LicaxxxとTEPPEIが語る、性別の枠組みから自由になるファッション

LicaxxxとTEPPEIが語る、性別の枠組みから自由になるファッション

インタビュー・テキスト
松井友里
撮影:玉村敬太 編集:吉田真也(CINRA)
2020/05/12
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世界的に見ても東京のファッションシーンは独特ですから(TEPPEI)

―お二人がファッションにのめり込むようになったきっかけを振り返ると、「モードにハマったこと」が共通点ですよね。「人と違うものがかっこ良い」という価値観が、ユニセックスなアイテムも取り入れるようになった要因につながっていると感じます。

TEPPEI:日本という土地でモードを好きになったのは、たしかに大きな要因かもしれませんね。世界的に見ても東京のファッションシーンは独特ですから。

―TEPPEIさんが感じる、東京のファッションシーンの独特さってどんなところでしょう。

TEPPEI:ジェンダーを追求しないところです。歴史をひも解くと、「女性らしさ」「男性らしさ」を追求して流行を生み出すのが、ヨーロッパのモードの概念だったんです。しかし、1970年代から1980年代後半にかけて高田賢三さん、三宅一生さん、川久保玲さん、山本耀司さんなどの東京のデザイナーたちがパリに進出し、ジェンダーにとらわれない発想と服づくりで、世界のファッション観を変えていきました。

Hender Scheme × Dr. Martensのシューズ。東京発のHender Schemeは、セックスによる性差を尊重しながらも、身なりにおいてジェンダーを介さない概念を提唱するブランド
Hender Scheme × Dr. Martensのシューズ。東京発のHender Schemeは、セックスによる性差を尊重しながらも、身なりにおいてジェンダーを介さない概念を提唱するブランド

―その歴史と実績が基盤にあるからこそ、ジェンダーにとらわれない思想が東京のファッションシーンに根づいていると。

TEPPEI:さらには、1990年代に東京で生まれた裏原系ブランドを軸とするストリート文化も海外から評価されてきました。昨今も世界的にストリートカルチャーが流行になっていて、海外のファッション業界が東京をフィーチャーする流れも長く続いています。

そうやってこれまでの定説にこだわらず、新しい価値を生み出してきたのが東京のファッションシーンなんです。だから、サイズ感やジェンダーの概念が変化している現代のファッション界においても、東京の個性的なブランドや独特なカルチャーが注目されているんだと思います。

ジェンダーフリーって、決まりきった枠組みから自由になるという考えのもとに生まれたはず(Licaxxx)

―ジェンダーレスなファッションが注目されている背景には、社会として性差別をなくそうとする動きが強まっていることも要因のひとつだと思います。ファッション誌などでの取り上げられ方を見ると、「ジェンダーレスファッション」「ユニセックス」というある種のスタイルやトレンド化しているような感覚も少しありますよね。

Licaxxx:自分は以前から無意識にやっていたことだから、今さら流行としてもてはやさないでくれよっていう気持ちはあります(笑)。

TEPPEI:たしかに「ジェンダーレス」や「ユニセックス」を流行のスタイルとして扱うのは少し違和感あるかも。

左から:TEPPEI、Licaxxx

Licaxxx:でも、たまに言われるんですよ。ずっと前からこのスタイルなのに「ビリー・アイリッシュみたい」とか。

TEPPEI:これまでにも、かっちゃん(Licaxxx)みたいな感覚で服を着ている人たちはいたんだけど、目を向けられてこなかったんだよね。今、社会的に多様性というものに注目が集まる時代になり、自然とジェンダーレスファッションもフィーチャーされるようになった。

ジェンダーフリーの考え方が浸透したり、「いろいろな価値観の人がいたっていいじゃん」って多くの人が思うようになってきているからこそ、そういう流れが生まれているはずだから、それはすごく良いことだと思います。それぞれの人が自分の「らしさ」を考えてみようって思うようになってきてるんじゃないかな。

Licaxxx:その風潮によって救われる人が、きっといますよね。今って音楽もそうだけど、ファッションにおいてもみんな好きなものがバラバラだし、それを主張しやすい時代。その分、大きな流行は生まれにくくなったけど、一人ひとりが生きやすくなってきたとは思います。

だからこそ「ジェンダーレスファッション」をひとつの流行のカテゴリーとして扱うのは、個人的に違和感がありますね。ジェンダーフリーって、本来は決まりきった枠組みから自由になるという考えのもとに生まれているものだと思うから。

Licaxxx

TEPPEI:たしかに、本質を忘れちゃいけないよね。結果的に「ジェンダーレス」「ユニセックス」という言葉やスタイルだけを切り取って、いろんな人が自分のものにしようとしている。でも、見かけだけじゃなくて、本質的な考え方にも共感したうえで、そのスタイルを取り入れているかどうかが大事だと思います。

たとえば、動物由来の製品や食事を生活に取り入れない「ヴィーガン」が近年、注目されていますよね。そのスタイルが生まれた背景にも根拠があるわけだけど、ただ「流行っている」というだけの理由で脈絡なくスタイルだけ取り入れようとするのは、本質的ではないですよね。

ファッションのスタイルも同じで、根本にある価値観を尊重するべき。そうしないと表層的な話だけで終わってしまい、社会をより良くするようなテーマや考え方に基づいたスタイルだとしても、時代とともに淘汰されてしまうだけなので。

TEPPEI

―昨今、「サステナブル」とか「エシカル」とかもファッションキーワードとして耳にしますが、ちょっと近いものがあるかもしれないですね。

TEPPEI:まさにそうですね。わかりやすいワードだけがファッションのトレンドになりがちだけど、前提としてそのワードがなぜ大事なのかをきちんと理解していくことが重要だと思います。

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プロフィール

Licaxxx(りかっくす)

東京を拠点に活動するDJ、ビートメイカー、編集者、ラジオパーソナリティ。2010年にDJをスタート。マシーンテクノ / ハウスを基調にしながら、ユースカルチャーの影響を感じさせるテンションを操る。『FUJI ROCK FESTIVAL』など日本国内の大型音楽フェスや、『CIRCOLOCO』などヨーロッパを代表するイベントにも多数出演。日本国内ではPeggy Gou、Randomer、Mall Grab、DJ HAUSらの来日をサポートし、共演している。さらに、NTS RadioやRince Franceなどのローカルなラジオにミックスを提供するなど幅広い活動を行っている。ビデオストリームラジオ「Tokyo Community Radio」の主宰。

TEPPEI(てっぺい)

スタイリスト。1983年生まれ、滋賀県大津市出身。専門学校を卒業後、原宿のヴィンテージショップ「Dog」のプレスに就任するとともに『FRUiTS』、『TUNE』といったスナップ誌の常連として掲載され、国内外でカルト的な存在として注目を集める。2006年公開の映画『間宮兄弟』では、演技未経験にも関わらず俳優デビューを飾る。その後スタイリストとして本格的な活動を開始。RIP SLYME、星野源、OKAMOTO’S、SIRUPなど多くのミュージシャンのスタイリングのほか、数多くのファッションビジュアル、ショーのディレクションなどに携わっている。

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