北欧発クラフトビール・ミッケラーの「面白い」ラベルデザイン

北欧発クラフトビール・ミッケラーの「面白い」ラベルデザイン

インタビュー・テキスト
宇治田エリ
撮影:寺内暁 編集:柏木良介(CINRA, Inc.)、後藤美波(CINRA.NET編集部)

日本はマイクロマネジメントしすぎ? 「いつもパーフェクトでいる必要はないし、たまにあるミスも愛嬌です」

―ハミルトンさんはアメリカ出身で、本社がデンマークの会社に勤め、場所は日本で働いています。働き方にギャップを感じることはありますか?

ハミルトン:欧米と日本は働き方が全然違うから、かなりのギャップを感じます。特にデンマークでは、同僚にフレンドリーに接するけれど、個人の時間を大切にしていて、仕事中は自分の仕事を最優先します。それで手際よく早く仕事を終わらせて、15、16時には幼稚園まで子どもを迎えにいく。だからミーティングも短いし、メールも上司が相手でも「Yes」「No」「I do it」と短いテキストで済ませます。すごく効率的な働き方ですよね。

ハミルトン・シールズ

それに比べたら、アメリカの会社はもう少しコミュニケーションを取りたがる傾向があるかもしれない。キースも私もアメリカ人だけど、私たちの場合はファミリーマンだから、デンマークの働き方のほうが合っていると思います(笑)。自分の仕事があり、家族との時間や自分のための時間も大切にする、だからほかの人の時間も取らないようにする。そうすることで、新しいことに挑戦する余白も生まれると思います。

―デザインを感覚的に、すばやく決めていることに驚かされましたが、そういった背景があったのですね。

ハミルトン:僕から見ると、日本のデザインはしばしばマイクロマネジメントをしすぎているところがあるように思います。いつもユニークでいるために、いつもパーフェクトでいる必要はないし、やりすぎないでいい。たまにあるミスも愛嬌です。時間や手間をかければもちろんいいものがつくれると思いますが、広がりは生まれづらいのではないでしょうか。

ハミルトン・シールズ

ちょっと頑張って見つけた「良いもの」を生活に取り入れる。そんな人にミッケラーはフィットする

―東京暮らしが長いハミルトンさん。日本ブランドのプロダクトデザインでお気に入りのブランドがあれば教えて下さい。

ハミルトン:いくつもあってキリがないですが、ひとつはアイウェアブランド「VERYNERD」のアイテムを売っている中目黒の「ベリーでナード!」というお店ですね。エダンディさんというユニークな人がやっています。あとは帽子だと「This is my sportswear」のものが好きで、ミッケラーのオリジナルキャップもこことコラボしてつくっています。

「VERYNERD」のサングラス(私物)
「VERYNERD」のサングラス(私物)

ハミルトン:クラフト品は私も本社の人たちも好きですね。プロダクト的でありながら、手づくりで一つひとつにアイデンティティーがある波佐見焼がとくに大好きで、本社ではマルヒロ、神田店ではイイホシユミコさんの波佐見焼を使っています。あとは、デンマーク美術工芸のパイオニアである、「カイ・ボイスン」のカトラリー。生産地が日本の燕三条で、その技術の高さに感動して、お店でも使っています。

そして私の宝物は、陶芸家・濱田庄司さんが1950年代に益子焼でつくったアサヒビールのビンテージビアジョッキ。陶器のビアマグはお土産品のイメージがありますが、これは全然違って、デザインも良いし持ちやすいんです。

最近大好きなのは、「Kalita」の「ナイスカットG」というグラインダー。最近の欧米のグラインダーって、デザインがクリーンすぎるんですよ。ちょっと硬いというか。だけどナイスカットGなら、50年経っても飽きないし、幸せな気分にさせてくれる。そういうロングライフなプロダクトも魅力的に感じますね。

「ミッケラー トウキョウ」で使用している、デンマークの「カイ・ボイスン」のカトラリー
「ミッケラー トウキョウ」で使用している、デンマークの「カイ・ボイスン」のカトラリー

―いま注目しているデザインはありますか?

ハミルトン:気になっているのは、八百屋にある段ボールです。見ていると、ときどき面白いデザインがあるんですよ。「誰がデザインしているの?」と不思議に思い、見つけたら必ず写真を撮っています。

―ミッケラーのデザインも、ユニークだけど親しみのあるところが八百屋の箱と似たものを感じます。

ハミルトン:誰もがすぐにミッケラーのものだとわかるような主張のあるマークはついていないですし、ちょっと頑張って見つける感じが似ているかもしれないですね。ミッケラーが好きな人はすぐにわかるけれど、1、2回くらい見たことがある人は「なんか見たことがある気がする」となる。

そこから気になって、調べてくれる人は調べてミッケラーだとわかり、それをきっかけにブランドのことを好きになってくれる。これは王道のブランディングとは全然違うアプローチですが、ちょっと頑張って、生活に良いものを探して取り入れようとする人にフィットすると思います。

車はボルボも好きだというハミルトン氏。「私が初めて購入した車が、ボルボの1987年760エステート。ステーションワゴンタイプのヴィンテージボルボでした。3列シートにできるから、友達を乗せてワイワイやっていましたね。リペアも自分でやって、大変だった(笑)」
車はボルボも好きだというハミルトン氏。「私が初めて購入した車が、ボルボの1987年760エステート。ステーションワゴンタイプのヴィンテージボルボでした。3列シートにできるから、友達を乗せてワイワイやっていましたね。リペアも自分でやって、大変だった(笑)」(参考:ボルボの歴代モデル

―最後に、デザインを通してミッケラー トウキョウで叶えていきたいことを教えてください。

ハミルトン:ミッケラー トウキョウがある百軒店は、ラブホテルやクラブなどがあり、少し怖いイメージがある街ですが、もともとはとても洒落た場所として有名で、東京を象徴するような場所でした。1960年代は特に流行っていたそうです。神社があり、ラブホテルがあり、新しくて面白い店もあれば、古くて汚いけれどリスペクトされている店もある。そんな東京らしい光景を私も気にいっていて、まさにパワースポット。街のなかにいろいろな店がバランスよくあることが大事で、そこに人々が楽しい気分になるような、男女問わず入ったらホッとするようなミッケラーの店があることで、さらに街の可能性が広がっていくと思います。

じつは、コペンハーゲンにあるミッケラーの本店も、この百軒店とちょっと似た雰囲気の場所にあるんですよ。あやしい店もあれば、いい店もある。北欧は文化的なイメージが強いですが、結構ハードでディープな一面もあって、きれいすぎないからこそ魅力的なんです。

ミッケラー トウキョウのネオンサイン
ミッケラー トウキョウのネオンサイン

ハミルトン:ミニマルすぎるデザインはつまらないと思うから、ミッケラーは色を使うことを怖がらないし、理由のあるデザインも求めません。まずは楽しんでほしい。それが人生を楽しむことにもつながるはずですから。

よく、田舎に住んでいるおばあさんとかが、レシピも見ずに「おいしいから入れてる」と、感覚的に料理をつくっていたりしますよね。そんなラフだけど楽しくて幸せな感覚を大事にできるお店にしていきたいです。ラベルもお店もブランドも、フレキシブルでありたい。いまも新しいアイデアが進行中なので、ぜひ楽しみにしていてくださいね。

ハミルトン・シールズ

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店舗情報

ミッケラー トウキョウ

住所:東京都渋谷区道玄坂2-19-11

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