才能に負け続けたパンサー向井慧 不向きな世界での戦い方を語る

才能に負け続けたパンサー向井慧 不向きな世界での戦い方を語る

インタビュー・テキスト
宇治田エリ
撮影:大畑陽子 編集:青柳麗野(CINRA)

「2020年は報われた年だった」自分と向き合い続けて見えてきたこと

―向井さんはnoteもやられていますが、読んでいるとすごく繊細な方なのではと感じました。

向井:敏感なんですよね。気になることがいっぱいあるし、嫌なことがあるとテンションが下がって、いいパフォーマンスが出せなくなっちゃう。それで帰ってから「なんでそんなことで。気にしなくていいじゃん別に」って、また落ち込む。

―そんなときはどのように気持ちを切り替えているのですか?

向井:とりあえず夜の街をひたすら歩いて、なんとなく落ち着く公園に行って、ベンチに座ってコーヒーを飲む。そうしないと家に帰れないです。しかも年々考え込みやすくなってきている。たぶんラジオの影響です(笑)。1週間のあいだにラジオのネタを拾わなきゃいけないから、アンテナが過敏になってしまっているんでしょうね。本来だったら流していたことも、「ラジオで喋れるな」と思ってすくい上げて、ラジオで喋って消化する。

一方で、リスナーから反響があると「リスナーが楽になるようなことを言わなきゃ」という考えがどこかで生まれてしまって、それが嫌なんですよね。「誰かの心を軽くしたくてやってないか?」と。自分と対話してみないと、本当に自分が喋りたいことなのか、求められているから喋っていることなのか、わからない。それを整理する時間でもありますね。

―まだ葛藤の最中だとは思いますが、こうしたら自分も楽になるし、相手にも伝えられるというポイントは見えてきたりしましたか?

向井:向き合ってみると、じつは気づいているのに見て見ぬふりしている自分に気づくんです。たとえば、これは聞いている人に寄り添っているだけの話だろうなとか。そうなると気づいていないフリはできない。ここまできたらズルしないで正面からいまの感情に向き合ったほうがいいと思うようになりました。

自分の気持ちを噛み砕くのに時間はかかるけど、人にも自分にも嘘はやめる。できないものはできないし、必要以上に期待されたって、満足させる言葉は出せないし。

向井慧

―昨年からは特に、テレビを見ていても「パンサーの向井さんってこんな感じの人だったんだ」と驚くことが多くなりました。才能を持つ人が多くいるなかで、向井さんの努力が上回った年だったのかもしれません。

向井:2020年は、いままでコツコツやってきたことが報われたという実感がありましたね。それこそ『あちこちオードリー』もそうですけど、喋る場を与えていただいて、ちゃんと受け止めてくれる方がいて、それを見てくれる方がいた。

『有吉の壁』(日本テレビ)も去年の4月からレギュラーになって、「俺、芸人やってる」と思える番組に毎週出させてもらえるようになりました。ラジオもそうなんですけど、貯めてきたマイルみたいなものが2020年に放出されて、芸人として表現できる場ができた、みたいな感覚があります。

向井慧
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プロフィール

向井慧(むかい さとし)

1985年12月16日生まれ、愛知県出身。2005年にNSCに入校。2008年に菅良太郎と尾形貴弘とともに「パンサー」を結成。舞台やバラエティー番組を中心に活躍中。現在は『王様のブランチ』(TBS)、『潜在能力テスト』(CX)、『#むかいの喋り方』(CBCラジオ)などに出演中。

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