福祉業界に投入した「ファッション」という起爆剤。平林景が語る

福祉業界に投入した「ファッション」という起爆剤。平林景が語る

2021/09/28
インタビュー・テキスト
飯嶋藍子
写真提供:JPFA 編集:飯嶋藍子、CINRA.NET編集部

マイナスをゼロにするのではなく、強烈なプラスに変えるために。パリコレへ向けた思い

―その話でいうと「bottom'all」はとてもユニークで、自分らしさを表現するひとつの選択肢になりますよね。実際にどういう反響がありましたか?

平林:ぼくの周囲では、男性のスカートに対する認識が徐々に普通になっている気がします。あとすごく嬉しかったのは、今年の4月頃、男子高校生がスカートをはいて登校しているという国内ニュースを見たときに、そのきっかけについて「SNSで毎日スカートをはいた写真をアップしている男性がいて、それがかっこよかったからぼくもはき始めた」と言っていたんです。

たぶんですけど、その当時スカート姿の写真を毎日アップしていたのってぼくだけだったと思うので、変化をもたらせたのかなと。世の中の常識をオシャレで変えようという大きな目標以前に、身近に存在していた「男性がスカートって変だよね」という偏見に対する変化を感じられたのは良かったです。

―平林さんは「bottom'all」で2022年秋のパリコレを目指していらっしゃって、さらには2024年のパリパラリンピックに合わせてショーの準備をされているとおうかがいしました。パリコレを目指し始めたのはなぜだったのでしょう?

平林:車椅子の方中心のショーってパリコレで行われたことがないそうです。いまはコロナの状況もありますが、リアルの場でショーを実現させて、「障がいのある方でもオシャレができるよ」ではなく、「障がいがあるからこそかっこよくなれるよ」という衝撃をパリコレで与えたいです。

マイナスをゼロにすることをやっても、さして世の中は変わらない。だから、マイナスだと思われることが強烈なプラスになる表現をして初めて障がいに対するイメージが変革すると思っています。だから、まずはパリコレで「なんじゃこりゃ!」と衝撃を与えられるようなショーができたらと思っています。2024年のパラリンピックのときは、日本の選手団にも「bottom'all」をはいてほしいですね。

―具体的に障がいがあるからこそかっこよくなれるファッションのイメージはありますか?

平林:座って完成形のシルエットのものだったり、片麻痺がある人だったら片袖だけのものとかですね。車椅子の人だからこそ、身体の片側が動かない人だからこそ、シルエットがかっこよく見えるものってあると思うし、全員着られるけれど、いちばんかっこよく着られるのは障がいがある人っていうものをつくっていきたいです。だから、まずは当事者の方はもちろん、多くの人に自分の違和感を大事にして、それを声に出してほしいと思っています。

平林:「なんでこうなっていないんだろう?」「もっとこうなっていたら世の中がよくなるし、私もラクなのにな」とか、そういう違和感にこそ、世の中にまだ足りていない答えが隠れていると思うんです。自分の力で世界は変えられないと思いがちですし、もちろん自分だけじゃ変えられないのですが、ゼロをいきなり100にする必要はないんです。まずはゼロからイチを生み出すために必要なのがその違和感なんだと思います。

ポジティブな発信にも耳を傾けて。「ぼくはこの特性があってラッキーだと思っている」

―障がいを持った方ご自身や障がいを持った子の親御さんたちが抱える悩みや選択肢の少なさって、とくに健常者はなかなか気づけないことも多いと思うんです。障がいの有無にかかわらず、この記事の読者が日々できることがあるとしたらどんなことだと思いますか?

平林:たとえば「子どもが発達障がいなんだよね」と聞くと、なんか大変そうって闇雲に心配しちゃうじゃないですか。ぼく自身ADHDですけど、みんなが考えているほど暗いことでもないんですよ。たしかにいろいろな不便はあるけど、それは社会がぼくらに対応していなからというだけで、決して不憫な存在なわけではない。ADHDであるがゆえにできる行動や、ついてきてくれる仲間もいると感じますし、ADHD特有の衝動性がなくて少しでも考える性格だったら、いまと同じような活動はできないと思います。だから、この特性があってラッキーだと感じているくらい。

平林景

平林:まあ、ADHDの特性上、3日連続でダブルブッキングしちゃうとかいいことばかりではもちろんないんですけど……(笑)。でも、それを上回った「プラス」を活かす生き方もあるんだなということを当事者や親御さんに知ってもらいたいです。障がいのネガティブな面にフォーカスすると心配だけが助長されてしまいますが、いまはSNSで多くの当事者の声に触れられるので、なかでもポジティブな発信をしている人の言葉ももっともっと浴びてほしいと思っています。

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プロフィール

平林景(ひらばやし けい)

一般社団法人日本障がい者ファッション協会(JPFA)代表理事。1977年生まれ、大阪府出身。美容師、美容専門学校の教員を経て、放課後等デイサービスを設立し、独立開業。「『福祉×オシャレ』で世の中を変える」をモットーに、X-styleファッションブランド「bottom'all」とその同名ボトムを展開。2022年秋のパリコレへの出展に向け挑戦中。

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