なぜ人はサウナに行くのか。服も肩書きも脱ぎ捨てて裸になる意義

なぜ人はサウナに行くのか。服も肩書きも脱ぎ捨てて裸になる意義

インタビュー・テキスト
柳澤はるか
撮影:前田立 編集:中田光貴(CINRA.NET編集部)

日本に限らず全ての男性たちに伝えたいのは、男性ももっと自分の体や心のことに向き合おう、ということ。(ヨーナス)

―この映画では、男性たちの苦しみや葛藤が語られています。映画の原題は、「男たちの番」という意味であり、本作は男性たちに向けて、「さあ、今こそ男たちが語る番だ」と訴えかけているようにも感じたのですが……。監督は、男性たちが置かれている状況について、どんな問題意識を持っているのでしょうか?

ヨーナス:一見そう見えないかもしれませんが、社会における男性のあり方について、日本とフィンランドにはすごく共通点があると思うんです。男性たちは、仕事重視で、自分の心や体のことをあまり省みることがありません。私はそれが大きな問題だと思っています。

女性たちの方が賢くて、仕事とプライベートをうまく切り盛りしながら自分をケアしているのに対して、フィンランド人の男性は頑固で、「自分はこれでいいんだ」「死んだらお墓で休めば良いから、それまではとにかく働けばいいんだ」という価値観がいまだにあります。フィンランドは日本よりもずっとウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを指す言葉)の概念が浸透しているにも関わらず、です。

ヨーナス・バリヘル<br>最も国際的に評価されているフィンランド人監督の1人であり、本作でヨーロピアンフィルムアワードにノミネートされ、2010年米国アカデミー賞外国語映画賞のフィンランド代表にも選ばれた。本作や『Mother's wish』(2015)、最新作の『The Happiest Man on Earth』(2019)などは、個人的な視点から社会課題に焦点をあてている。またプロデューサーとして、『Kaisa's Enchanted Forest』(2016)、2018年のフィンランド映画祭で上映された『Entrepreneur』(2018)や『Baby Jane』(2019)なども手掛けている。
ヨーナス・バリヘル
最も国際的に評価されているフィンランド人監督の1人であり、本作でヨーロピアンフィルムアワードにノミネートされ、2010年米国アカデミー賞外国語映画賞のフィンランド代表にも選ばれた。本作や『Mother's wish』(2015)、最新作の『The Happiest Man on Earth』(2019)などは、個人的な視点から社会課題に焦点をあてている。またプロデューサーとして、『Kaisa's Enchanted Forest』(2016)、2018年のフィンランド映画祭で上映された『Entrepreneur』(2018)や『Baby Jane』(2019)なども手掛けている。

―でも日本と比べたら、フィンランドは遥かに男女平等が進んでいますよね(編集部注:世界経済フォーラムが発表している『ジェンダーギャップ指数2018』で、フィンランドは世界第4位、日本は110位。)。女性の社会進出やジェンダー解放が進む過程で、男性の生き方や働き方は変わらなかったんですか?

ヨーナス:私が思うに、誰も男性たちには目を向けてこなかったのです。女性たちは、様々な権利を勝ち取り、ワークライフバランスが取れるようになっていった。けど男性は、ずっと昔のまま、社会の中で置いてきぼりにされています。

日本も同じだと思いますが、フィンランドでも若い世代の男性たちは、もっと自分たちのあり方を変えていかなければという意識を持っています。しかし、なかなか実現できていないのが現状だと感じます。

ミカ:たとえばストレスや悩みごとがあったときに、男性はいまだに、人に相談するのはプライドが許さないとか、男がそんなことをべらべら喋るものじゃない、という意識がある。「男はこうあるべき」という縛りを自らにかけ、それが邪魔しているんです。

ミカ・ホタカイネン

―「男はこうあるべき」という呪縛はどこから来るのでしょうか。

ヨーナス:男性を縛っているのは、社会です。フィンランドの今どきの親たちは「男の子なんだから泣くんじゃない」なんてことは絶対に言いませんし、学校でも家庭でも、子どもたちは性別に関係なく対等に育てられています。

けれどもフィンランドでは、男性だけに兵役義務があります。そこで初めて非常に厳しい組織の中に入り、血が出ようがなにがあろうが、それくらいで病院に行くな、そんなことで泣くな、それくらい我慢しろ、と言われる。その経験が、男性たちにとても大きな痕を残しているのではないかと思います。

ミカ:男性たちも、もうちょっと肩の力を抜くことが必要です。いつでも強くあろうとせず、「人生そんなに全てが順調にいくわけではないのだ」ということを素直に認めれば、少しは楽になるんじゃないかな、と思う。それもこの映画の大切なメッセージなんです。

ぜひ、心の中にある葛藤や、悲しみについて、話して欲しい。もっと話をしましょう、打ち明けましょう、心を開きましょう、と男性たちに伝えたいんです。

ヨーナス:そうですね。この映画を通して、日本に限らず全ての男性たちに伝えたいのは、男性ももっと自分の体や心のことに向き合おう、ということ。男性はもっと、自分をいたわる必要があります。

ヨーナス・バリヘル
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作品情報

『サウナのあるところ』
『サウナのあるところ』

(2010年 / フィンランド / フィンランド語 / ドキュメンタリー / 81分 / 原題:Miesten vuoro / 英題:Steam of Life)
2019年9月14日、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺、新宿シネマカリテほか全国順次公開。

監督:ヨーナス・バリヘル、ミカ・ホタカイネン
後援:フィンランド大使館、公益社団法人 日本サウナ・スパ協会
提供・配給:アップリンク+ kinologue ©2010 Oktober Oy.

プロフィール

ヨーナス・バリヘル

最も国際的に評価されているフィンランド人監督の1人であり、本作でヨーロピアンフィルムアワードにノミネートされ、2010年米国アカデミー賞外国語映画賞のフィンランド代表にも選ばれた。本作や『Mother's wish』(2015)、最新作の『The Happiest Man on Earth』(2019)などは、個人的な視点から社会課題に焦点をあてている。またプロデューサーとして、『Kaisa's Enchanted Forest』(2016)、2018年のフィンランド映画祭で上映された『Entrepreneur』(2018)や『Baby Jane』(2019)なども手掛けている。

ミカ・ホタカイネン

1998年からテレビ、映画業界で働いており、2004年にフィクションの監督としてヘルシンキ応用科学大学を卒業。本作の他に、『Freedom to Serve』(2004)、『Ristin Tie』(2016)といった長編や『Visitor』(2006)、『Loose Wires』(2010)といった短編ドキュメンタリーを制作している。

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