幸福度上位の北欧は離婚が多い? 恋愛学者に聞く、幸せな選択

幸福度上位の北欧は離婚が多い? 恋愛学者に聞く、幸せな選択

インタビュー・テキスト
夏生さえり
撮影:豊島望 編集:木村健太

「失敗しても仕方ない」という気持ちで結婚を

—スウェーデンには、同棲しているカップルが申請できる、「サンボ」という制度がありますよね。これは、いわゆる事実婚と呼ばれるものに近いのでしょうか?

森川:そうですね。法的にしっかりと制度化されている仕組みで、法律婚に近い保証を受けることができます。もともと、フランスなどヨーロッパ全体を見ても事実婚は多い傾向にあるのですが、とくにスウェーデンは、法律婚をしている夫婦の9割がサンボを経ているというデータがあります。

—どうして、フランスや北欧では「事実婚」を選ぶ人が多いのでしょうか?

森川:やはり、法律婚ほど固い契約を結ばなくても結婚生活を送れるというのはメリットだと思いますよ。ですが、前提条件にあるのは、やはり女性の経済的独立です。結婚という契約を結ばなくても、女性が不安にならない仕組みがあるからこそ、「事実婚」が成り立つのかもしれません。

日本の場合は、まだまだ社会環境や事実婚という制度において女性が不利益を被りやすいので、女性が「結婚したい」と思うケースが多いでしょうね。それに、親が「うちの娘どうするんだ」と言ってくる、とか。

森川友義

—親が言ってくるとか、周りが言ってくる、というパターンはありそうですね。先生としては、日本でも事実婚が増えたほうがいいと思いますか?

森川:いえ、現状の日本では、制度の問題で子どもが生まれたときにいろいろと不都合が起こってしまうので、必ずしも事実婚が幸せだとは言い切れないと思います。

政治学者の目線でいえば、日本が抱える社会問題についても考えなければなりません。多様な生き方やそれぞれの考え方がありますが、少子高齢化問題に関して言えば、既婚者は平均1.94人の子どもを産んでいるというデータがあります。

さらに、私はいま「シニア婚」に注目しているのですが、こちらは孤独死を減らす、経済的な二馬力の創出、空き家問題の解決など、社会のさまざまな問題の解決につながっていきます。ですから、結婚や再婚という選択をしやすくなるような環境を整えることが重要だと思いますね。50歳で結婚しない男の人が22%いるわけですから。もっと「失敗しても仕方ない」くらいの寛容な気持ちで、結婚に挑んでほしいです。

—たしかに、「失敗できない」という気持ちは強そうですね。どうして、いまの日本では結婚しない人が多いんでしょうか?

森川:男性に関して言えば、年収と既婚率は比例関係にあるんです。要するに、お金を持っている人はかなりの確率で結婚しているし、逆に言えば貧乏だと結婚していない確率が高い。そういった背景があるなかで、いまは非正規社員が増えているんですよね。

やはり、ここにもジェンダーギャップの問題が関わってくるのですが、女性の社会進出が進んでいないいまの日本だと、結婚市場では経済力が重視される傾向にあるのだと思います。

幸福な結婚とは、なんだろう?

森川友義

—日本も、北欧のような社会環境になれば、結婚に対する考え方も変わっていくのでしょうか?

森川:そう思います。それが自然なことじゃないでしょうか。日本はいままさに、「昭和の夫婦関係」から「21世紀の夫婦関係」へと推移しているところです。昭和の結婚は、奥さんが専業主婦になり、旦那さんの仕事について行ってマイホームを買って一生添い遂げる、みたいなものが多かったですよね。ですが、女性のキャリア志向が増えていることもあり、そのパターンは、もはや崩れかけています。これからの女性は、仕事も子育ても大切にする、という時代です。

私のゼミの卒業生のなかには、赤ちゃんを抱いて仕事に行っている人もいるんです。赤ちゃんを抱っこしたままプレゼンしているそうで、その選択と、それが実現できる環境は魅力的だと感じました。女性が経済力に不安を抱えることなく、働きながら子育てができる。それが当たり前の社会になればいいですね。そうすれば、本当はもう一緒にいたくないけれど、生活のために離婚できない、というようなケースは減るんじゃないかと思います。

—制度や環境にしばられて、身動きがとれなくなってしまうような社会は変えていけるといいですよね。

森川:そもそも、1回の結婚でうまくいこうとすること自体に、無理があるんじゃないかと私は思うんです。スポーツだってなんだって、最初からうまくやるのは難しいですから。

—最後に、北欧諸国の調査結果や環境も踏まえて、「本当に幸せな結婚とはどういうものか」についてお聞かせください。

森川:そうですね。そもそも「幸せ」「幸福」とは、という話になってしまいますが、幸福というのは、「満足している状態」であると私は考えています。

しかし、冒頭にもお話したとおり、その状態が長く続くと慣れてしまい、満足度が低下してしまう。つまり、幸せと感じにくくなってしまうということですね。その「マンネリ」を打破するためには、小さいものでもいいので目標を設定して、それを超えていくという上昇志向を夫婦で共に持つことが重要だと思います。

森川友義

—北欧の人たちのように、「幸せになるために努力をする」ということですね。

森川:その通りです。つまり、さまざまな意味で、われわれは「北欧型」を目指すべき、といえるかもしれませんね。

幸せになることを諦めず、努力をし続ける。もし、幸せでない状態が続いてしまうようであれば、我慢をしない。そういった選択をできる社会があることこそが、日本が目指すべき将来像だと考えます。

—北欧の人たちは、さまざまな選択ができる環境にあるという点で「幸せ」なのかもしれないですね。

森川:はい。本当に幸せな結婚とは、さまざまな選択肢があるなかで、心の底から望んで結婚という選択をし続ける。そういう結婚のことじゃないでしょうか。

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プロフィール

森川友義(もりかわ とものり)

1955年、群馬県生れ。早稲田大学国際教養学部教授。79年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、ボストン大学大学院政治学研究科で修士号、オレゴン大学大学院政治学研究科で博士号を取得する。その後、国連開発計画やオレゴン大学客員教授を経て、2004年より現職に就く。2008年、恋愛を科学的に分析する「恋愛学入門」という講義をスタート。恋愛学に関する著書として、『なぜ、その人に惹かれてしまうのか? ヒトとしての恋愛学入門』『なぜ、結婚はうまくいかないのか?』、田村淳(ロンドンブーツ1号2号)との共著『ロンブー淳×森川教授の最強の恋愛術』などを発表。2012年には、フジテレビ系ドラマ『結婚しない』の脚本監修を務めるなど、幅広く活躍している。

夏生さえり(なつお さえり)

山口県生まれ。フリーライター。大学卒業後、出版社に入社。その後はWeb編集者として勤務し、2016年4月に独立。難しいことをやわらかくすること、人の心の動きを描きだすこと、何気ない日常にストーリーを生み出すことが得意。著書に『今日は、自分を甘やかす』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『口説き文句は決めている』(クラーケン)、『今年の春は、とびきり素敵な春にするってさっき決めた』(PHP研究所)。

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