリ」の働き方』

変化のスピード増す現代において、既存の価値観や会社という枠組みに囚われないない「うろうろアリ」こそがイノベーションをリードする。自由な発想で新たな価値を生み出し続ける彼らの、最先端の働き方を紹介するインタビュー連載です。

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