みうらじゅん×サンリオ対談 日本のキャラ文化を支える二者の情熱

みうらじゅん×サンリオ対談 日本のキャラ文化を支える二者の情熱

インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:垂水佳菜 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)
2019/06/04
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作った人の意図から外れて理解されたときに、ブームは爆発するんです。(みうら)

みうら:ところで、Amyさんが最初に好きになったキャラって何ですか?

Amy:映画『バンビ』に出てくるうさぎです。

みうら:やっぱ、サブキャラ好きなんですね。メインの王道的なキャラが好きな人は、あえてサンリオには入らないんじゃないかなぁ。Amyさんたちって、これまで存在しないキャラを作りたい人たちですもんね。

Amy:言われてみると、ほとんどメインを追ってないですね。

―いつかメインストリームのキャラを作ってやるぞ! みたいな野望は?

Amy:ぜんぜんないです(笑)。

みうら:キャラクターを作る情熱にも通じる話だけれど、どこかに誤解が生まれないとブームって起こらないんですよね。「これは現代を風刺してるんじゃないか」とか頭のよさ気な人たちが言い始めると、作った人の意図から外れて理解され、ブームは爆発するもんです。

みうらじゅん

奥村:作るときって本当に何も考えてないから、それはわかる気がします。

Amy:私の場合は、授業中に描いた先生の似顔絵を隣の友だちに見せる感覚でやってきたって感じです。なんて人をバカにした仕事のやり方をしているんだろうって(笑)。

みうら:そこがいいんじゃない! と、僕は思いますけどね。初期のクラシックなゆるキャラたちには、何の設定なんてなかったんです。無理矢理、ゆるキャラの連載を始めたもんで、先方は「設定なんてないので、勝手につけて下さい」と言われたもんです(笑)。それで勝手に「巨大化もできる」とか僕が書いたんです(笑)。

一同:(爆笑)

みうら:のりしろが広いから、どうでも解釈できる。いまは、誤解も自分の意見も全部入るようなキャラクターが万人に好かれるんです。それは、当たり前の時代の変化ですよね。

シナモンちゃんやぐでたまにグッとくるのも、魂みたいなものを僕たちが勝手に見ちゃうから。(みうら)

―では最後に。もしもみうらさんがサンリオキャラを考えるとしたら?

みうら:「ぎゅっとしてにゅっと出る」の他にですか? アジの開きがOKなんだから、次はワタですね。ワタちゃん(笑)。

―大人は美味しくいただけそうですね。

みうら:子どもは塩辛とか、酒のつまみが妙に好きじゃないですか。だからワタのなかにはモツちゃんとかセンマイちゃんとか。そのキャラをたくさん集めると、ぴったり腹に収まるなんてのは?(笑)。

奥村:ああ! いいですね!

みうら:京都の清涼寺ってお寺に、『清涼寺式釈迦如来』っていうのがおられるんですよ。その体内には五臓六腑がちゃんと入っているんです。五臓六腑も仏の一部ですから。

仏教系で言うと、「お練り供養」といって、この世で先に極楽往生を体感する行事があるんです。仏像アトラクションショーですね、要するに。そういう意味では、日本には昔からキャラクターになりきるような着ぐるみ文化が根付いたでしょう。

目と口をちょっとつけたものでも、日本人は感情移入して、そこに神仏や精霊がいると思うことができる感性を持っているんです。

みうらじゅん

―なるほど。

みうら:「キャラクター」って横文字だし、欧米的な概念ですよね。でも、日本における「キャラクター」はちょっと違う気がするんです。僕もそうだけど、「作りたい」というより「こういう存在が生きていたらいいな」って感覚で描いているんじゃないかと。

Amy:「目が合う」感覚とか、「しゃべりかけてる」感覚ってそういうところから生まれるのかもしれませんね。あと、こんまり(近藤麻理恵)さんの片付け方法がアメリカでバズってますけど、アメリカ人からすると「ときめく / ときめかない」で物を持ってみるという感覚が新鮮だったことも、流行る理由だったそうです。それも近いような気が。

奥村:海外の方はアニメやゲームの登場キャラではない、グッズにプリントされたキャラクターを一種のブランドのロゴマークのように受け取っているのではと感じることがあります。自分に近い「存在」として見るのは日本独特の感覚かもしれません。

みうら:シナモンちゃんやぐでたまにグッとくるのも、魂みたいなものを勝手にあると思っちゃうからなんじゃないでしょうか。この日本の特異性は、すごく面白いと思うんです。

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プロフィール

みうらじゅん

1958(昭和33)年京都府生れ。イラストレーターなど。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。1997(平成9)年「マイブーム」で新語・流行語大賞、2004年度日本映画批評家大賞功労賞を受賞。著書に『アイデン&ティティ』『青春ノイローゼ』『色即ぜねれいしょん』『アウトドア般若心経』『十五歳』『マイ仏教』『セックス・ドリンク・ロックンロール!』『キャラ立ち民俗学』など多数。

奥村心雪(おくむら みゆき)

株式会社サンリオの執行役員 / キャラクタークリエイション室長。サンリオのキャラクター制作の新カテゴリーを担っている。「シナモロール」のデザイナー。

Amy(エイミー)

株式会社サンリオ キャラクタークリエイション室 クリエイター。「ぐでたま」のデザイナー。

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