Iceageらデンマークシーンがロック史を変えた瞬間を仲真史が語る

Iceageらデンマークシーンがロック史を変えた瞬間を仲真史が語る

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:小田部伶 編集:山元翔一 取材協力:BIG LOVE

Communions周辺とかは、上の世代とは雰囲気も違って、トゲトゲしてないというか、普通なんですよ。

—今のコペンハーゲンにはすでにIceageの次の世代が登場していて、CommunionsやLissが注目を集めていますね。

:Communionsには、まだシングル1枚しか出してないときに初めて会ったんですけど、みんな10代とかで、めちゃくちゃやんちゃでした。CommunionsはもともとIceageとも近いところにいたんですけど、彼らは自分たちのチームで、別のパーティーを持っていて、そこはIceageのパーティーとは違ってポップなロックがかかるんです。

Communions『Blue』(2017年)収録

—メイヘムとは違うコミュニティーができてるんですね。

:そう。Communionsの音楽性って、最初からハイファイで、The Stone Rosesとかを意識してて。「上の世代とは逆のことをやるんだ」って公言していたりして、Iceageの世代とは全然違うんです。

それに彼らはすごくフレンドリーで、握手会とかもガンガンやるんですよ。モデル事務所にも入ってるみたいで、この前もPoloとタイアップしたりしてて、そういうことはエリアスは絶対にやらないだろうなって思いましたけど。

—ある意味、反面教師的な見方というか。

:そうなのかも。だから、Posh Isolationとの関わりも、今はそんなにないみたい。Lissに関しては、彼らはIceageやPosh Isolationのことは好きらしいのですが、Posh Isolation周辺の半分の人たちは好きだけどその半分は嫌いって言ってるようです。どちらが正しいかは時代が証明してくれると思いますけど。

Liss『First』(2016年)収録曲

—Iceageの時代に起こった爆発に感化されつつも、それぞれが独自の道を選んで、多様性が生まれつつある状態というか。

:そうだと思います。Communions周辺とかは、上の世代とは雰囲気も違って、トゲトゲしてないというか、普通なんですよ。ノームコアじゃなくて、ただのノームっていうか(笑)。あと最近だと、Smerzって女の子がEschoから出てきるんですけど、彼女たちもIceage周辺とは近からず遠からずのようで、新しい世代を感じさせますね。

Smerz『Okey』(2017年)収録

彼らには幸せを身近に感じる価値観があって、無茶をしないんですよ。

—最後に、今後のコペンハーゲンのシーンはどうなっていくとお考えでしょうか?

:今はみんなIceageの動向を見ている感じだと思います。ただ、みんな25歳を過ぎて、家庭を持っていたりもするし、他国の人間よりも野心がないっていうのはバンドとしてはマイナスな部分もあると思います。

—デンマークは世界で一番幸福度の高い国ですけど、それは幸福の裏にあるリアルと言えそうですね。

:そうですね。彼らには幸せを身近に感じる価値観があって、無茶をしないんですよ。僕がIceageだったら、絶対アメリカとかイギリスに移住してると思うんですけどね。それに恵まれた環境にいると、ぬるま湯感が出て、文化的にもガラパゴス化してしまうとも思いますし。そこは日本とも同じというか、コペンハーゲンは過渡期を迎えている気がするんですよね。

—難しい時期に差しかかっていると。

:今はロンドンが盛り上がりはじめていて、たとえば、HMLTDとかも彼らもIceageのことが好きだけど、逆にカラフルにやってるんだと思う。

HMLTD『To The Door』(2017年)収録

:イギリス人は影響を受けたものをアップデートするのが上手くて、Iceageから影響を受けつつもイギリス産の本物にしちゃうんですよね。たとえば、Communionsみたいなバンドがロンドンから出てきたら、どう考えても爆発的にヒットすると思う。

でも、Communions自身がそうなってないのは、やっぱりデンマークのバンドだからだと思う。「イギリスからいいバンド出てきたら、一気にやられちゃうよ」っていうのは前から言ってたりしたんですけど、実際そうなりつつあって。そういう状況なので、Iceageにリーダーシップがとってシーンを牽引してほしいなって思いますね。

—2010年代はバンドに元気がないとずっと言われ続けてきましたけど、デンマークのような第三国を発火点にして、少しずつ勢いを取り戻しつつあると言えるかもしれないですね。

:イギリスは2000年代末から8年くらいずっとダメでしたよね。そういう状況で、ここにきてバンド音楽やロックがまた元気を取り戻すきっかけを作ったのが、その第三国から出てきたIceageだったっていうのは事実だと思います。スペインのHindsもきっかけになったと思うけど、コペンハーゲンの影響はすごく大きいんじゃないかと思いますね。

Hinds『Leave Me Alone』(2016年)収録

—今のIceageのことはどんなふうに見ていますか?

:彼らもやるべきことをやってるとは思うんですけど……大物感が出過ぎちゃって、初期の向こう見ずな感じが薄まっているのは、少し寂しさがあります。作品は全て最高なのですが、まだまだ若いのだからもっと無茶してくれてもいいのになと思ったりするんですけどね。

まあでも、ここまできたら続けてほしい。今終わっても伝説になるとは思うんです。でも、彼らならこれからもオリジネイターとして存在し続けることができるんじゃないかなって思うんです。

 

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プロフィール

仲真史(なか まさし)

レコードショップ/レーベル「BIG LOVE」代表。1993年から渋谷系の代表的なレーベル「ESCALATOR RECORDS」を主宰。2001年、原宿に輸入レコードショップをオープン。2008年、レーベル「BIG LOVE」スタート。2010年にショップも同名に改める。The xx、Iceageなど注目アーティストを発掘している。

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