アヴィーチー、享年28。伝説の終わりはあまりに早すぎた

アヴィーチー、享年28。伝説の終わりはあまりに早すぎた

テキスト
宇野維正
編集:山元翔一

アヴィーチーの本質は、「EDMの人気DJ」という言葉では表せない

アヴィーチーがEDMのシーンにおいて突出してメロディアスな「歌モノ」の楽曲を数多く残してきたことから、彼をスウェーデンのポピュラーミュージック史に位置づけることも可能だろう。1970年代のABBA、1980年代のRoxette、1990年代のAce of BaseやThe Cardigans。スウェーデンの音楽界は、これまで周期的に世界中から愛されるポップアクトをいくつも生み出してきた。ダンスミュージックが現代のポップミュージックのメインストリームであるとするならば、アヴィーチーのような音楽家がスウェーデンに現れたのはひとつの必然でもあったとも言える。

アヴィーチー『Stories』収録曲

コカ・コーラの全世界CMソングに起用された楽曲“Taste The Feeling”(2016年)を聴く(Spotifyを開く

実際、ここ日本でも近年の洋楽をめぐる環境においては異例なほど幅広い層、それも10~20代を中心とする若い層からアヴィーチーの音楽が愛されてきたのには、その親しみやすいメロディーと、英語を母国語としないミュージシャンならではのわかりやすい英語で歌われた、人生を祝福する力強いメッセージの力が大きかったのではないか。もちろんそのメロディーと歌詞を引き立たせていたのは、極端に音数を削ってもグルーヴを失わない研ぎ澄まされた音楽家としてのセンスとスキルだったわけだが、彼を紹介する際にその訃報にまでつきまとってきた、「EDMの人気DJ」という枕詞からはみ出す場所にこそ、アヴィーチーの音楽の本質はあったと思う。

アヴィーチー『Avīci (01)』収録曲

本当のところは誰にもわからない。だが、伝説の終わりはあまりに早すぎた

アヴィーチーの突然の死を伝える第一報からしばらくして、彼の遺族からのメッセージが公表され、そこではその死が自殺であったことが遠回しに表現されていた。各メディアの続報のなかには、彼が死の直前まで新作の準備を精力的に進めていたことを伝えるものもあれば、自殺した際の状況の詳細について伝えるものもあった。それらの情報は、いずれもそれなりに信憑性のあるものではあったが、本当のところは誰にもわからない。

アヴィーチーがこの世を去る約1ヶ月前、Instagramに投稿された写真
アヴィーチーがこの世を去る約1ヶ月前、Instagramに投稿された写真(Instagramを見る

アヴィーチーのファンは、彼が活動初期から健康問題を抱えていて、そこに終わりのないハードなワールドツアーが起因となったアルコール過剰摂取の問題も加わり、公演のキャンセルを繰り返すなど、しばしば深刻なコンディションに陥ってきたことを知っていた。だからこそ、2016年に彼がツアー活動からの引退を発表したときも、その決断を惜しむ声はあっても、責めたり咎めたりするような声は皆無だった。それなのにーー。

アヴィーチーのプレイと作品がこれまで残してきた、地域やシーンや一時的なブームなどをすべて超越した、後にも先にも誰も似た者がいない音楽家としての足跡は、もし彼が28歳の若さで亡くならなかったとしても、もう十分に伝説と言えるものだった。今はただ、その伝説の早すぎる終わりを悲しむしかない。

Awesome video of Japan. Thank you guys once again!! Directed by @levantsik

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Aviciiが最初で最後の来日公演を行なった際に投稿されたドキュメントムービー
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プロフィール

Avicii(あゔぃーちー)

スウェーデン出身、本名ティム・バークリング。28歳。ダンスミュージックを常に革新し続けるプロデューサー。弱冠18歳にてキャリアをスタート。独学で音楽制作を学び、2012年の『第54回グラミー賞』最優秀ダンス・レコーティングにノミネート。2013年には1stアルバム『True』をリリースし、74か国でiTunesで1位を獲得。全米6位、全英2位、この日本でも異例の20万の売上を突破し世界規模で大ヒット。2015年、2ndアルバム『Stories』を発表。2016年、コカ・コーラ全世界CMソング“Taste The Feeling”のリリースを経て、2016年8月を最後にDJとしての活動を完全に休止することを発表。活動休止直前の6月、最初で最後となる来日公演を行なった。2018年4月20日、オマーンで急逝したことが報じられる。

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