Sigur Ros主催フェスを現地取材 アイスランドの絶景と共に紹介

Sigur Ros主催フェスを現地取材 アイスランドの絶景と共に紹介

テキスト・撮影
黒田隆憲
編集:山元翔一

My Bloody Valentineの頭脳、ケヴィン・シールズの初のソロライブを目撃

今回筆者の「アイスランド行き」のもうひとつの目的は、「ケヴィン・シールズのソロライブをこの目で観る」というものだった。1990年代以降のギターバンドに計り知れない影響を与えたMy Bloody Valentine。その頭脳であるケヴィン・シールズが、ソロ名義でライブを行なうのは今回が初めてであり、長年彼らを追い続けている筆者にとって、これを見逃すわけにはいかなかったのだ。

ケヴィンの出番は、フェス2日目(30日)の深夜23時半。ステージには5台のマーシャル・ギターアンプが要塞のようにそびえ立ち、向かって左にはドラムキットが組み立てられている。定刻から30分ほど過ぎた頃、J・マスシス(Dinosaur Jr.)のツアーサポートなどでも活躍しているティム・ヘルゾグ(Godspeed You! Black Emperor)を引き連れ、ケヴィン・シールズが姿を現した。

左から:ティム・ヘルゾグ(Godspeed You! Black Emperor)、ケヴィン・シールズ(My Bloody Valentine)
左から:ティム・ヘルゾグ(Godspeed You! Black Emperor)、ケヴィン・シールズ(My Bloody Valentine)

トレードマークのフェンダー・ジャズマスターをかき鳴らした瞬間、その場の空気が一変する。足元にズラリと並ぶ、数十台のエフェクターを通したそのサウンドは、増幅された倍音がまた新たな倍音を生み、溶け合い、弾け合いながら様々な色彩を放ってゆく。これが、本当にギター1本で鳴らされている音なのだろうか。しかも、鼓膜を突き破るほどの轟音なのに、不思議と心地よい。こんな音をギターで出せるのは、彼の他に誰がいるだろう。

そして驚いたのは、演奏された曲はどれもまだ一度も聴いたことがなかったことだ。終演後にケヴィンから聞いた話では、演奏したのは全て、今回のソロライブが決まったあとに作った曲だという。メロディーは、彼が影響を受けたJ・マスシスやSpacemen 3のような、ダウナーかつヘヴィーサイケの要素もありながら、『Isn’t Anything』(1988年)の頃のMy Bloody Valentineを彷彿させるポップさもあって、とても「ケヴィンらしい」ものだった。たった数か月で、これだけのクオリティーの楽曲を作れるのだから、来るべきMy Bloody Valentineの新作にもより一層期待せずにはいられない。

左から:ティム・ヘルゾグ、ケヴィン・シールズ

左から:ティム・ヘルゾグ、ケヴィン・シールズ

19か月に及ぶワールドツアーの終着――Sigur Ros、故郷・レイキャヴィクで万感の凱旋ライブ

ヘッドライナーのSigur Rosだが、彼らのライブは4日間毎晩行われ、筆者は3日目と最終日の計2公演を観ることができた。19か月に渡るワールドツアーの締めくくりを、故郷のレイキャヴィクで行うということもあり、オーディエンスの気合いと熱気も開演前からひしひしと伝わってくる。

セットリストは、2017年夏の来日公演の際と同様、休憩を挟んだ2部構成。“Á”で幕を開ける1部は、未リリースの新曲“Niður”を含む抑揚をグッと抑えた展開だ。長年メンバーだったキャータン(Key)が脱退し、3人編成となった彼らのアンサンブルは、ストイックなまでに研ぎ澄まされていた。

Sigur Ros
Sigur Ros

限られた音数のなかで、どれだけ豊かな表現ができるか。そこへ向かって果敢にチャレンジする彼らを、オーディエンス全員が固唾を呑んで見守る。たとえば“Dauðalagið”のエンディングで、果てしなく続くヨンシーのロングトーンが終わった瞬間には、堰を切ったような歓声が巻き起こったのだった。

第1部が「静」だとすれば、第2部は「動」のセクションと言っていいだろう。放射線状に張り巡らされた照明装置や、半透明のスクリーンなどを駆使した華やかな映像が、“Sæglópur”や“Ný batter픓Festival”といった楽曲の躍動感、高揚感とシンクロし、会場は異次元空間と化す。

ここぞとばかりにヨンシーも、客席に向けて拳を突き上げ、ステージ前方ギリギリまで乗り出し煽るようにシャウトする。最後の曲“Popplagið”を演奏する頃には、ほとんどの人が席から立ち上がり、終演後に「Tak(ありがとう)」の文字がバックスクリーンに映し出されるなか、いつまでも拍手が鳴り止まなかった。

2017年12月30日に配信されたライブ映像

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プロフィール

Sigur Ros
Sigur Ros(しがー ろす)

アイスランドを代表する唯一無比の3ピース・バンド。1997年にリリースされたファースト・アルバム『Von』(希望)でデビュー。その後、リリースされた『Agaetis Byrjun』(良き船出)で日本デビューを果たす。2002年に発売された『( )』はより高い評価を得て、グラミー賞へのノミネートなど数々の賞を受賞することとなる。2005年、『Takk...』(ありがとう)を発表。2007年には故郷アイスランドで全編撮影されたドキュメンタリー『Heima』(故郷)をリリース。翌年2008年に『Med sud i eyrum vid spilum endalaust』(残響)をリリースし、全米15位、全英5位、日本の洋楽チャート5位とバンドにとって史上最高位のチャートアクションを世界中で記録。同年10月には全4公演全てソールド・アウトとなった日本ツアーを行う。2008年11月、突如発表された活動休止宣言その直前に、ロンドンで行なわれた2公演を収録したライブ盤『Inni』をリリース。2012年5月、4年ぶりとなるアルバム『Valtari』(遠い鼓動)をリリースすると、史上最高全米位となる全米7位、全英8位を記録。2013年、日本武道館での公演を含む4都市で行われる日本ツアーで来日。同年発表の7作目『Kveikur』(クウェイカー)は全英9位、全米14位、オリコン19位を獲得。2017年12月、アイスランドの首都・レイキャヴィクにて、アートフェスティバル『Norður og Niður』を開催した。

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