オアシズ光浦靖子へ吉住が訊く。30代からの人生・恋愛・芸のこと

オアシズ光浦靖子へ吉住が訊く。30代からの人生・恋愛・芸のこと

インタビュー・テキスト
松井友里
撮影:大畑陽子 編集:青柳麗野(CINRA)

普段「不幸」で片づけてしまうことが武器になるなんて、ここは天国だ! って思ったの

―いまのはプライベートでのお話でしたけど、吉住さんからこういった質問もいただいています。

【吉住さんからの質問】
「人を傷つけない笑い」や、「ブス」のような言葉を言わないお笑いについてどう思いますか?

―自分のだめな部分を笑ってもらうことで肯定されるような感覚というのは、お仕事のなかでも感じられることがあるのでしょうか?

光浦:私は上京して初めてお笑いライブを見に行ったときに、頭が悪いとか、ルックスが悪いとか、実家が貧乏みたいなことをネタにしてスポットライトを浴びている人たちを見て、みんなが普段隠していたり、不幸と片づけてしまうようなことが武器になるなんて、「ここは天国だ!」って思ったの。

だから、テレビのなかで「ブス」と言われる役割をもらっても、自信満々にやってきたんです。でも、それが人を傷つけていたのかもしれないと知って、「ああ、そうなのか……」と。自分はそういうネタで笑いをとっている人たちを見て素敵だと思って、正しいと信じてやって来たから、(いまのこの状況を)私もまだあまり整理できていないんです。

左から:吉住、光浦靖子

吉住:私自身この質問をされることが多いので、光浦さんにもお聞きしてみたかったんです。私も養成所に入って、社会のなかではマイナス要素とされてしまうような部分が、お笑いの世界では武器になって、救われる子たちがいることを目の当たりにしてきて。私自身は、その瞬間に笑いが取れるんだったら、ブスとしていじられてもいいと思っちゃうんですよ。

光浦:ぶっちゃけあなたの銀行強盗のネタ( ※『THE W』での吉住の決勝ネタ)はブスだから面白いじゃん。

吉住:はい。

光浦:ブスのルックスの人がかわいらしいキャラクターを演じるから腹が立って面白いわけで、だからみんな笑っているはずなのに、「ブス」と直接言葉にしなければOKっていうのが、私はちょっと不思議に思う。でもマスなものは、見たい人だけが見るというわけにいかないから、メディアに出る以上責任があるもんね。下手ないじりによって、ただただいじめられてしまう人もいるから。

光浦靖子が考える、これからの生き方。「次の人生の自分をかわいがってあげるための、レールを引きたい」

―今日いろいろとお話を伺ってきたなかで、吉住さんが現在感じている戸惑いとともに、光浦さんのご自身も長くお仕事をしてこられたテレビの世界に対する非常に客観的な視点を感じました。

光浦:こういう心境になれたのは、去年か今年くらいからかな。芸能界は楽しいので、続けられるものなら続けたいし、この仕事だけで食べていけるなら万々歳だけど、現実を見つめたらそうではないなと思って。女性の2人に1人は、90歳以上まで生きるんですよ。それを聞いたときの恐ろしさといったらないですよね。もし自分も100歳まで生きるとしたら、あと50年はあると考えたときに、これから身体が衰えていって、収入も減っていくであろうなかで、どうやって笑って生きていけるか、真剣に考えなきゃと思ったんです。

こういうことを言うと「夢がない」とか言われるけど、私は別に悲観的になっているわけじゃなくて、そういう現実があるなかで、どうしたら自分の人生が楽しくなるかを考えてうきうきしているだけで。いまのところは仕事もあって、元気もあって、人生の後半50年のなかでも、いまの私が一番無敵なはずなんです。そんな無敵の状態であるいまから60歳までの10年間に、次の人生の自分をかわいがってあげるための、レールを引きたいの。18歳までの自分に親がしてくれたようなことを、自分で自分にしてあげるようなイメージ。

そう考えたときに、まずやるべきことは、いらんプライドを捨てることだなと思いました。「芸歴何年」みたいなことにとらわれるのはやめる。あとは人と比べることもやめました。「あの人より劣ってる」とか、ついつい考えてしまっていたけど、何十年も努力して改善されなかったんだから、もう別の生き物だと思おうって。

左から:吉住、光浦靖子

―「プライドを捨てる」って簡単なことではないですよね。長く続けてきたことであるほど、自分はその世界でしか生きられないと思ってしまったりもしますし。

光浦:全然簡単じゃないです。(相方の)大久保さんに「ごめんね、バーターで仕事をもらえないかな」って平気で言えるようになったら一人前だと思っています。まだ言ってないけどね。でも、その世界でしか生きる道がないと思えるような仕事なら、多分その職業が一番向いていると私は思いますよ。

いま友達のあいだでは、おばあさんのコミューンをつくりたいという話題がホットで。私はいずれその主になりたいんですよ。一番貯金があるから、私が資本家となって建物を買うの(笑)。「ばばあ」という労働力を最大限に使いこなしていけたら面白いし、そんな私たちを見て笑ってもらえる世の中になったらいいなと思っているんですよ。

吉住:今日いろいろなことをわーわー言ってきたけれど、私は何を言ってたんだろう……? と思ってきました(笑)。100歳まで生きるって考えたら先が長すぎて。

光浦:やばくない? 怖いよ。

吉住:どうしても先のことが考えられなくて目の前のことでいっぱいいっぱいになっちゃうんですけど、もうちょっと、いまの状況をちゃんと楽しんだり、自分に優しくたりしたいなと、光浦さんとお話しして思いました。

光浦:ネタをやって笑いがとれるって、それだけでご褒美じゃん。私はあなたからネタを取った能力で30年近くテレビの世界で戦ってきたんだから(笑)。ネタという最後の拠り所がある分、もっと自信を持ったらいいし、何も怖くないよ。

吉住:ありがとうございます。私もいつかそのコミューンに入れるように、頑張ります。

左から:吉住、光浦靖子
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プロフィール

光浦靖子(みつうら やすこ)

1971年生まれ。愛知県出身。同級生だった大久保佳代子とお笑いコンビ「オアシズ」を結成。国民的バラエティー番組『めちゃ2イケてるッ!』(CX系)のレギュラーなどで活躍。現在は、ラジオ番組などに出演するほか、手芸作家・文筆家としても活動。新聞、雑誌などへの寄稿のほか、著書には『靖子の夢』(スイッチパブリッシング)、『傷なめクロニクル』(講談社)などがある。

吉住(よしずみ)

1989年生まれ。福岡県出身。『新しい波』(フジテレビ系)のレギュラーメンバーになるほか、注目の若手芸人として各番組に出演中。『女芸人No.1決定戦 THE W 2020』で優勝。『R-1グランプリ2021』決勝進出。初のベストネタDVD『せっかくだもの。』が3月31日に発売。

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