「エコは愛」。建築家・加藤比呂史に聞く北欧のまちづくりの本質

「エコは愛」。建築家・加藤比呂史に聞く北欧のまちづくりの本質

テキスト
村上広大
編集・撮影:高橋直貴

エコって「愛」だと思うんですよ。1つのものを大切に、長く使い続けることで、そこから何度も価値を享受することできる。

—そうした市民の目が厳しい環境で、建築の仕事に携わることの難しさはあるのでしょうか?

加藤:意外かもしれませんが、逆に日本よりも進めやすいと感じますね。公共性のある建物の場合、政治家がうまく辻褄が合うようにプレゼンし、それを市民の9割が納得すれば成立してしまうので。だからこそ、意外性のあるものが生まれにくいという側面もあります。ある意味で85点の建築が多いんです。クオリティーが低いわけではないんだけれど、突き抜けるものがないっていう。

建築家としては、やはりそのことへのジレンマはあります。日本だと個人の表現が重要視されているから、有名建築家が手がけた建物ってまるでアートピースのように扱われますよね、それが良いか悪いかは別として。120点を取れるときもあれば20点のときもある。その結果として特異性が生まれると思うんですけど、そういうものがコペンハーゲンにはほとんどないんです。計画的だからこそ、セレンディピティが生まれない。そこは一長一短があるかな、と。

『Weaving Between』。2017年夏、京都芸術センターにて発表された影でつくられるランドスケープのプロジェクト。校舎と校舎のあいだに張られたテープに夏の日差しが注ぎ込まれ、校庭全体に織物の様な影を落とす。©KATO Hiroshi
『Weaving Between』。2017年夏、京都芸術センターにて発表された影でつくられるランドスケープのプロジェクト。校舎と校舎のあいだに張られたテープに夏の日差しが注ぎ込まれ、校庭全体に織物の様な影を落とす。©KATO Hiroshi

—コペンハーゲンに住む人のデザインリテラシーの高さは感じますか?

加藤:どうなんでしょうね。個人的にはではリテラシーが高いというよりは、コンサバティブな印象が強いです。過去につくられた価値あるものがたくさん残されているので、それを守ろうとしているんだと思います。あとメンタリティの問題になりますが、サニー・サイド・オブ・ザ・ストリートの意識が強い人が多いかもしれません。デンマークって日本に比べると日照時間が短いから、とにかく太陽の当たるところが好きなんです。夏場とかになるとビキニになって外出している人とかもいるくらいですし。

—デンマークと比較して、日本の都市づくりに欠けているものがあるとすれば何でしょうか?

加藤:元々あるものに対し、どういう価値を足していくかという思考が日本の都市づくりには欠如しているように思います。その結果として、どんどん都市としての個性が失われていき、どの街も同じような雰囲気の場所が生まれていく。

日本の都市って、駅ビルがあって、バスロータリーがあってというふうに、多くが駅を中心として栄えているじゃないですか。その設計の仕方って、見方を変えれば人の集まる場所を奪うことでもあるんですよ。そうした都市計画によって寂れていった商店街がいくつもある。ぼくとしては、もともとその土地が持っているポテンシャルを起点にして都市づくりをしていく方法もあると思うんですよね。

—コペンハーゲンだと古くからの街並みをベースに、部分的に新しくしていく傾向が強いんですよね。

加藤:日本ではそういう考え方をしない都市の方が多いですよね。スクラップ&ビルドの姿勢が強い。昨今の空き家問題とかもそれに似た性質がある気がします。だから、最近は解体と建築を一緒にできたらすごくいいなって思います。

—解体、ですか?

加藤:使えそうなものを活かして新しい建築をつくる、ということをしてみたいんです。例えば、バブル期の日本っていまでは考えられないくらい贅沢な作り方をしている建物がたくさんあるんですけれど、大抵は壊して終わりです。それを負の遺産として捉えるのではなく、1つの価値あるものとして未来に繋いでいく方が面白いんじゃないかなって思うんですよ。それってすごくエコじゃないですか?

—確かにそうですね。

加藤:ぼく、エコって「愛」だと思うんですよ。1つのものを大切に使うと、長持ちするじゃないですか。長く使い続けることで、そこから何度も価値を享受することできる。そうした結果、無駄なものは減っていきますよね。

でも、エコって、それ自体を目的化しちゃいけないんです。「地球のために」ではなく、面白いことを考えた結果として大切にされ、長く使われていく。そうしたかたちでエコにつながることがしたいんですよね。

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プロフィール

加藤比呂史(かとう・ひろし)

1981年東京都生まれ。武蔵工業大学工学部建築学科(現・東京都市大学)卒業後に藤本壮介建築設計事務所に勤務。2010年にデンマーク・コペンハーゲンに渡り、ヨーロッパを中心にCOBE、KATOxVictoria、Rambøll、Tredje Naturなどで建築設計や公共空間のコンセプトディベロップメントに従事。現在はBeans.ltdにパートナーアーキテクトとして参加しながら、フリーランスアーキテクトとして活動を行なっている。

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