手話という表現の世界。NHK手話ニュース那須英彰が語る

手話という表現の世界。NHK手話ニュース那須英彰が語る

インタビュー・テキスト
村上広大
手話翻訳・動画テキスト翻訳:犬塚直志 写真撮影:上原俊 動画撮影・動画編集:安藤亮 企画・リード文・編集:矢澤拓(CINRA.NET編集部)
2021/01/25
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人・情景・時間を手話で描写する。那須英彰の表現の面白さ

―那須さんは1995年から現在に至るまで、約25年にわたり『NHK手話ニュース845』のニュースキャスターを務めていますが、普段のコミュニケーションとの違いはありますか?

那須:フォーマルな場なので、普段使っている手話とはやはり異なります。家族、友人、上司のように相手が異なれば、話し方も変わりますよね。それは手話も同じなんです。その時々の状況に適した表現を使うようにしています。ただ、ニュースキャスターの仕事はどちらかというと翻訳に近いかもしれません。もともとの日本語が難しく、しかも硬いので、わかりやすく伝えるためにはどうすればいいのかを常に考えています。

那須英彰

―先ほどの手話表現でいうと、那須さんの「らしさ」はどこで垣間見られるのでしょうか? 同じニュースを読むにしても那須さんと他の方では少し変わってくるということですよね。

那須:私は可能なかぎりリアルに伝えようと考えています。たとえば、今から10年前に東日本大震災がありました。そのときは、津波で家が傾いていく様子、波にさらわれていく様子、電柱が倒れていく様子、人が流されそうになっている様子。そういったものをスローモーションで伝えようとしました。

また、広島の原爆についての手話をした際には、人々が街を行き交う様子、母親がご飯を作っている様子、柱時計が鳴っている様子、その外では路面電車が走っている様子などを事細かに説明しつつ、アメリカ軍の戦闘機から爆弾が投下され、街が廃墟と化してキノコ雲が現れる様子、そして戦闘機が去っていく様子などを行ったり来たりしながら伝えていきます。そうやって人・情景・時間のすべてを表現するのが私の特徴なのかなと思います。

手で表現する「原爆が落ちた日」の映像的情景描写。本文で語っている、広島の情景を表現している(撮影:矢澤拓)

広島の原爆について、手話を使って表現する那須英彰
広島の原爆について、手話を使って表現する那須英彰
広島の原爆について、手話を使って表現する那須英彰

―実際に手話で表現していただきましたが、今にも情景として浮かんできそうです。

今回の取材では、「喜び」「怒り」「悲しみ」それぞれの感情について那須さんに文章を用意いただき、手話で表現していただいた。
食事を楽しむ様子や、コロナ禍において感じた事柄、手話を広めるための思いをそれぞれに語っている。私たちの使っている言葉ではなくても、それぞれの表現を通して伝わってくるものがあるのではないだろうか。

「喜び」についての手話表現

「怒り」についての手話表現

「悲しみ」についての手話表現

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プロフィール

那須英彰(なす ひであき)

1967年3月、山形県生まれ。2歳の時に両全ろうとなる。幼い頃から映画と演劇に興味を持ち、大学時代に青森の劇団、後に日本ろう者劇団で計15年間、舞台出演。1995年NHK手話ニュースキャスターに抜擢され、現在NHK Eテレ「手話ニュース845」の毎週金曜日夜8時45分~9時に出演中。著書に「手話が愛の扉をひらいた」、「出会いの扉にありがとう」(写真エッセイ)がある。2006年、カナダのトロント国際ろう映画祭2006で大賞・長編部門最優秀賞受賞した『迂路』という映画に主演。2009年、(財)全日本ろうあ連盟創立60周年記念映画「ゆずり葉」に出演。現在、講演、1人芝居活動中。

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