ナカコーインタビュー その審美眼で選ぶ、オススメの北欧音楽10曲

ナカコーインタビュー その審美眼で選ぶ、オススメの北欧音楽10曲

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:森山将人 編集:野村由芽、飯嶋藍子
2017/06/22
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9曲目:ABBA / Dancing Queen(スウェーデン)

ナカコー:もうレジェンドですから、僕が生まれた瞬間からデフォルトとしてあるものですよね。当時はABBAだって認識もなかったし、当然北欧だって認識もなかったですけど、子どもの頃から焼き付いています。大人になって改めて掘ってみると、いい曲がいっぱいありますね。

10曲目:Ace of Base / The Sign(スウェーデン)

ナカコー:実は当時はだっせえエレクトリックミュージックに聴こえて……。商業的な音作りで大ヒットしていたから「嫌な曲」ってイメージであんまり好きじゃなかったんです(笑)。でも、「そういえば、流行ってたな」っていま改めて聴いてみると、純粋に「いい曲じゃん」って思ったし「いまだったら聴けるな」っていうものでした。

Koji Nakamura

空間と音楽の溶け込み方が自分にとって居心地がいいか悪いかを判断するだけ。

―では、ここからはこのサイトのテーマである「クラフトマンシップ」と「最先端技術」をキーワードに、近年のナカコーさんの活動についてお伺いしたいと思います。

昨年オンラインショップ「meltinto」をオープンされていますが、音源をデータで販売して、SoundCloudでの試聴もできる一方で、ハンドメイドのCD-Rやカセットテープも売っているというのは、まさに「クラフトマンシップ」と「最先端技術」が共存している場だと感じました。実際には、どういった目的意識を持って、サイトを立ち上げたのでしょうか?

ナカコー:いま音楽が置かれている状況を考えたときに、お店とレコード会社とアーティストの関係性が、ずっといまのままのはずはないと思って、可能性を広げたいと思ったんです。

僕がいま好きで聴いているミュージシャンの多くも、自分たちで好きなように作って、自分たちで販売している。なので、僕も何か試したいと思って、まずBandcampを使い始めたんです。でも、少し前までは全部英語で、日本の若い人にはちょっとハードルが高かったんですよね。

Koji Nakamura

―いまでこそ日本語も対応していますが、一昔前はそうでしたね。

ナカコー:いま僕が使っているBASEに関しても、ちょっと前から同じ仕組みはあったんですけど、当時はまだできないことも多かった。でも、いまのBASEの仕組みは、僕の「もっと自由にできないかな」っていう考えと、ちょうどクロスしました。

―「meltinto」という名前は、「日常空間の中に溶け込む音楽」という意味合いかなと思ったのですが……。

ナカコー:この名前を付けたのは、「ウェブ空間に自分の音楽を溶け込ませる」という意味です。物体による残り方と、ウェブ空間での残り方と、音楽はどちらが長く残るのかって考えてみると、物体であれば再生装置が必要で、再生装置の基準がアップデートされると、限られた人しか聴けなくなる。

でも、ウェブ空間は等しく平等に再生することが可能ですよね。なので、ウェブの中に自分の楽曲が溶け込んでいるっていうのはいいなって。とはいえ、物体にも興味はあるので、情報という空間に物体を溶け込ませるっていう思いも込めています。

オンラインショップ「meltinto」
オンラインショップ「meltinto」(サイトを見る

―「meltinto」ではKoji Nakamura名義で『Texture』というアンビエント~ドローン系の音源を定期的に発表していて、これはもともとライブ会場限定のCD-Rだったものを、オンラインでも販売するようになったものですよね。このシリーズはどういった意図のもとに作られているのでしょうか?

ナカコー:極めて個人的な作品なので、極めて個人的な場所で販売して、それをいいと思う人が買えばいいだけのことだと思って作りました。例えば、レコード会社から出るものやコマーシャルの曲なんかは、いろんな人の意見が入った、自分の好きな表現の作品。一方で『Texture』は、僕という個人の表現が本当に純粋にできる唯一の作品なんです。

―ナカコーさんは先日カセットレーベルと組んでアンビエントに特化したイベント(『Hardcore Ambience』)を始めたり、近年日常空間の中に溶け込む音楽の提案をされている印象があります。例えば、アイスランドは生活と音楽の距離が近いイメージがあって、東京はまたちょっと違うなって思ったりもするのですが、ナカコーさんはその距離感についてどのような考えをお持ちですか?

ナカコー:音楽と生活、場所の距離感については、そこが自分にとって居心地がいいか悪いかを判断するだけです。どんなにいい曲がかかっていても、そのとき居心地が悪ければ出て行くし、音楽と空間が溶け込んでいる場所があればいいなということしか考えてないですね。

―「居心地のいい空間がもっと増えたらいい」という発想で音楽を作ったりもしますか?

ナカコー:居心地のいい空間が増えたらいいなとは思うけど、何か働きかけをするつもりはなくて、みんながそれぞれ判断すればいいと思います。僕自身、自分の生活エリアでいいなって思う場所を選んでいくだけだから、みんなそれぞれいいと思う空間に行けばいいと思う。いい空間は残るし、悪い空間は残らない。選ぶのはみんななんです。

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プロジェクト情報

『Epitaph』

ストリーミング限定のプロジェクト。Koji Nakamuraの新作でありながら、収められる楽曲やバージョン、曲順などが随時変わっていくという。Spotify、Apple Music、LINE MUSICなどの音楽ストリーミングサービスでは4月26日からプレイリスト「地図にないルート」が先行で公開。第1弾として、『直木三十五賞』を受賞している作家の唯川恵が作詞を手掛けた楽曲“地図にないルート”と、バージョン違いとなる“地図にないルート feat. moekashiotsuka”、Madeggとのコラボレーション曲“Open Your Eyes 13 Mar. 2017”の3曲が配信されている。今後も随時更新予定。

プレイリスト

『ナカコーがオススメする北欧音楽10曲』

1. Bjork“Hyperballad”
2. The Royal Concept“Gimme Twice”
3. トッド・テリエ / Roxy Music“Love Is The Drug(Todd Terje Disco Dub)”
4. リッキ・リー“Dance Dance Dance”
5. Iceage“You're Blessed”
6. Amiina“Rugla”
7. The Cardigans“Carnival”
8. The Raveonettes“Love In A Trashcan”
9. ABBA“Dancing Queen”
10. Ace of Base“The Sign”

プロフィール

Koji Nakamura(こうじ なかむら)

通称ナカコー。1995年地元青森にてバンド「スーパーカー」を結成し2005年解散。ソロプロジェクト「iLL」や「Nyantora」を立ち上げる。その活動はあらゆる音楽ジャンルに精通する可能性を見せメロディーメーカーとして確固たる地位を確立し、CMや映画、アートの世界までに届くボーダレスなコラボレーションを展開。現在はフルカワミキ(ex.スーパーカー)、田渕ひさ子(bloodthirsty butchers, toddle)、そして牛尾憲輔(agraph)と共にバンド「LAMA」として活動の他、現代美術作家の三嶋章義(ex. ENLIGHTENMENT)を中心にしたプロジェクト、MECABIOtH(メカビオス)でも活動した。また、2014年4月には自身の集大成プロジェクトKoji Nakamuraを始動させ「Masterpeace」をリリース。

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