戸田真琴×飯田エリカが語らう、魂が喜ぶように生きることが大切

戸田真琴×飯田エリカが語らう、魂が喜ぶように生きることが大切

2020/04/17
テキスト
飯嶋藍子
撮影:垂水佳菜 編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

フェミニズムのもと、なぜ男と女は罵り合う?「もっと冷静になって話がしたい」

左から:飯田エリカ、戸田真琴

後半は性に関する生きづらさをテーマにしたトークが繰り広げられた。AV女優として、性の話をすることをこれまで躊躇してきたという戸田と、少女写真家として活動している飯田は、それぞれ「性」を語ることに対して何を考えているのだろうか。

戸田:AV女優のファンになってくれる男性にはいろんな方がいて、心から友達になれると感じられる人もいるし、どうしても「AV女優としてこういう性格であってほしい」っていう理想ありきで好きになってくれる人もいる。だから、性の話ってある人にとってはノイズだったり聞きたくない話でもあったりすると思うんです。

私はこの職業に従事しているということに無責任ではいたくないから、AVファンの人たちにとってノイズになる可能性のあるものはなるべく出さないようにしたいという気持ちが強かった。でも、文筆業やトークのなかで性について語らせていただいている傍らで、本業では、コラムで書いているようなことと真逆の内容を表現する作品に出ることもある。主張がダブルスタンダードになっている感じもしていてモヤモヤしていたのもあるから、こうして連載という形で性について発信できるようになってとてもよかったです。

戸田真琴によるコラム連載「戸田真琴と性を考える」は、2020年5月現在、6記事が掲載されている
戸田真琴によるコラム連載「戸田真琴と性を考える」は、2020年5月現在、6記事が掲載されている(記事を読む

飯田:私は「少女写真家」として活動していて、女の子だけを撮りますっていうことが、差別的にとられないか危惧していて。私が撮影する女の子ってまだ自分のなかに迷いや揺らぎがあって、自信がないし、悲しい経験をしている子が多いんですよね。女性だから受けてしまった苦しみを聞くこともあります。例えばグラビアとか、女の子の写真ってどうしても消費されてしまうことが多いけど、私はそういう写真を撮りたくないんです。女の子が消費されるのが当たり前になっている現状は、活動するうえでずっと苦しく感じています。

飯田エリカの作品

戸田:すごくわかります。私もグラビア撮影の時、撮られててつらいって思うことがあるんですよ。その人のよさを自然な形で残そうとしてくださる方もいるんですけど、既にあるセクシーな女性像に当てはめるようにしか撮影をしない方もいる。「これじゃ誰がモデルでも一緒だろうな」って思うこともある。

撮られる場面じゃなくても、男性が「この女の子たちのなかで誰がいい?」とか勝手に選手権を行っていたりして。そういうとき、性的対象として人気がある場合でも、逆に論外として扱われる場合でも、どちらにしても嫌なんですよね。生きてるだけで女としてジャッジされて消費されるんだったら、いっそお金にしちゃったほうが納得できると思ってAV女優をやっている部分も少しあって。

そんな戸田がコラムでいつも綴っている思いは「男女のくっきりとした境目はなく、なだらかに双方が繋がっている」ということ。戸田はコラムのなかで「男も女も傷だらけの隣人同士」と書いていたが(連載第5回『戸田真琴が試みる、男女共存の世界 私たちは傷だらけの隣人同士』)、昨今はジェンダーについての議論も盛り上がってきているものの、実態は「男なんか」「女なんか」と分断が見えてしまうシーンも多く、隣人として手を取り合うことを望んでいるはずの人々の言葉に、アンバランスさを感じてしまうことも少なくない。

戸田:頭に血がのぼる気持ち、すっごくわかるんですよ。フェミニズムにまつわる話を聞いて急に自分が消費されてたことに気づいた同業の子もいるんですけど、それまでまったく考えてこなかった人ほど、自分が傷ついていたことに突然気づいてびっくりして、攻撃的になってしまうんですよね。

逆に、自分は人に優しく生きていると思っていた男性も、急に加害者ですって言われて驚いて攻撃してしまう。そうやって激しくやりあった結果が、フェミニズムっていう言葉の後ろに「(笑)」がついてしまうことが増えてしまった、現在の状況に繋がっているんじゃないかなって。過激な人だけが取り組むような、敷居の高い運動だと思われてしまうことがすごく悲しいし、馬鹿にする人も多いせいで、大切な言葉が汚されてしまったような感覚になります。もっとみんなと冷静に話がしたいなと思って、コラムを書いています。

飯田:フェミニズム、女性について活動されている方やその方たちと対立してしまう方の言葉って、「男」とか「女」とか、主語が大きいように感じるんですよね。個人を攻撃しているわけじゃなくて、あまりにもふわっとしている対象だから、罪悪感なく何でも言えちゃうのかなって。それだとちゃんとした生産性のある議論にはならないですよね。

左から:戸田真琴、飯田エリカ

戸田:憎んだら楽なのにと思うこともありますけど、個人的には、自分自身に対して完全に女だと言い切る自信があまりなくて。たまたま体が女性に生まれて、恋愛対象、性的対象が男性だけど、自分が女性であることに疑いがないわけではないし、どこか自分のなかに男の子が住んでいる気がするときもあります。

男の子みたいに、女の子に対して気持ちを抱くこともあるし、女性に恐れを抱くこともある。男性に対して友情を感じることもあるし、相手によってなだらかに変わっているんだなと思って。全然わかりあえない女の子もいるし、すごく気持ちを理解できる男の子もいるし、そういう自分だからこそ、決して安易に、大きな主語で語ってはいけないと自戒しています。

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イベント情報

『わたしが、わたしを愛する日 -戸田真琴が贈る映画上映×トークイベント-』
『わたしが、わたしを愛する日 -戸田真琴が贈る映画上映×トークイベント-』

2020年3月22日(日)
会場:渋谷ヒカリエMADO

プロフィール

戸田真琴(とだ まこと)

2016年にSODクリエイトからデビュー。その後、趣味の映画鑑賞をベースにコラム等を執筆、現在はTV Bros.で『肯定のフィロソフィー』を連載中。ミスiD2018、スカパーアダルト放送大賞2019女優賞を受賞。愛称はまこりん。初のエッセイ『あなたの孤独は美しい』を2019年12月に、2020年3月には2冊目の書籍『人を心から愛したことがないのだと気づいてしまっても』を発売した。

飯田エリカ(いいだ えりか)

1991年東京都出身。2013年少女写真家として活動をはじめる。自らの少女時代の記憶をもとに今だからこそ写せる少女、女の子を撮影した“少女写真”という表現を追い求め作品を制作。女の子たちのための写真活動を志している。19年から女の子を撮る女の子のコミュニティー『またたく女の子たち』を主催している。

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