進化を続ける浅草・蔵前 変わりゆく街に根付くクラフトマンシップ

進化を続ける浅草・蔵前 変わりゆく街に根付くクラフトマンシップ

インタビュー・テキスト
小林拓也(雪か企画)
撮影:ヒゲ企画 編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

日常を忘れ、穏やかな時間を過ごす。奥浅草の住宅街にひっそりと佇む古民家カフェ「カフェつむぐり」

観音裏を散歩中に、ひと息つきたくなったら「カフェつむぐり」を訪れてみるといい。閑静な住宅街の一角にひっそりと佇む「カフェつむぐり」は、築68年の木造家屋を店主の室伏将成さんが自らリノベーションした古民家カフェ。そこには久々に帰った田舎の「おばあちゃんの家」のような、温かく、静謐な時間が流れている。

温かみのある店内1階は「おこもり感」が出ている
温かみのある店内1階は「おこもり感」が出ている

「つむぐり」という店名は、森や山の生態を「循環」させるうえで重要な役割を担う「どんぐり」と、「紡ぐ」という言葉を掛け合わせた造語。おいしいメニューだけでなく、自分自身と向き合う時間を楽しめる空間を提供したいという思いが詰まった店名だ。

天井が高く開放感のある店内は、表の音がほとんど聞こえない落ち着いた空間となっており、ひとりで物思いにふける時、静かに過ごしたい時にぴったり。

古民家らしい梁を残した2階は「開放感」がテーマ
古民家らしい梁を残した2階は「開放感」がテーマ
お店はすべて室伏さんがDIY。安全を配慮して、入店できるのは中学生以上から
お店はすべて室伏さんがDIY。安全を配慮して、入店できるのは中学生以上から

オープンにあたり、室伏さんはさまざまなお店を見て回ったそうだが、何が決め手だったのだろうか?

室伏:「こんな店にしたい」と、最も共感できたのが古民家カフェだったんです。木の匂いとか埃っぽさとか、オレンジ色の電球の明かりが落ち着くとか、日本人のアイデンティティとして懐かしさを感じる。そこが一番の決め手になりました。

「カフェつむぐり」ではコーヒーに関するイベントのほか、木のカトラリーを制作するイベント、クリエイターを招いてのイベントなど、「クラフト」に関するさまざまなイベントを開催している。

室伏:イベントを通じて、目の前にある日常の物事を多面的に捉え、自らが手にしている豊かさや楽しさ、自らが大切にすべきことなどを再認識するような、新たな「気づき」や「可能性」を提供する場になれたらと思っています。

すっきり目に抽出されたコーヒーと、お猪口に入ったミルク、お豆、ホイップ
すっきり目に抽出されたコーヒーと、お猪口に入ったミルク、お豆、ホイップ
季節によって具材が変わるフルーツサンド。甘さ控え目でおいしい
季節によって具材が変わるフルーツサンド。甘さ控え目でおいしい

「カフェつむぐり」を訪れ、生活のなかで絡まってしまった感情の糸をほぐし、整理し、再びその糸を使って編んでいく。そうして出来上がった1枚の布は、首元で軽やかに揺れるストールにも、肌を刺す風雨から身を守る外套にもなるのではないだろうか。

元新聞記者の店主が、本当に読みたい1冊を並べる書店『Readin'Writin'』

「カフェつむぐり」を後にして、蔵前方面へ。次に訪れたのは、田原町駅から徒歩約2分、大通りから1本入った静かな路地にある新刊書店「Readin'Writin'」。材木倉庫をリノベーションしたという建物は、えんじ色の壁に大きなガラス窓を合わせたレトロモダンな外観が印象的だ。

「ReadinWritin」外観
「ReadinWritin」外観

店主は元新聞記者の落合博さんで、主にスポーツに関する社説やコラムを執筆していたそう。選書の基準はシンプルに、落合さんが読んでみたい本。5年後、10年後でも読まれる本を選んでいるという。

落合:あまり知られていない価値のある本たちが、それらを求める誰かに出会うまで、時間や手間をかけて売っていきたいんです。もちろん、いま何が流行っているのか、何がおもしろいのかについてもアンテナは張っていますが、大手書店が平積みするような本は置きません。うちでなくても出会える本ですから。

では、売れていない本がつまらないかというと、決してそんなことはない。話題にはならないけれど、これはおもしろそう、読んでみたい、と感じた本を仕入れています。

倉庫の面影を残す格子状に組まれた壁面の木材を本棚として利用している
倉庫の面影を残す格子状に組まれた壁面の木材を本棚として利用している

きれいに陳列された本もあれば、あえてランダムに積まれた本もあり、店内の随所に、本との「出会い」を演出する仕掛けが散りばめられている。ジャンル別ではなく、映画やコーヒーなど、テーマ別に書籍や雑誌が並べられているのもおもしろい。

ランダムに並べられた本
ランダムに並べられた本

新聞記者時代は自分から人に会いに行く仕事だったが、お店を始めて2年が過ぎたいまは、常連のお客さんが会いに来てくれるようになり、クリエイターや出版関係者、作家などとの出会いもあるという。

落合:知り合った方々とのイベントにも力を入れています。最近は平均すると月10回ペース、2月は20回イベントを行いました。出版記念イベントやトークイベント、スケッチ、短歌、演劇、タロット占い、また新聞記者という経歴を生かして、ライティングのワークショップも開催しています。そこで出会ったお客様と話すのは、やっぱりおもしろいですよ。

時間をかけて売られていく本に魅せられ、人が集まり、いつのまにか生まれる交流。「Readin'Writin'」は、「本を売る」という書店の概念に収まることなく、「何かを生み出そう」という、クラフトマンシップにも通ずるマインドを持つ書店だった。

本棚に間にある栞に関する展示スペース
本棚に間にある栞に関する展示スペース
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店舗情報

緑園

住所:東京都台東区浅草6-41-9
営業時間:11:00-19:00(水曜日・木曜日定休)

カフェつむぐり

住所:東京都台東区浅草5-26-8
営業時間:金、土、日、月のみ営業(臨時休業あり)
[平日]12:00-17:00(LO16:30)、1階のみの営業
[土日]12:00-17:00(LO16:30)での営業

Readin'Writin'

住所:東京都台東区寿2-4-7
営業時間:12:00-18:00(月曜日定休)

FUGLEN ASAKUSA

住所:東京都台東区浅草2-6-15
営業時間:
[月、火、日]7:00-22:00
[水、木]7:00-1:00
[金、土]7:00-2:00

東京ひかりゲストハウス

住所:東京都台東区蔵前2-1-29
利用受付時間:8:00-12:00、16:00-23:00

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