Iceageインタビュー 世界幸福度3位の国で生まれたパンクの背景

Iceageインタビュー 世界幸福度3位の国で生まれたパンクの背景

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:Kana Tarumi 編集:山元翔一
2018/05/07
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ただアルバムを作るだけじゃダメなんだよ。(エリアス)

—では、ここからは新作『Beyondless』について訊かせてください。前作からは3年半という期間が空いていて、その間はエリアスのMarching Churchをはじめとした個々の活動もあったと思うのですが、生活と音楽の関係を見つめ直す期間でもあったのではないかと思います。そのあたりはいかがでしょうか?

ヤコブ:それまでにやってきたことを振り返りはしたけど、立ち止まっていたわけではない気がするな。ずいぶん長い間やってきたから休みは必要だったけど、振り返るために休んだわけじゃないんだ。

エリアス:別に解散していたわけじゃないしね。前作から進歩した作品ができるくらいのクリエイティブな衝動やビジョンが生まれるまで待つ必要があっただけなんだ。ただアルバムを作るだけじゃダメなんだよ。何かしら意義がないとね。これまでずっと根詰めてやってきたから、少し間を置いて、そういう野心がまた生まれるようにしたかったんだ。

エリアス
エリアス

Iceage『Beyondless』(2018年)収録曲

—では、実際にアルバムを制作するにあたっては、どのようなビジョンがありましたか?

エリアス:ビジョンといっても最初に生まれるのは、ほんの小さなアイデア。それをベースに組み立てていったんだけど、制作に入り込んでいるときは、あまり全体像は見えないんだ。終盤になってやっと、一歩離れたところから「さて、今何をやっているんだろう?」みたいに全体を見ることができるというか。だから、作っているときは直感に導かれているような感じで、細かく分析してから作ったり、考えを突き詰めて作ったわけじゃない。「このアイデアをどこかに向かわせたい」という衝動からできているんだ。

—“Pain Killer”にはスカイ・フェレイラが参加していて、彼女はMarching Churchのビデオの監督をしていたり、エリアスとはつながりがあったのかと思いますが、今回どのような経緯で参加することになったのでしょうか?

エリアス:あの曲にもうひとつ誰かの声があったらいいなと思った、それもできれば女性の声が。それで、最初に話を持ちかけたのが彼女だった。ロサンゼルスのレコーディングスタジオで出会ったんだけど、「イエス」と言ってくれたよ。彼女の歌声が入ったことでワンランク上の楽曲が生まれたのは幸運だったね。

Iceage『Beyondless』(2018年)収録曲

—彼女の表現や精神性に対する共感も大きかったと言えますか?

エリアス:それよりも、まずは誰の声なら自分が思い描いたとおりのイメージになるのかなと考えてね。彼女は一人の人間としても素晴らしいし、あんなふうに声を使える人は他にいない。曲のなかでの自分の役割を彼女なりに解釈してくれたんだけど、それが俺の望んでいたものにぴったりだったんだ。純粋な力のないミュージシャンとは、それが誰であっても共演したいとは思わない。曲に何かしらパワーをもたらしてくれる人がよかったんだ。

僕たちが音楽を作るのは、それしかやり方を知らないから。(ヤコブ)

—今日は最初に結成当時のことを話してもらいましたが、当時と今とでは音楽に向かうモチベーションに変化があると言えますか?

ヤコブ:僕たちが音楽を作るのは、それしかやり方を知らないから。つまり、音楽を作るということが、まだ僕たちにとって理にかなっているってことなんじゃないかな。

左から:ヤコブ、エリアス、ダン、ヨハン
左から:ヤコブ、エリアス、ダン、ヨハン

エリアス:シンプルな言い方だけど、確かにそうだね。今も昔と変わらない衝動から音楽を作っている。だけど、今の俺たちは好きだからやっていることを自覚しているし、何か新しい発見をすることで心が満たされることも認識しているんだ。それが次の新しい発見につながっていく。もしかしたら、俺たちは最初どうしてバンドをやっているのか自分たちでも理解していなかったのかもしれないけど、今はわかる。

—コペンハーゲンのシーンについてもお伺いしましたが、地元に対する愛情はもちろんあった上で、音楽を作ることによって、物理的にも精神的にも、土地に縛られずに、より自由になれるという側面も大きいかと思うんです。

エリアス:旅をするミュージシャンでいることによって、同じ場所にずっといると、気が休まらなくなってはいるね。移動続きの生活に慣れてしまったんだろうけど(笑)。

—『Beyondless』というタイトルは、そういう物理的な場所とか距離と関係しているタイトルなのでしょうか?

エリアス:これはサミュエル・ベケットの詩からの引用なんだ。もともとは存在しない言葉なんだけど、しっくりきたんだよね。「beyond + less = 超越するものがない」ということで、意味合い的にもいいと思った。もともとはただの曲名で、これ以上ないってくらい迷ってしまって、何も超えることもできないという状況、つまり、裏を返せばすべてに手が届くという状況を歌った楽曲だった。それに、単語そのものを見てみても、字面的にいいと思ったんだよね。アルバム全体をまとめるのにもいい言葉だなと思ったんだ。

Iceage『Beyondless』ジャケット
Iceage『Beyondless』ジャケット(Amazonで見る

—実際に、これ以上ないくらいに迷ったとき、コペンハーゲンという場所が今でもあなたたちの拠り所になっていると言えますか?

ヤコブ:そうだね。音楽シーン的には変わったって言ったけど、でもそれ以外は何もかもが前と同じだからね。馴染みのある場所に行くと誰かがいて、「元気?」と声をかけてくれる。友達も家族もいるし、いい拠点なんだ。根詰めて働いたあとに戻るのには最高の場所だよ。

左から:ヤコブ、エリアス、ダン、ヨハン
左から:ヤコブ、エリアス、ダン、ヨハン

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リリース情報

Iceage『Beyondless』
Iceage
『Beyondless』(CD)

2018年5月4日(金)発売
価格:2,376円(税込)

1. Hurrah
2. Pain Killer
3. Under the sun
4. The day the music dies
5. Plead the fifth
6. Catch it
7. Thieves like us
8. Take it all
9. Showtime
10. Beyondless
11. Broken hours [Bonus Track for Japan]

プロフィール

Iceage
Iceage(あいすえいじ)

2008年にデンマークはコペンハーゲンで結成された4人組ロックバンド。2011年のデビューアルバム『New Brigade』が ピッチフォークで「Best New Music」(8.4点)を獲得、多数の年間ベストに選出された。2012年には単独公演と『Summer Sonic』出演で2度の来日を果たした。2013年、米名門レーベル「Matador」に移籍し2作目『You're Nothing 』を発表。数々のメディアで高く評価された。2014年10月に3作目『Plowing Into the Field of Love 』をリリース。2018年5月4日、4thアルバム『Beyondless』をリリースした。

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