半田悠人の建築愛の根源を辿る。幼少期から続く「空間」への欲望

半田悠人の建築愛の根源を辿る。幼少期から続く「空間」への欲望

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半田悠人
編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

今でもヤスリがけが好き。手を動かし、素材やものの本質を見つめる

私はとんでもない紆余曲折を経て、東京藝術大学の建築学科に入ったのだが、予想と反して、私くらいもの作りが好きな人にはそう出会わなかった。もちろん、誰もが手先が器用で、素晴らしい才能を持っていたが、「もの作りが好き」という少しアカデミズムから外れているような人は少なかったと思う。

アートは単純な「もの」ではないし、デザインは思考する方向にいく人が多く、建築物を作る実作業としては図面を描くことで終わることが少なくない。分業が合理的な世の中では、実際のところそれが正解であり何も間違っていないのだが、ギリギリ昭和生まれでクラフトマンシップへの憧憬が消えない私は、ひとりで最後まで作りたがる傾向にある。DIYがやめられないのは思想ではなく、趣向なのだと思う。目に見えるものは何でも作れると信じているし、気になるものが目の前に現れたときはすぐに作り方を知りたくなる。

作業の中では特に、ヤスリをかける作業が好きだ。紙ヤスリで木材を削ったり、電動工具で金属を削ったり磨いたりする作業をしていると無心になれる。芸大に入って初めての作品は椅子だったが、普通の思考ではありえないほどにタモ材(木材の一種)を削った。粉まみれになりながら生まれた曲線を撫でる少し変態な青年は、第1回で触れたアアルトの有機形態を研究した挙句、自分なりの曲線を生み出せたことに幸せを感じた。

半田が制作した『redesign of stool60』(2012年)
半田が制作した『redesign of stool60』(2012年)

芸大生の頃、当時の教授だった北川原温(日本の建築家。中村キース・ヘリング美術館の設計などを手掛けた)の授業の一環で日本デザインセンターへ見学に行ったことがあるが、代表の原研哉さん(グラフィックデザイナー)から暇さえあれば今でも何かをヤスリがけしているという旨の話を伺い、一気に自分の未来に希望を見出したこともある。

「目を養い手を練れ」と言ったのは建築家・宮脇檀だが、私はいわば古臭く、頭ではなく手で思考したいタイプである。手で思考するというのはすなわち、頭の中だけで考えるのではなく、スケッチを書いたり模型を作ったり、モックアップを作ったり、試しに作ってみることであると思う。作ってみなければわからないことは確かにあって、3Dだけでは想像できない側面があるし、そこで起こる失敗や勘違いが新たな発想をもたらすこともある。その素材の硬さや粘り気は、触らない限り理解はできないし、3D上だと大抵は、素材の香りを忘れてしまっていることが多い。

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プロフィール

半田悠人(はんだ ゆうと)

幼少のころに見た大工さんに憧れ、挫折と紆余曲折を経た後、建築の道へ進む。総合芸術制作会社デリシャスカンパニー主宰。現在も建築家として数々のプロジェクトを手がける。

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